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反対の反対は賛成という無責任(もしくはマイナス×マイナス=プラス?)

 日本にいるとあまりベネズエラのマドゥロ政権を支持する声を聞くことは少ないのですが、ニューズウィークのこの記事によると、アメリカ国内における左派、社会主義者の中にはマドゥロ大統領を擁護するような人達もいるそうです。

独裁者マドゥロを擁護する「21世紀の社会主義」の無責任

 外国からの援助物資を軍隊で堰き止めるような暴挙を行い、飢えて苦しむ自国民を見殺しにしようとしている独裁者に賛成する社会主義者というのは存在自体が矛盾している気がしますが、彼らにとってはアメリカ合衆国という資本帝国主義の権化、さらにはトランプ大統領というアメリカファーストの急先鋒に対して抵抗している存在であれば、木や石でも有難い存在なのでしょうか。

 かつて、特に20世紀のアメリカは、ソビエト連邦、中華人民共和国、北朝鮮やイランなどアメリカに対抗する存在と戦っているのであれば独裁者であろうと擁護し、支援していました。
1979年のイスラム革命で親米政権を追い出してイスラム主義国家になったイランに対抗するために隣国イラクのサダム・フセインを積極的に支持し、イラン・イラク戦争を誘発しました。また、北朝鮮と対立していた韓国の朴正熙も、その政権奪取に至るクーデターや政権維持のための弾圧にアメリカは目をつぶり、軍事支援や経済支援(これは日本もですが)を行っていました。中国から台湾に逃れた蒋介石もかなり苛酷な政治体制を敷いていましたが、アメリカは対中国のために支持していました。

 今の社会主義者を名乗る、反米主義者、反資本主義者も結局は前世紀のアメリカ中枢の裏返しなのでしょうか。歴史は繰り返しているのでしょうか。
もしそうであれば、今後のベネズエラは、台湾のように現状維持され続けるのか、韓国のように後に民主化されて左右勢力による政権交代が繰り広げられるのか、それとも、イラクのようにいずれ支持していたはずのアメリカと揉めて粉砕され、テロと内戦が横行する混迷と絶望に支配されるのでしょうか。

 繰り返しますが、前世紀のアメリカは、共産主義よりはマシだと思って独裁者を助けていました。そして今の大半の社会主義者は、帝国資本主義よりはマシだと思って独裁者を擁護しています。この後の結果はどうなるでしょうか?

 幸いなことに大半の国は独裁者を非難しています。しかし、ベネズエラのマドゥロ政権に対して、中国はその前任のチャベス時代から大量の資本投資を行っています。そして今はロシアが反米の橋頭堡としてマドゥロ政権に軍事的支援を行っています。かつてのアメリカーキューバーソ連のような三角関係が築かれつつあります。1960年代のキューバ危機の頃に比べると、アメリカとロシア(ソ連)の間の国力や軍事力には大きな差がついていますが、中国を足すとバランスが取れてしまいます。中国がベネズエラに艦隊を派遣する可能性はまず無いとしても、アメリカがキューバを陥落させられなかったように、アメリカがベネズエラに軍隊を派遣しても制圧は難しいかも知れません。
 しかし一方で、今のベネズエラはチャベス・マドゥロ両政権の経済的な大失敗により国民が疲弊し、軍隊の一部も離反しつつあります。周辺諸国も反マドゥロでほぼ固まっています。グアイド国民議会議長を掲げて速やかに政権移行して親米、親西側諸国の政府を作ってしまえば、案外うまくいくかも知れません。しかし、それには少なくとも、アメリカ国内において相当数の支持があってのことだと思いますが、トランプ憎しの左派勢力が反発してしまうと、アメリカの介入も中途半端になってシリアのような状況になってしまうのではないでしょうか。

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