好きな食べ物あてゲーム

「ジャンルで言ったら・・中華」

中華ではない．『ジャンルで言ったら中華』なのだ．

26歳にもなって男3人で好きな食べ物あてゲームをするとは思わなかった．午前1時半，暖房26度設定．一度上げて27度．500ミリのロング缶が少しだけ残ったまま飲めない温度に変化していく．携帯をいじりながら考えていないふりをして必死で料理を思い浮かべる．脳内で中華屋のベドベトになったメニュー表をめくる．だがしかし,このメニュー表には載っていない可能性もある．なぜなら

「ジャンルで言ったら」中華だからだ．

普段意識して中華料理と思っていない，だが改めて考えると中華に分類される食べ物

「じゃあ一個目の質問ね．その食べ物ってジャンルで言ったら何？」
少ない質問数で正解を出した方がポイントは高い．別にポイント制で始めたゲームではないが，なんかそんな気がする．
「ジャンルで言ったら中華」
確実にジャンルの明示以上の情報を提供してしまっている．
ひどく哀れ．

肉まん？違う
あんまん？肉まん出た時になんか言うよ

一人沈黙を押し通していた僕はついに気づいた．
ビーフンだ

はい．マジでお疲れさん．相場5個くらいの質問でみんな当てられてたけど，これはもうなんかごめん．ほんとすみません．コンビニ買い出しお願いします．

ビーフン？違う

頭の中は真っ白になった．僕たちは次の質問を繰り出す．

Q:それって直近でいつ食べた？
A:一カ月以内には食べた

それなりに日常生活でも普通に食べるものなのか．でもこの辺はその人の食生活にも大きく依存する．その人が変わったものを好物としていれば普通の食べ物じゃない可能性もある．意外と決め手に欠ける情報しか得られなかった．

Q:それって麺系？
A:違う

アキネーターがもうすぐ答えを出す時みたいな質問をした．しかしこれは確信に近い答えが既にある場合にする質問だった．手探り状態の現段階では得利の低い質問だった．
ラーメンが消えただけだ．

Q:給食でも出る？
A:出る

馴染み深い食べ物だ．手の届く範囲に答えはあるはずなのに出てこない．正直かなりの良問だ．義務教育で食べ物あてゲームがカリキュラムに含まれていたら物理学のベストセラー参考書「良問の風」に盛り込まれるに違いない．このゲーム始まって以来の盛り上がりを見せている．

Q:本当に中華？
質問ではなく確認．すると
A:ゲンギに沿っては中華だと思う

ゲンギ？口頭で言われると一瞬わからなかったがすぐに原義であることが理解できた．まだ完全に酔いは回っていないようだ．
原義．言葉の定義上では中華．
ヒントとしては有益なものではなかった．

・ジャンルとしては中華
・なじみ深い食べ物
・麺ではではない
・給食でもでる
・本当に中華

その後15分考えたが正解にたどり着くことはできなかった．
僕らはこのゲーム始まって以来最初で最後となる白旗を上げた．
あてられる側の男は口につまみを運びながら解答を導出できなかった愚民を見下げる．

答えを聞いた僕達は口惜しくも納得せざるを得なかった.
あ～なるほどね・・いや確かに・・・ジャンルで言えば中華なのか・・

彼は得意げな顔でハイボールの缶を口につける．ほぼ垂直に傾けて最後の一口を流し込んだ．
優越感を肴に勝利の美酒に浸る彼を羨望の眼差しで見つめる敗者達.ハイボールと逆の手に楊枝に刺さったつまみを持っていた.
それがまさしく

唐揚げだった．