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認知症と向き合う

認知症の治療薬ができた。
そんなニュースがあったことをご存知でしょうか?

結論から言うと治療薬というと語弊がある。というところでしょう。

そもそも認知症とは大きくわけて4つ、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症にわけられ、今回作られた薬は、「アルツハイマー型認知症の進行を弱める薬」です。

何故こんな話をわざわざするのか?
それは認知症について正しく知っておいていただきたいからです。

病院で働いていると、面会にこられた家族さんが、患者様を叱っている場面に遭遇することがよくあります。

『また同じ事を言って!もっとしっかりしてよ!』
『わけわからんこと言わないの!』

そして面談や病状説明でこう聞かれます、

『認知症は少しは良くなっているんでしょうか?』

、、、気持ちは分かります。

ただ、私も祖母がアルツハイマー型認知症ですが、奇跡的な希望を持つより、現実を受け止めて接したほうが家族としては気が楽になると思います。
個人的には、ですが💧

話を戻します。
認知症とは脳の器質的な変化による認知機能の異常です。
器質的な変化があるということは、脳そのものの組織が死んだり、変性したということ。
そして皮膚や骨と違い脳は治りません。

脳疾患でも治療としてリハビリが適応となっていますが、脳そのものを治しているわけではありません。
[三日坊主~↓]で一瞬お話しましたが、新しい脳の回路を作っているにすぎないのです(脳そのものの治療としては。筋肉に対するアプローチもしますよ。)。

運動の神経回路であれば時間をかければ作れる可能性があるでしょう。
じゃあ記憶の回路は?注意の回路は?判断力は?理性は?社会性は?
残念ながら現在の医学ではどうしようもありません。

ではどうするのか。
ここまで書いていて申し訳ないのですが、実は私自身答えは出ていません。

私の祖母が認知症になったときは、すでに病院で勤めており、「とうとうなったか」と冷静に思いました。
(私はおばあちゃんっ子だったので、恩返しできなかったことを嘔吐きながら後悔しましたが、、、
それでも認知症自体の需要はできました)

実家に戻り、祖母の部屋に急ぐ。
「ただいま」
とテレビを見ていた祖母に、後ろからいつもの調子で声をかけましたが、祖母は振り返ることもなく、

「おばあちゃん、もう駄目になってしまった」


横に座り顔を見た瞬間、
(あぁ、抑うつ症状が出てる、、、)
そう理解しました。

表情がなく、視線はテレビに向いてこっちを見ようともしない、、、

認知症の初期症状として、認知症になってきていることを自覚できるため、絶望しうつ病のような症状になることがあります。
まさに教科書どおり、でした。

(ああ、仕事をしよう、、、)

「まぁ歳も歳だからね、でも早めに気づけて良かったじゃん?最近の施設って独り暮らしのアパートみたいなもんだし。」
感情を噛み殺し、ことさら明るく話します。

傾聴し、共感し、隙をみて冗談を言う。
笑顔が一度でも見れたら任務成功。
そんなことを考えながら口先だけで。

祖母がこちらを見なかったので表情を作る必要はありませんでしたが、部屋を出たあと涙がこぼれ落ちました。

(ごめんなさい)

と。
心のそこから思った謝罪の気持ちは、恩返し出来なかった後悔なのか、正面から向き合わなかったからなのか。

次に施設であった祖母は記憶力の低下が進み、認知症になったことも忘れて、多幸感に包まれていたので良かった(本当に誰にとってなのか、、、)と思えましたが。

今でも祖母に会いに行ったときには決まった会話しかしません。
今までの会話パターンから私が大学生あたりまでの記憶しかないと評価できているので、そこまでの思い出を話す程度。
それを続けることに意味があるかも分かりません。

さて、無駄話が長くなりましたが、結論!

認知症の方を強く非難することは、医学的にも個人的な感情としても絶対に意味がないと言えます。

しかしながら、私のように機械的な対応をすることは、「職員と患者」の関係であれば正しく思えますが、「家族」としては後悔と申し訳なさしかありません。

なので皆さんには、いつか対面する問題と捉えて後悔のないように過ごしていただきたいと思っています。

最後に「ユマニチュード」という認知症対応の技法から抜粋した、認知症の考え方です。

[認知症の問題とは、認知機能が衰えることではなく、社会の中で見たり、聞いたり、話したりといった、当たり前の日常の行いから、次第に遮断され、まるで、無人島でひとり隔絶されて過ごしているような生活になってしまうことが問題なのです。]

だから寄り添うことが重要と説いています。

私は仕事として割り切らないと家族にさえ寄り添えない、そんな懺悔を含んだお話しでした💧




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