ライト文芸レーベル『富士見L文庫』について、軽く
はじめまして、こんにちは。自称読書好き、なかでもライト文芸ばっかり読んでる春風ともうします。
とあるライト文芸の読書感想の記事をまとめているなか、『富士見L文庫について』の項がおもいのほか長くなってしまいましたので別記事にまとめることにしました。
noteには作家さんがたくさんいらっしゃりますね。最近まで知らなかった。しかしわたくし春風はただの一般のそのへんにいる普通の読者です。出版社や書店に勤めたことは一切ありません。その点をまずご注意を。そしてnote初投稿です。どうぞお手柔らかにお願いいたします。
言わずと知れたライト文芸最強レーベル、『富士見L文庫』
KADOKAWAのレーベルのひとつで、ライト文芸(キャラクター文芸ともいいますね)の中でも老舗な印象の『富士見L文庫』。わたしが小説を好きで読むようになったときには既にありました。もうひとつ古いんじゃないかと思うのが『オレンジ文庫』(集英社)。はてさてどちらが古いのでしょうか?
富士見L文庫:2014年6月14日に大人の文学少女を対象として創刊された。オレンジ文庫:2015年1月20日に創刊したライト文芸レーベルである。(wikipedia調べ)
なるほど古い。『富士見L文庫』はライト文芸の先駆けである、といっても間違いなさそうです。
今でこそ様々な出版社がライト文芸のレーベルを立ち上げていて、近年ではアニメ化やコミカライズも珍しくありません。ここだけの話、去年などは乱立といってもいいんじゃないかと思うくらいにライト文芸レーベルが増えました。軽い興味では把握しきれないほどに流行っています。ライト文芸は今、めちゃくちゃ流行っています。
◇ライト文芸の有名作
アニメ化もして有名な作品といえば、富士見L文庫『かくりよの宿飯 / 友麻碧』、オレンジ文庫『宝石商リチャード氏の謎鑑定 / 辻村七子』、講談社タイガ『虚構推理 / 城平京』。どれもライト文芸レーベルの作品が原作です。
「小説は読めなくてもアニメなら」「アニメ面白かった。小説も読んでみたい」という層は確実にいるはず。いなきゃおかしい。アニメをきっかけにライト文芸の裾野は広がっている、はずです。広がってなきゃまずい。
◇『メディアワークス文庫』もあるよ?
同じKADOKAWAに『メディアワークス文庫』があります。『博多豚骨ラーメンズ』と言えば聞いたことがある人も多いと思います。アニメ化もコミカライズもしましたね。
KADOKAWAのこのふたつのレーベル。どんな違いがあるかといえば、わたしの個人的な印象にはなりますが、より恋愛の要素が多く、文章も大人っぽいのが『富士見L文庫』。対して青春要素が色強く、よりメディアミックス向けだと感じるのが『メディアワークス文庫』。しかし読んでみるとこの区別、必ずしもあてはまらない作品も増えてきています。明確な違いはよくわからないのが正直なところ。
なんとなくですが、どっちの編集部の編集者と作家の間にコネクションがあったのかじゃないか、と思うこともあります。過去に名刺を交換したことがあり執筆依頼がスムーズだった、とかね。メディアワークス文庫はのちにKADOKAWAに吸収合併されることになったアスキー・メディアワークスの流れを汲んでる、等々の企業としての事情もあるかもしれませんし。(※こちら、まったくの想像で述べています)
※この記事はすべて読者の目線で想像しうることがらを述べています。まったくの素人のただの空想です。編集部には作家さんに執筆を依頼する際にレーベルごとに明確な指標・基準があるのかもしれませんが、それは一般の読者の知るところではないために…………しかし、もしそういったものがあるとしたら気になりますね(笑
◇KADOKAWA自体が、ライト文芸の老舗だ
