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受援力を上げるには(前編)

※2002年10月に創刊し、掲載文が200本を超えたメールマガジ(メルマガ)『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本(予定)の掲載文を、毎週1本ずつ転載しています(歳月の経過を踏まえ、字句や一文、一段落など小幅な修正をしている場合があります)。

※2年間のスケジュールで実施してきたこの企画も、いよいよ残り2本となりました。通算99本目となるきょうは、3年前の12月に配信された第239号の掲載文です。3年前の1年間を振り返った内容ですので、今年に合わせた記載に変えています。

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当事者経験者の活躍元年

 2019年は、不登校とひきこもりの分野にさまざまな変革の波が押し寄せた1年でした。

 不登校の分野では、文科省が「学校復帰前提策」と呼ばれていたこれまでの施策を事実上撤廃。同策の根拠だった1992年・2003年・2016年の通知を廃止するという本気ぶりだと聞きました。

 ひきこもり(おとな)の分野でも、東京都が34歳までという年齢制限を撤廃するなど、一部の自治体が次々と体制の整備に着手しています。

 特筆すべきは当事者経験者の活躍ぶりで、講師やシンポジストをつとめる講演会やシンポジウムが激増し、マスコミにも次々と顔出しで登場。
 厚労省や一部自治体からも、会議のメンバーに選ばれるようになっています。こういった状況は今年に入ってからのことで “ひきこもり史の転換点” と呼ぶべき1年になりました。

 そこで、このような当事者経験者を、当事者すなわち本人たちはどのように見ているのでしょうか。
 「自分もあの人のようになりたい」というロールモデル(手本になる人)でしょうか。それとも「自分の前を歩んでいるな」という親近感を覚える “先行く仲間” “先輩当事者” でしょうか。

 私は、そのようなポジティブな見方ができるのは、エネルギーの回復が進んでかなり状態が上がってきた人だけではないかと考えています。

当事者経験者と会いたくない心理とは

 状態が上がってくるまでは「雲の上の存在」「自分には無関係」としか見えないのではないでしょうか。というのも「ダメ人間」「無能な人間」などと自己否定している状態にある本人にとっては、前述のような当事者経験者が「ダメじゃなくなった人間」「有能な人間」などと映り、負い目や劣等感をかきたてられる存在だからです。

 立派なおとなになった不登校経験者やイキイキと活動しているひきこもり経験者を、わが子に会わせたいと願う親御さんは少なくないようですが、会いたくないと願う本人も少なくないようです。

 私の相談でも「丸山さんに会わせたい」「当事者に会ってほしい」と訴える親御さんがいらっしゃいますが、私は前述の心理を踏まえ、ゆったりかまえて親面接を続けていきます。
 そうしているうち、本人が親御さんについて来たり、自分で来たりする場合もあります。ただし、特におとなの場合は本人が私に会わないまま動き出して当事者会に参加したりするようになることが多く、逆に私に会ったからうまくいくようになるともかぎりません。

 あくまで、本人が会いたいと思ったときが会うタイミングなのです。

                           <後編に続く>

不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。