
月記(2024.10)
10月のはなし。
〔写真:Canon AE-1 & LomoChrome Turquoise〕
§.音声放送の神輿、オモコロの神輿
愛聴しているウェブラジオ『音声放送』で、昨月9月に見に行ったRAYのワンマンライブが話題に上がった。
(インターネット的な意味で)物心がついたころからオモコロに触れている身として、自分が熱を上げているカルチャーがタイムリーに取り上げられたことを嬉しく思う。とはいえまぁオモコロなので、真正面から絶賛しているわけえではなく、斜め目線から面白おかしくネタにしているのは間違いない。ただそれこそオモコロの色、と言ってしまいたい気持ちもある。いちRAYファンであると同時にオモコロファンでもある身としては、どうか皆様には寛大な心で受け止めていただければ……と願うばかりである。
すこしフォローすると、マンスーン・ヤスミノ両名とも音楽好きであることは確かである。そのうえで、マンスーンさんは今回はじめてアイドルライブに参加したという体験を話し、それに対してヤスミノさんがあえて「世間的な偏見」をもってあれこれ言う、という流れになっている。このベースにはヤスミノさんがかねてから考えている「音楽は好きだけどライブには行きたくない人っているよね?」というテーマがある。これは、ライブ特有の熱狂的な空気や我を忘れるような感覚というものが支持されることは承知のうえで、そこに乗っかることができなかったヤスミノさん自身の体感からはじまっている。個人的にもタイムリーな話題だったので、その点でかなり面白く聴けた。
しかしながら、いちオモコロファンとしてはやはりろくでもないものを求めてしまうので、ここ最近でもっともろくでもない回を紹介しておく。ろくでもない雑談から、ぼんやりした哲学に向かっていく対話。それが音声放送。
§.ライブ感想『tie in reaction vol.3』
『tie in reaction vol.3』を見に行った。アイドルグループ・RAYのメンバー、内山結愛さんが主催するライブ企画の第三弾。共演はSPOILMANとthe bercedes menz。
両組とも、なんというか、非常に「フィジカル」なバンドだと感じた。
SPOILMANからは常にマイクやアンプを通る前の音が伝わってきた。震える太鼓、金属、声帯、床。余韻や隙間を残した音作りによって、逆にライブ会場全体の空間を取り込んでしまう迫力があった。
ベルメンの楽曲にはもともと密度が高く飽和しているような、暴発寸前の凄みを感じていた。ライブでそうした楽曲が奏でられると、各パートが身体的な揺らぎと共に熱を持ち、会場に文字通りの爆発を巻き起こしていた。
SPOILMANは引き算でリスナーを引き込んでいき、ベルメンは足し算でリスナーを巻き込んでいく。両組ともその力場を発生させているのは、その空間にいるメンバーの身体性、「フィジカル」にあるという点で共通する。
この公演を締めたアイドルグループ・RAYは、まさに舞台で歌って踊るという「フィジカル」が持つ力を体現するグループだ。SPOILMANを足し算、ベルメンを引き算と例えてみたが、これらはおおむね楽曲(≒音作り)の密度の高低と対応している。では様々なジャンルの楽曲レパートリーを取りそろえているRAYは、どのように例えられるだろうか。おそらくもっとも適当なのは、かけ算だ。そしてその力場を発生させているのは、歌って踊って個性を活かして、理想を目指して日々研鑽を積む、メンバーたちの「フィジカル」だ。
三組に通底する「フィジカル」によって下支えされた公演、三組すべてを好きになってしまうのも致し方ない。てめえの「フィジカル」を震わされてしまったのだから。
§.ライブ感想『MATSURI SESSION AT BUDOKAN』
ZAZEN BOYS『MATSURI SESSION AT BUDOKAN』を見に行った。生の実感だけは持っておこうと、強く思った。
ZAZEN BOYS、そして向井秀徳よ。僕だ。吉岡里帆ではない。長澤まさみでも、キャメロン・ディアスでもない。僕からのメッセージだ。ありがとう。ありがとう。 pic.twitter.com/BSf9ZHydlp
— 日景 久人 / HIKAGE Hisato (@ht71von) October 27, 2024
日本武道館は音が良くない、と言われる。そもそもコンサート会場として設計された建物ではないのだから仕方のない話ではある。もちろん時代が進むほどに音響技術も進歩しており、改善は進んでいる。とはいえ専用に設計されたコンサートホールだとかライブハウスだとか、そういった環境とはやはり異なる。僕は西側の2階席から斜めにステージを見るような位置で聴いていたが、ステージの対面側からの反射音は終始気になった。
ふと思い出したことがある。向井秀徳はSound & Recording Magazineのインタビューにおいて、『らんど』で目指した音作りについて、「軽音楽部の部室みたいな感じ」や「渾然一体としたサウンド」という表現で答えていた。いわゆる良い音、各音が明瞭に分かれてバランスがとれた良い音といったものとは、まったく異なる方向性だ。しかし、どうしてもそうなってしまうのだという。彼のなかには明確な目指すべきバランスがあるのだそうだ。
僕は勝手に納得した。日本武道館という空間は、ZAZEN BOYSにとっての「部室」だった。規模がデカくて歴史があるだけの「部室」だ。決して「良い音」ではなくとも、グシャっとしたいびつな響きであっても、そこでZAZEN BOYSの四人は互いの音を感じ取り、視線を交えて演奏を続ける。そしてそれを老若男女が取り囲み、揺れたり踊ったり聞き入ったりしている。日本武道館という「部室」に充満したアツいKIMOCHIが、天井に空いた穴っぽこから噴き出す絵が見えた。それはさながら昇り龍のように、うねりあがって天を刺していた。
大事なことなので繰り返しておく。生の実感だけは持っておこうと、強く思った。
ZAZEN BOYSがいる日本武道館、軽音部のでっかい部室みたいで最高だった
— 日景 久人 / HIKAGE Hisato (@ht71von) October 27, 2024
§.オープンチューニングってすごい
すごい。オープンチューニングでギターを弾くと気分がよくなる。
【F A C G C E】全開放弦はFM9。かの名曲で使われているため「Never Meant Tuning」ともいわれる。6弦に対して1弦が半音下がってメジャー7thを活かしやすい。低音弦側と高音弦側で役割を分けて考えるといい感じ。
【D A D G A D】全開放弦はDsus4。「オープンD」の3弦を1音上げた変形型。ローマ字読みで「ダドガド」と言われたりする。濁点の多さに違わず硬質な響きが作りやすい気がする。
どれも適当に左手をピロピロさせるだけでだいたい良い雰囲気が出る。コードフォームや、レギュラーチューニングとの関係、そのへんのパターンが手に馴染んできたらもっと気分がよくなりそうだ。みんなもチューニングをいじってエモになろう。