野菜が食べたくなった。

エンシュアも飲めなくなって
カロリー不足になったせいか
まともに眠れない日が続いていた。

不眠気味だったせいか
近場の工事のおかげで昼寝もお預けだったせいか
気候の影響の目眩のせいか

ー辛いことが重なり過ぎた季節のせいかー

急に普通に
お腹が空いた。

普通に野菜が食べたくなった。

生野菜は身体が冷えるので
スープにしようと決めた。

人参と玉ねぎが余っていたので
キャベツともやしを買いに出た。

いつもの買い物とは違ってた。

吐くためのものの買い出しではなかった。

大好きな人参をありったけ
全部投入。
キャベツも適当にザクザク切って
小さな鍋いっぱいに
野菜をつめ込んだ。

スープの素なんか目分量。

料理嫌いの自分にしてはよくやった。

一応、味見なんかしたりもした。

キャベツが甘い。

野菜の甘みを感じた。
なんだか嬉しくなった。
心から美味しいと思えた。

甘くて暖かくて美味しくて
思わず笑顔になってしまった。

何年ぶりだろう
こんな気持ちは。

野菜の甘みが嬉しいなんて
ずっと忘れてた。

洗いものもしながらできた。

何かにとり憑かれたみたいに
夢中になって作ってた

米粉かそば粉を使った
白砂糖を使わない
優しい味のクッキーなんかも作ってみたかったけど
そこまでの気力は残ってなかった。

いつかまた
作りたいと思う日がくるといいな。

面倒くさがりのくせに
手作りが好きなのは

忙しいながらも朝ご飯を用意してくれた母と
舌がバカにならないようにと
夕ご飯と
おやつまで作ってくれた
おばあちゃんのおかげなんだろな。

おじいちゃんは
リンゴをむくのと魚を焼くのが担当だったな

じいちゃんが死んで
葬式が終わって
何日経っても泣きやまない私に
兄は梨をむいてくれた

もうそんな季節

もうすぐ
兄の命日

もうそんな季節

ここ何週間かは
身体も感情も
目まぐるしかった

今日も不安を抱えながら
とりあえず布団に入るしかないか
と思っていたら

大好きな人からの電話があった。
彼の声に
幸せをもらえた
心が少し
柔らかくなれた

今日は眠れますように

明日　寝坊してしまっても
許してあげたい

連日　ひとりでよく頑張ったんだから
それくらい
許してあげましょうね。