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コンパコラム(4) ~磁束密度公式導出その2~

電磁気分野の学習を進めていくと、コイルというものが登場する。そのためにソレノイドコイルが作る磁束密度の大きさを求めておきたいのだが、そのためには前回割愛した円形電流起源の磁束密度公式(一般形)が必要となるので、今回まとめておくことにする。

それではさっそく円形電流起源の磁束密度公式の導出から始めてみよう。

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円形に流れる電流について考える。微小領域(長さはΔℓ)を流れる電流がPの位置につくる磁束密度の大きさについて考え、それの累積として一般形の式を導いてみよう。ビオ・サヴァールの法則「コンパコラム(3) ~磁束密度公式導出~」を参照)より、微小領域を流れる電流がPに作る磁束密度の大きさは上に示したようになり、向きは青矢印の通りである。

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相似の性質を利用することで、微小領域を流れる電流が作る磁束密度の垂直成分の大きさを表すことができる。それを円形全体で累積をとることにより、円形電流起源の磁束密度公式を導くことができた。この累積の計算において変数となるのは微小領域の長さだけなので、それを円周の長さに置き換えることで容易に計算結果を求めることができる。円の中心(点O)においては垂直距離x=0なので、さらに簡単な式で表すことができる。(これが教科書に登場するものである。)

さて、円形電流起源の磁束密度を計算することができるようになったところで、その円形電流がいくつも集まった場合を考えてみよう。それが、ソレノイドコイルと呼ばれるものである。

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円の半径と比べて十分に長いコイルについて考える。このコイルの中心を貫く磁束密度を表す式を導きたい。

いつも通り、全体を考える前に微小区間が作る磁場について考えて、次にその総和を考えるという手順をとってみよう。

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単位長さあたりの巻き数をnとすると、微小区間Δxに存在する円形コイルの数はnΔx本となる。先ほど1つの円形コイルが作る磁束密度の大きさを表す式を求めたので、それをnΔx倍することで、微小区間にある円形コイルが点Oに作る磁束密度の大きさを求めることができた。

それでは累積をとっていこう。

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累積の計算で少し工夫してみる。図のようにθを設定することで、x=atanθと表すことができる。これにより積分計算を容易に行うことができ、上のようにソレノイドコイルが作る磁束密度の式が導かれる。

今回は前回割愛した円形電流起源の磁束密度公式を導出した後、ソレノイドコイルが作る磁束密度の大きさも式で表すことができた。今回の計算はこれまでで最も難しかったと思われる。入試に出るものではないので覚えておく必要はないが、物理を学ぶ一人の人間として、一度手を動かして計算してみてはいかがだろうか。

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