角川文庫には「ライト文芸」(またはキャラクター文芸)という言葉がでまわる以前よりキャラクター色の強い小説がありました。
京都アニメーションによるアニメ界最強作画の『氷菓』。その原作『〈古典部〉シリーズ / 米澤穂信』であったり、映画化した『うちの執事が言うことには / 高里椎奈』、ドラマ化した『最後の晩ごはん / 椹野道流』、『宮廷神官物語 / 榎田ユウリ』、『深海カフェ 海底二万哩 / 蒼月海里』、『札幌アンダーソング / 小路幸也』全部大好きだ。全部角川文庫だ。『地獄くらやみ花もなき / 路生よる』も最高だぞ。
そういえば『角川ホラー文庫』もあるじゃないですか。『幽落町おばけ駄菓子屋 / 蒼月海里』六七質先生のコラボがもはや様式美。『夜見師 / 中村ふみ』中村ふみ先生は男二人のバディモノ界の神だ。『妖奇庵夜話 / 榎田ユウリ』、『奇奇奇譚編集部 / 木犀あこ』、『オニマル 異界犯罪捜査班 / 田中啓文』、『バチカン奇跡調査官 / 藤木稟』積読中です。謹んでお詫び申し上げます。エアー腹切りしてくるので少々お待ちを。
角川文庫すごい。KADOKAWAはすごい。
KADOKAWA……、もしや一強?
◇老舗『富士見L文庫』について、続
『富士見L文庫』の話に戻ります。
老舗、つまり「古くからある」とは、実は「隠れた名作が多い」ということでもあると思っています。
というのも、キャラクター文芸はまだまだこれからなところもあり、新刊や定番シリーズは書店で「平積み」や「面陳」という表紙をパッと見られる陳列方法がなされていますが、そのほかは「背差し」という棚に背表紙だけが見える陳列方法となることが多く、これはキャラクター文芸にとっては致命傷に近い、ゆゆしき事態です。
なぜならキャラクター文芸の売りのひとつ。それは有名イラストレーターさんが手がけた美麗な表紙です。ぶっちゃけ小説の顔。売れ行きの勝負の鍵でもあると思います。「イラストレーターさんが好きだったから」「今日はじめて見かけたけど絵柄が好きだな」「このキャラがかっこいい、一目惚れしちゃった」と手に取る人ががあとをたたずにいてほしいのがキャラクター文芸。というのに「背差し」です。なんたる悲劇でしょうか。
よほどのきっかけがないと出会えない。埋もれる名作の数々。
しかし安心材料もあるのです。『富士見L文庫』には巻末に他の作品の紹介、いわゆる広告が数ページがあるのが基本です。読書中の『悪魔交渉人 / 栗原ちひろ』にももれなくありました。『幽遊菓庵~春寿堂の怪奇帳~ / 真鍋卓』積読中です。『かくりよの宿飯』(二度目)、このころにもあったのですね。『貴族デザイナーの華麗な事件簿 / 柏枝真郷』5回は読んだな。『遠鳴堂あやかし事件帖 / 椎名蓮月』買ったよ読んだよあたりまえでしょ。『月影骨董鑑定帖 / 谷崎泉』あ、これは買いだ。となるわけです。
というわけで、わたしは言いたいです。
「今こそ掘り起こせよ『富士見L文庫』の隠れた名作!」
小説に、賞味期限なんてない。『とりかへばや物語』とか今でもちょー面白くない? 1000年モノだよ。わーお。小説に賞味期限、ないよね。
◇発売当初に買えよ、という意見について
そのとおりです。正しい意見だと思います。
とりかえばやの話は一時忘れてください。さすがに1000年前の平安時代には今生きてる誰もが生まれてないはずです。
Twitterで作家さんがおっしゃっていました。田井ノエル先生です。
上記ツイートのとおり「ライト文芸は発売1週間から1ケ月くらいの売れ行きで続編を出せるかどうかが決まる」そうです。
ーー 後日追記 --
このツイートに関しての詳細を、田井ノエル先生がコメントくださいました。作家さんの生の声で貴重なものです。ぜひこの記事のコメント欄をご覧いただければと思います。
