結婚式でサクラを雇うなら

結婚式やお葬式で、その主役の人が人望あるっぽく見せるため、サクラを雇うことがあると聞いた。

つまり、知り合いでもなんでもないけど、お金を貰って式に出席するのである。
結婚式で新郎側の出席者に友達が誰もいなかったら「寂しい奴だ」と思われてしまう。
それを避けるために、そういった人を雇うのだとか。

結婚式にサクラを雇ったとしたら、どの辺まで頑張ってくれるのだろうか。
お金を払ったら二次会とかも来てくれるのかな。
ビンゴ大会にも参加して、ビンゴ揃って一言いう時に、なんて言うか興味ある。
それも、なんかマニュアルがあって当たり障りないこと言うのかな。

もし僕がサクラを雇ったら、抜き打ちで

「僕のことどれだけ知ってるでしょうかクイズ」

を出したい。
もちろん、サクラ達は僕の事を何も知らない。
でも、いきなりクイズを出すのである。
もちろん、出題者もサクラなので、答えを知らない。
でも、台本には

「新郎の高志くんは、高校生の時、ある事をして警察から感謝状をもらいました!
さてなんでしょう。
(答えは自由に決めてください)」

と、全てをゆだねる。

5人くらいが回答者になって、フリップに書いてもらう。
もちろん、全員いきなり言われたことで、そんなこと知る由もない。
出題者も、自分なりの答えを作らないといけない。

そして僕は高校時代に感謝状を貰った事なんてない。

さあ、この場合どんな答えが飛び出すのか。
興味がある。

サクラの人も、一応
「うわー!あったなあそんなこと!笑」
とか演技してくれるのだろうか。

「いや、こんなもん常識っしょ!」とか言いながら汗ダラダラかいて。

回答者の5人全員に、自分だけサクラで後はガチ知り合いという風に言っておいて、
さらに、自分がサクラだとバレた場合は、契約違反で違約金が発生するとかなんとかの誓約書に判子も押させて、退路を絶つ。

その時の出題者と回答者の演技はさぞ見ものだと思う。

それを見ながら、僕はゆっくりとワインを飲みたい。

サクラ達の
「はいはいはい、わかりましたー」
とか
「サービス問題じゃん」
とか
「感謝状って何枚か貰ってなかった!?何枚目のやつ!?」
とか
「感謝状もなにも、あの時助けてもらったから、私はこうして生きているわけで」
とかの、

しらじらしい演伎を肴に、ワインを舌で転がす。
僕が生まれた年のワインをだ。

普段は酒を飲めないけど、僕はこの時にワインデビューできるかもしれない。

とても贅沢な遊びだ。

漫画カイジで、多重債務者が命をかけたゲームに参加しているのを好奇の目で見る富豪達の気持ちがわかる。

出題者のサクラにもカンペを出したい。

「次にやる予定のビンゴの機械壊れたから、感謝状の話をもとに30分繋いで」

もちろんビンゴの機械は壊れていない。というか、はなから用意していない。

「いやー、これ僕も覚えてるけど、衝撃的やったなあ!まさかねー!あんなね!」

と、出題者のサクラも、もう接続詞のみで喋るしかなくったりして。

さっきの
「感謝状もなにも、あの時助けてもらったから私はこうして生きてるわけで」
の人の話を掘り下げたい。

「えっと、まず私が、タクラマカン砂漠にいて、、」

とテンパり過ぎて壮大な話をし出したりして欲しい。

僕も、それを見ながら、「懐かしいなぁ」と悪い相槌を打つ。

「あの時、あと一人おったよね、あれ誰やったっけ?」
と、無茶振りもさせていただく。

一人に集中攻撃して、周りが油断し出したら、
「そういえば、お前もバレーボールの試合でありえんことやったよなぁ!ちょっとあの話して!あれ何回聞いてもおもろい!」

とレーザービームのようなキラーパスを出す。

もう、そうなってくると回答席は全員の汗でビチャビチャだ。

ビチャビチャになった回答席を見ながら、僕は、ワインに合うチーズに舌鼓。

もう、僕だけで楽しむのはもったいない。
その様子を富豪達にむけて配信する。

うろたえるサクラ達の生死を賭けた心理戦。
高値で売れそうだ。

カイジみたいに死ぬとこは流石に見たくないけど、うろたえてるシーンは見たいという、ライト富豪ユーザー向けで。

結婚式にサクラを雇う。正直そんなこと避けたいと思っていたけど、これはちょっとだけやってみたい。

もし、結婚式にサクラを雇った場合、式が始まる前に、サクラの人たちを集めてこう言おう。

「さあ、サクラの皆さん。ゲームの始まりです。」

#エッセイ #コラム #随筆 #結婚式

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