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アジア系食品

アメリカ生活が10年を超えたが、ここまでアジア系スーパーが近くにない環境は初めてである。ブルックリンにいた頃は車がなかったが、ブルックリンにも中華街があったし、マンハッタンからの地下鉄の乗り換えでも抱えられる量ならば、家から30分くらいのところにある日系スーパーで買い物ができた。といっても不便であったのは確かで、3ヶ月に一回くらいしか利用していなかった。なければないで、食生活諸々、順応できるものである。

ポートランドに引っ越してからは、車生活となり、Uwajimayaという日系スーパーに行けば大抵のものは揃った。特にベーキングビジネスを始めてからは、Uwajimayaに週1でショートケーキなどを卸していたので、配達のたびに買い物もできた。またアジア系が多いエリアだったので、中国、韓国、ベトナム、フィリピン系のスーパーはもちろん、アメリカのスーパーの品揃えもそこそこ良く、なんでもどこかしらで手に入った。

今回は久々にポートランドに用事があったので、片道1時間半超の山道、車を飛ばした。ポートランドとオレゴンコーストの間には、山道が1時間ほど続く。車の運転は嫌いな方ではないが、マリオカートのコースのようなクネウネ山道をかなりのスピードで運転しなければいけない。信号と言うのは、あったら邪魔に感じるものだが、1時間の間、一つもないと休む暇なく車を飛ばさないといけないので、おちおちコーヒーも飲んでいられない。山道を抜けた頃には肩が凝り、手も痺れる。それでも慣れ親しんだエリアに来ると急に運転が楽になる。ポートランドで用事を済ませ、(久々のダウンタウンは悲しいほどに変わり果てていた。その話はまた別の機会に書くとしよう。)あとはアジア系食品を買い込むのみ。業務用保冷剤を二重のこれまた業務用の保冷バッグに詰め込んできた。準備は万端である。小腹が空いたので、日系のパン屋でカレーパンとメロンパンを購入。ドライブスルーでコーヒーを仕入れ、いざ買い出しスタートだ。

まずはUwajimaya。やはりここはいつも混んでいる。なくても生きていけるが、あると嬉しいものがずらり。お好み焼きソースを何本か。納豆や餃子の皮は冷凍で売っているから多めに買う。きな粉も手に入りにくいので、買っておく。マニラマーケットではバブルティー用のタピオカに餅粉。ポートランド近辺はバブルティーのお店が山ほどあるが、山を越えると一つもない。ならば自分で作るかと思っても近所ではタピオカが見当たらない。やはり買い出しに来るしかないようだ。

一通りの買い物を終えて家路に着く。1時間半の道のりが待っている。会いたい友達もたくさんいるが、暗くなると山道も不安だ。今日のところは冷凍食品もあるし直帰なのは仕方ない。帰り道聴きなれたポートランドのラジオ局は半ばで電波が届かなくなる。アストリアのラジオ局に切り替えて残りの45分乗り切った。帰りの車の中で買い忘れたものをいくつか思い出す。次の山越えまでお預けだ。

40年近くの人生の中、引っ越しもよくしたし、順応性はいい方だと思う。どんな環境でもなんとかやってきた。確かにアジア系食材が手に入らないのは、不便だが、新しいこの土地で、たまにポートランドまで出ればなんとかなりそうだなと安堵した。家の近くまでに来るとエルクの群れが迎えてくれた。ご近所さんよりよく遭遇する彼ら。失うものがあれば得るものもある。ゆったりと動く彼らを見ていると少し幸せな気持ちになった。




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