見出し画像

「へん」にはその漢字のもつ性質を表す役割がある.木へんは木に関係する.サンズイは水に関係する.誰しもが「サンズイ=水系」という式があるはずだ.

だからこそ、漫才の漫にサンズイが付く事に違和感を感じてしまう.

芸人の世界にいれば否が応でもこの漫才という言葉に触れる.
香盤表のコンビ名の隣に「漫才」
賞レースの用紙に「とにかく面白い漫才」
養成所のチラシに「君も漫才師になろう!」

この文言を見るたび同じ疑問に悩まされる.
初めてこの言葉を見た人は「サンズイの付く漢字に才能の才?、、、、泳ぐ系?」と思うかもしれない.特にチラシという万人に周知させる目的のあるものであるなら「君も漫才師になろう!(※水は関係ありません)」と補足を入れても間違いではない.

水に苦手意識を持っている人も安心して応募できるように加筆する必要がある.

君も漫才師になろう!(※かなづちの方でも大丈夫です)
逆に泳ぐことを決定づけている

君も漫才師になろう!(※濡れません)
養成所の内は濡れないだけで本格的なプロの漫才は濡れることを予感させる

君も漫才師になろう!(※地上でする行為です)
こんな基本的な内容ですら記載しないといけない程のマイナー競技なの?と不信感を煽る

このチラシは漫才のマの字も知らない人間には向けて作られていない.お笑いの世界に憧れる若人に「なろう+エクスクラメーションマーク」一歩目を踏み出す勇気を与えているのだろう.

無益な妄想はさておき、漫才は水と無縁と言うよりむしろ対極の関係といっても過言ではない.

賞レースの注意書きに「舞台上で水気のあるものは使用できません」とある.舞台周辺には電力を使用した精密機器が設置されている.それらに水がかかった時の深刻な状況は容易に想像できる.

こんな至極当然の警告が公式に記述されている馬鹿馬鹿しさを取り上げたのがガクヅケさんの水を被る落語家のネタだ.頭に水を被るネタばらしの瞬間、どよめく笑いが起きた.これは「いやそのルール破る奴おるか!」の笑いだ.

そのネタはコントだが「お笑いのネタ」と「水」という二つの事象のギャップの大きさはこの笑いの大きさが物語っているとみて差し支えない.

もしかしたら真逆と思えるその概念を名前に取り込んでしまう様な常識の破壊こそが漫才の精髄であるということの表れかもしれない.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?