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なぜ空前の古着ブームが起こっているのか?

昨日、このコロナ禍で経済が低迷しているのにも関わらず空前の古着ブームが巻き起こっているという旨のニュースが日テレをはじめ各報道機関やネットニュースで放映された。普通、経済が低迷すれば嗜好品としての服への需要自体がなくなってしまうのではないのかと考えたのだ。そうなのにもかかわらず起った空前絶後の古着ブームに着目する。

古着ブームの歴史

1 江戸時代〜戦後
再使用・再利用の概念は一説に平安・室町時代に物として確立されていったと言われているが、特に江戸時代には様々な文献に衣服に限らずありとあらゆる物をリユースとリサイクルしていたと残されている。古来日本人は物が増えすぎた現代社会よりも意識的に国民総エコ社会だったのだ。着終わった着物は古着に回され、古着として活用できなくなった布切れでもそれを繋ぎ合わせ羽織り物とした青森の南部裂織は元祖パッチワークとも言える。明治時代になり着物から洋服に移り変わっても物を大事にするマインドは残り続けた。
2 戦後~バブル期
戦後、アメリカやイギリスなどの欧米諸国の物品・文化が多く流入し、ドラマや映画、音楽から影響の受けた若者からはスクリーンに映る往年のスターと同じ格好をしたいと思う者も多かった。しかし舶来品とも呼べる海外製品を扱う店は今ほど多くなかった時代故に現地で買い付ける趣味人の富裕層も相当数いたとされる。他に、上野・浅草界隈ではアメリカ軍の放出品を扱うミリタリーショップが飴屋の横で栄えた。現在もアメ横には様々なミリタリーショップが軒を連ねている。そして、80年代になり日本にバブルが訪れるとヤンエグ・イケイケギャルと呼ばれる当時のトレンドセッターが目をつけたのは目新しい電子機器やブランド物だけでなくアンティークと呼ばれる調度品の数々もトレンディとし、その流れでヴィンテージやアンティークは古臭いものではなくある種の美徳であるという認識もこの頃広がっていった。
3 バブル崩壊後~現代
90sに入ると古着が一大ブームを巻き起こす。主に70sのアイテムがそのトレンドを彩ったが特に人気の高かったアイテムはジーンズだ。カリフォルニアの炭鉱から発掘された泥だらけの100年前のジーンズに300万の値段がついたり穴だらけのジーンズでも人気のモデルは数万円はくだらなかった。ジーンズ購入後に人為的色落ちを防止するために数ヶ月は洗わずに履くという常識もこの頃広まり、自他共にジーンズ好きを豪語していた当時、人気絶好調だったSMAPの草なぎ剛を始めSmart、Boon等多くのファッション誌やメディアで古着特集が組まれた。00sになると古着はおしゃれな人ならば必ず通る嗜みとされブームからある種の系統と定められた気もするが2014~2016年ごろには90sリバイバルと称し90sに流行ったファッションを再解釈するような形で再び古着ブームを起こした。現代ではおしゃれな人の嗜みからおしゃれになりたい人への嗜みという位置付けになったような気がする。

古着ブームの実態そして今ドキの若い子はプレタポルテを買わない!?

飲食の次にコロナの影響を受けたとされるアパレル業界の中で昨年度、
その中の一つである古着業界の売り上げ率が90s以来の高インフレを叩き出しているそうだ。
そして、今回の古着ブームの実態を調べていると主にブームを牽引している店はラグジュアリー専門のブランド古着屋か激安を売りにした古着屋に二分化されていることに気づいたのだ。確かに経済が低迷すれば皆リーズナブルな物を求めたくなる。それは納得いくが、なぜ比較的に価格帯の高いブランド古着屋が売れているのか、それはブランドは永遠のステータスシンボルだからであるとしか言いようがないのかもしれない。
このご時世でもエルメスが黒字だ!っていうので納得がいくだろう。
しかし、今どきの若い子、つまりZ世代は高級既製服を買わない人が増えているらしい。この不景気で財布の紐が固くなっているのも一つの原因なのだろうが、これは高感度セレクトショップの相次ぐ閉店、そして反対にストーリー性がありデザインも凝っているが価格帯はリーズナブルなGANNIやnanushka AnnaKiki などのオルタナティブ・デザイナーズの台頭が物語っている。今、Z世代に求められているのは値段ではなく価値なのである。
(↓上記で取り上げた各オルタナティブ・デザイナーズのインスタグラムより引用)

セカンドハンドの行く末は、、、

最後に、サステイナブルが提唱する古着という物自体が新たな循環型ビジネスという話もある。グッチやバレンシアガを保有する親会社のケリングがフランス大手のブランド古着リセールサイトの「ヴェスティエール・コレクティブ」(以下VC)に億単位の出資をしたとニュースになった。VCのCEOビトナーは「二次流通は今後も発展していくと」リユースを通して持続可能性をファッション業界に提言する意向を示した。これを踏まえ古着を買うこと自体が慈善へと繋がる未来もあるのではないのか、そしてこれまで以上に古着に限らず中古品、USEDアイテムが一般的になるのではないかと私は思う。これを読んで古着もしくはあなたを趣味の過去を掘り起こすことが慈善にも繋がるんだと思った方は一度古着屋やリサイクルショップなどに出向きそれを手にしてみてはいかがだろうか。

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