ーー 追記ここまで ーー
出版業界の不況は今に始まった話じゃないです。はっきり言ってしまうと、一般の読者がなにをどう悩んでも解消できる問題ではありません。
けれど「なにが隠れた名作だ。発売当初に買えたらよかった。買っていたら続編が出ていたかもしれない。私はなんて悪い奴だ。腹切って詫びよう」というよくわからない後悔はゴミ箱にポイしていいとわたしは思います。4・5年も前のこと、今更悔やんでなにが変わります。
大事なのは今です。今、読みたいと思った気持ちが大事。
そして、あの日の後悔は、ぜひ他の作品に充ててください。
書店に行きましょう。コロナも心配なので文芸情報サイト『ラノベの杜』でもいいです。新刊のコーナーで気になる小説を見つけた。「面白そうだな」「表紙のイラスト、美しいな」「この作家さん前に読んだことあるけど面白かったな」でしたら手に取って、レジに持って行ってください。スマホからポチッてください。過去の後悔は今はもう変えられないけど、未来の後悔は今、変えられるかもしれないのです!!!! 数か月後、数年後、読めるはずの小説は、あなたの今の一買い、一ポチから始まる!!!! のです。
◇過去の名作にはファンレターを送ってみてはどうか
わたしはファンレターを送るのが好きです。好きというか、送るようにしているというのが正しいです。
どこかで小耳に挟んだのですが(おそらくTwitterです)、数年前に出版された本にファンレターが来ると編集者が「こんな作家いたな」と思い出すそうです。
なんてことだ。こちとら脳にチップとして埋め込みたいくらいに好きだと思っている小説なのに。
というわけで、過去の名作にはファンレターで感想を伝えてみましょう。Twitterをやられている作家さんなら直接リプライを送ってみるなどでもいいと思いますが、出版社の方々に目に触れるかたちというのがとてもとてもとても重要です。今はTwitter上の読者の発言をチェック(いわゆるエゴサ)している編集さんも多いそうですが、そうでない場合もあります。送るなら、より作家さんのためになる方法を取りたいですよね。
ぜひファンレターを送ってみてください。わたしは送ります。
だって面白い小説が読みたいから。
◇余談、富士見L文庫のオススメ作品をひとつ
続刊が読みた過ぎて喉から手が出てひとりアダムスファミリー状態の作品。
『榮国物語 春華とりかえ抄 / 一石月下』
(あらすじ)榮国地方の貧乏官僚の家に生まれた双子の春蘭と春雷。姉の春蘭は金勘定にシビアなしっかり者に育ち、気弱な弟の春雷は刺繍を得意とする立派な淑女に育っていた。そんな二人なので、性別を間違えられることもしばしば。「姉は絶世の美女、弟は利発な有望株」という誤った噂は皇帝の耳にも届き、春蘭の後宮入りが決まってしまう。そして春雷も科挙を受けろと独り立ちを勧められ…。追い詰められた二人は、人生を入れ替わることを決意して!?賢い姉と美しい弟による、国を巻き込む男女とりかえ中華譚!
秋田書店より、コミカライズもされています。
月刊プリンセスで隔月連載中。わたしはこの春華とりかえ抄のためにプリンセスを買っています。チノク先生はもともと好きな漫画家さんでして、絵が美しいこともさることながらキャラクターを生き生きと描写する超絶技巧が魅力の漫画家さんです。春蘭も春雷も紙の上で息してます。笑ってます、泣いてます、怒ってます、すごいのです。天海宝がスパダリだよー。そろそろ春蘭といい感じだよー。えへへへーっ。
レビュー等書きたくなったらまた別の機会にでも。それではでは。
今日も読書、明日も読書!
ここまで読んでくださりありがとうございました。
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