見出し画像

電磁気の考え方をコンパクトに ~電位~

今回は電磁気分野におけるエネルギーの考え方を見ていきたい。そこでまず、力学で扱う重力による位置エネルギーを思い出してほしい。重力による位置エネルギーとは、質点がある位置にあるとき、その点から基準点まで質点が動くときに重力が為すであろう仕事のことであった。逆に言えば、外力を加えて基準点から任意の点に質点を動かすときに、重力に抗って外力が為すであろう仕事のことである。前回はクーロン力について考えたが、クーロン力が為すであろう仕事を考えることで、電荷のチャージ由来のエネルギーを考えることができるのではないだろうか。そこで、電位という概念が導入される。まずは、クーロン力による位置エネルギーを考えることから始めよう。

画像1

x軸の原点にチャージが+Qの電荷を固定してある。基準点をx=r0とし、位置x=rにあるチャージ+qの電荷が基準点まで動くときに2つの点電荷間にはたらく斥力が為すであろう仕事を考える。

画像2

微小距離dxだけ動くとき、斥力がなす微小仕事は位置xでのクーロン力(微小距離の間で一定とみなせる。)と微小距離dxの積で表せる。これの、位置rから基準点までの累積を考えることで斥力が為すであろう仕事を求めることができる。積分を用いることによりこの計算は容易に行うことができ、Uが上のように求まる。基準点を無限遠に取ることで、Uは簡単な式で表すことができた。(高校物理では無限遠を基準にすることが多くあるが、実はこれは難しくするためではなく、簡単にするためだったということだ。)ここで求まったUがチャージ+qの電荷の位置エネルギーである。

画像3

前回はクーロン力を表す式を相手側の影響部分と自分の情報というようにわけてみたが、今回も位置エネルギーの式を同様にわけてみる。前回は相手側の影響パラメータを電場と呼んだので、今回も相手側の影響パラメータを電位と呼ぶことにした。さて、電位を式で表すことができたところで、電位の式の形が電場の式の形と似ていると考えるのではないだろうか。比較してみよう。

画像4

電位がΦ、電場がEである。どうやらrの次数だけが違うようだ。次数の観点から言うと、電位を距離で微分することにより電場が、電場を距離で積分することにより電位が求まることがわかる。ただし、符号が変わることに注意しなくてはならない。次の画像を見よう。

画像5

縦軸に電位、横軸に距離をとっている。電位は距離に反比例するので反比例曲線が描かれる。これを灰色の線で立体的に表してみた。電位を微分する(接線の傾きを求める)と電場(逆符号)となることから、ここでの電場は図の赤矢印の方向に生じているとみなせる。つまり、電位の減少方向に電場が生じていると考えることができる。このため、電位を微分したものと電場の符号が逆になっているのだ。ここの理解は少々難しいのでゆっくり咀嚼してみてほしい。

今回は電位の概念を導入し、前回導入した電場と比較してみた。今後も使える概念のポイントは電場は電位の勾配であるということだ。逆に言えば、電位は電場の流れを説明するための仮想的な高さのことである
クーロン力による位置エネルギーを求める際、今回は積分を用いたが、本質が積分にあるわけではないということは念押ししておく。微分や積分などはあくまで数学的な手法であり、物理においては単なる道具に過ぎない。微分積分を用いた物理はとても魅力的であり、これからも記事の中で多く紹介していくが、本質を見失わないようにしてほしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?