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日本語が使えなくなる時

日本の人口減少が始まりました。国家の存続や社会の持続性、年金や保険の問題などもありますが、日本語を使用する人が減っていくということでもあります。日本人と日本語話者はほぼ同じであり、他の国籍者・言語と大きく異なります。

日本人が減れば日本語使用者も減ります。日本語使用者数が減れば、日本語を見かけることも減っていきます。減少が続けば、日本で生活する上で日本語を使用しない、あるいは出来ない状態に陥ります。そうなると、日本語に基づく日本文化の継承が出来なくなります。

今の日本において少子化問題は重要なはずですが、最重要課題としては考えられていません。本当に最重要と見なされているのなら、年金や保険を削ったり経済が大きく落ち込んだりあらゆる犠牲を払ってでも少子化対策を行うはずですが、そこまではしていません。ほんの少しずつしか対策が実行されておらず、人口減少を補うスピードではありません。

少子化対策が最重要課題ではないので人口は減り続けます。出生率の改善の他に、日本に住む人間を増やす方法としては移民しかありません。

しかし、移民を大規模に入れて日本語社会に同化させる試みもおそらく出来ないでしょう。移民の大規模な流入は大きな反発を招くでしょうし、移民規模が大規模であればあるほど、日本社会・日本語社会に同化せずに元の文化を保ち続けるコミュニティを日本国内に築くことになります。日本語を使えない移民が増えれば、日本語を使わなくても生活できるような社会を作るように内外からの圧力がかかります。無理矢理日本語使用を義務づけるのも現代ではまず無理でしょう。昔ならいざ知らず、強制的な言語の押しつけは不可能です。

少子化対策も成功せず、移民も無理ということになると日本人・日本語使用者は減り続けます。人口が減るだけであれば日本語文化は規模を縮小しながらも保ち続けられるでしょう。数百万人の話者しかいない言語でも文化は保てます。しかし、グローバル化が進み続けるのに日本語人口が減れば、日本語をメインで使用する(日本語しか使えない)人が、仕事・教育・生活上で不便になっていくことになりかねません。

日本語以外の言語も使うのが当然の社会になると、日本語で思考・表現する文化が減っていきます。日本人が減ればその分、一人の人間が自分の言語的リソースを日本語と他言語に振り分けるパーセンテージも日本語は割合を減らすはずです。その方が便利になるからです。

日本語の代わりに使われるとしたら、英語かマンダリン(標準中国語)でしょう。中国も人口減少社会に突入するので中国語が諸外国に広がるかどうかは微妙かも知れません。

ともかく、日本で使われる第一言語が日本語ではなくなると、英語あるいはマンダリンで日本文化を継承することは出来るだろうが、当然中身は変容します。

こういったことがすぐに起きるわけではないでしょう。少なくとも数十年から百数十年はかかる話です。ただ、全てがある一瞬で切り替わるわけでもないでしょう。日本語の使用が減る分野としては、まずは日本語で一から創作される文化ではなく、外国語で製作されたものを日本語に翻訳する分野でしょう。書籍や映画、あるいはニュースなどです。英語を無理なく使える人が増えれば、翻訳する必要性は減ってきます。翻訳物にお金を払う人が減るからです。翻訳されるまで待たなくて済みますし、翻訳によって内容が多少なりとも変わるリスクも減ります。

翻訳物の減少が日本語文化の終わりの始まりになると思います。まあ、その前にAIによる高性能な自動翻訳が誰でも簡単に使用できるようになるでしょうけれど。

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