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『映画大好きポンポさん』を観よう!

コロナ禍に上映されたにも関わらず、ヒット作となった劇場アニメ『映画大好きポンポさん』。アニメと映画の醍醐味が詰まった作品の魅力に迫る。

話題の作品がついに登場!

2021年、小規模な劇場公開ながらまもなく口コミで人気となり、リピーターも続出したヒット作、ついに登場!
主人公は映画監督を目指すジーン。ジーンは映画プロデューサーの女性「ポンポネット」、通称ポンポさんのアシスタントとして働いていたが、ある日ポンポさん自らが脚本を執筆した映画の監督を任される。
映画愛だけは人一倍強いジーンだが、監督としての自信や実感がない状態から作品づくりに挑むことになるが、「自分にはこれしかない」という原点に立ち返り監督としての覚悟を決めていく。
小気味いいテンポとカット割りでストーリーが展開していき、最後には「サイコー!」というカタルシスまで得られる映像体験にぜひ酔いしれてもらいたい。90分という見やすいサイズであることも超重要です!

単なる「映画づくり」ドラマではない!ユーモラスな雰囲気のなかに熱いメッセージがある

映画作りは、技術スタッフやキャスト、資金調達をする人まで、いろいろな立場の人が集う集団作業。
 この作品ではプロデューサーがやること、映画監督がやること、俳優や、音響、照明、出資者たちがなにを考えているのかという「映画づくり」の難しさと楽しさが詰まっているのはもちろん、撮影後の「編集」という作業の重要さも理解できるようになっている。
 「編集」を描くことはつまり、「採用されなかったシーン」にまで想像をめぐらすことになる。つまり、この作品に限らず、すべての映像作品の「余白」まで味わえるキッカケにもなるのだ!
 本作が、「映画制作ドラマ」に収まらない魅力があるのは、「自分と向き合う」という普遍的なテーマを視聴者も共有できるから。情熱はどんな氷をも溶かす!そんなメッセージが込められている清々しい作品だ。

地味な絵づくりかと思いきや、映画ならではの息をもつかせぬ演出

映画制作というと、撮影シーンを除いて、キャスティングや編集作業は地味なのでは?
あるいは、映画そのものと、劇中劇の両方の物語を追わないといえないので見難いのでは?と思う人もいるかもしれない。でもこれらに関しては「そんなことはない」と断言できる。
これがこの作品が実写ではなくアニメである必然性にも繋がっている。
パソコンの前でひたすら編集するジーンの作業さえ、ばりばりのアクションシーンとして描き、劇中劇のシーンは画面の縦横比を変え一発でわかるようになっているからです。映像も、美しい背景とコミカルな人物たちで一切地味な印象がない。
物語も、本編と劇中劇の両方を同時に追えるほどシンプルかつ重層的。親子で観劇しても全く問題ない作品に仕上がっているのは実はこの作品の強いメッセージ!

名言連発!フレーズの切れる映画は、セリフに見合うだけの名シーンあり

名言が多いのよこの映画!
映画館で長時間の傑作映画を観るジーンのもとに、フラッと映画を観に来たポンポさん。なぜ来たのかを問うと「名作ってやつの匂いを嗅ぎにきただけよ」。
ポンポさんが映画の上映時間は2時間まで、ベストは90分というエンタメ90分最強説を唱えているが、これは映画に限らずどのエンタメにも共通して言われていること。本作が90分であることも、お客さんを飽きさせず楽しませるという覚悟の表れだ。ただ、そんなポンポさんが2時間以上ある名作を観に来たときに出た名言。
「君の映画に、君はいるかね」「夢を捨てるためにここに来たんじゃない、夢を叶えるためにここに来たんだ」「自分で作ってしまったら、その映画には感動できない、でしょ?」
とにかくフレーズ切れまくりの本作のセリフにも注目だ!

Text/サンキュータツオ

サンキュータツオ プロフィール

1976年東京生まれ。漫才コンビ「米粒写経」として都内の寄席などで活動。
早稲田大学大学院文学研究科日本語日本文化専攻博士後期課程修了。
アニメ、マンガなどを愛好しており、二次元愛好ポッドキャスト「熱量と文字数」を毎週水曜日配信。「このBLがやばい!」選者、広辞苑第七版サブカルチャー項目執筆担当者。一橋大学などで非常勤講師も務め、留学生に日本語や日本文化も教えている。Twitter:@39tatsuo


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