名前があったら素敵なアレ

先月くらいに久しぶりに目にしたものがある。アパートの玄関の鍵を閉めようとしたら、扉がなんかキラキラしていた。キラキラってほどではないな、うっすら光が反射してきて、それが揺れている。(ゆらゆら よりはちょっと速く、タタタタ よりはちょっと遅い)


私は18まで親や兄弟と一緒に住んでいた。その一軒家は借家で、親は実家に引越し、今はリフォームか建て替えされているという噂でもう見ることもできないんだけど、田舎町で、目の前が海で、日当たり抜群で(なのになぜかトイレが南側にある)、なかなかいい物件だった。

晴れた日は、もちろんキラキラとした海をいくらでも見ることができる。暇を持て余したとき、親の寝室の、畳まれた2組の布団に頭をのせると、ベランダの戸を通して、海から反射してきた光が、音もなく天井に揺れている。

日当たりの良い部屋のもう1つは、我々が小さい頃は兄弟共同部屋、少し年齢が上がると兄2の部屋、そして兄2が家を出た後の最後の1年は、私の部屋となった。そこでも、天井で光が揺れていた。

来年には私も家を出て、というか親が実家に引越すこともほぼ決定だったので、高3の私はこの家や海が恋しくなるであろうことを知っていた(ぽさんがそういうことをよく言っていたから)。写真をいっぱい撮った。近所の子でも、海が家の目の前でなければ、こんな光があることを知らないんだろうなと思った。正直、ちょっと優越感すらあった。


ちなみに今住んでる街は海に面していれど、アパートからはそんなに近くない。近いけど、光が反射してくるほどではない。そもそも海が北にある。そしてそのことが未だに違和感がある。南側が高地で、北側が低地…。

多分先月見たのはすぐ近くを流れる川から反射してきたものだ。この辺り一帯は埋立地だから、川といっても厳密には海だけど。きっと本当の川なら、また違った光になるんだろう。

川といえば、好きな小説で、川が流れる街が舞台のものがある。物語の導入部で、川について、川のある街について、丁寧に書かれていたから、それが筆者の生まれ育った街なんだろうなと勝手に思う。故郷の雪が懐かしいという文章も見たことがある。そういう原風景が、世界中の人にあるんでしょうね。転勤族のとこのお子さんとかなら、原風景がないというより、原風景がいくつもあるかもしれない。子どものうちって、一回見ただけですごく記憶してしまうことあるからね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?