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【講演録】ネット・ゲーム依存による犯罪への対応

*本記事は、新型コロナウィルスの影響により中止になった、東京社会福祉士会様の2019年度司法福祉公開講座で講演予定だった原稿をほぼそのまま掲載したものです。原稿作成にあたり音声入力を利用しており、また、講演用の原稿のため、特に校正などを行っておらず、文章として読みにくい点についてはご容赦ください。


弁護士・精神保健福祉士の平林剛(ひらばやし ごう)と申します。
本日、弁護士といいますか司法といいますか、そういう立場から、本日の演題であるネットやゲームの依存に関するお話をさせていただくことになります。

(令和2年2月29日)東京社会福祉士会様(2019年度・司法福祉公開講座).002

一応、簡単に自己紹介させていただきます。
本日弁護士としてこちらのほうにお招きいただいておりまして、弁護士として稼働しておりますが、それ以外にも、精神保健福祉士の登録をしております。精神保健福祉士としては、スクールソーシャルワーカーとしての活動歴も2年ほどあります。本日の演題になっているネット依存なんかは不登校の子どもの支援の時にもよく直面する問題です。また、保健所や精神保健福祉センター様の困難ケースのサポートもさせていただいており、あと、精神保健福祉士の実習先で経験のために少しバイトさせていただいたこともあり、そういった感じで登録だけではなくて、一応、少ないながらも現場経験は持っていると言う立ち位置でございます。

もともと立ち直りに興味を持っており、弁護士になるための研修中にギャンブル依存症で横領繰り返してしまう人、あるいは、痴漢を繰り返してしまう人、さらには薬物依存、そういった依存症からの立ち直りに興味を持ちました。また、弁護士になってからも、ギャンブル依存症で多重債務に陥った人や、重度の鬱の配偶者と引きこもりの子どもを抱えた人の債務整理の事件みたいなものを取り扱う中で、依存症や精神疾患に対する生活支援に興味を持ちました。
このきっかけで自ら精神保健福祉士資格取得したり、依存症のリハビリ施設に併設するような形で法律事務所をつくらせていただいたり、今は、精神障害の方を支える訪問看護ステーションなどをもつNPOさんの中に事務所をおかせていただいております。
そのような感じで依存症と関わりがある弁護士生活を送って参りました
あと、本日のお話、あくまで私の現場での経験を自分なりに整理してお話しするものですので、医師の先生の立場からですと、うーんと首をかしげられてしまったり、ちょっと不正確なんだよなってふうに思われてしまうところがあると思います。もしそういったところがあった場合には、なにとぞお許しいただきまして後の部分でさりげなーく、何事もなかったかのように訂正していただけると大変うれしいです。

さて、突然ですが、皆さん、弁護士や裁判所にはできれば一生かかわらないで一生をおえたいと、そう思っていらっしゃる方は少なくないと思います(笑)
大抵司法が関わる時と言うのは何か望ましくないことが起こった時ですからね。

そんな感じですので、依存と司法に関わりが生じる時というのは、大抵依存行為が原因で望ましくない、あるいは違法な状態が引き起こされた時なわけです。
今回の演題にもありますが、たとえば、ネットゲームでの課金。
課金しすぎてしまって借金を作ってしまった、あるいは、課金するために強盗に及んでしまった、そんなケースです。

例えば、借金を作ってしまって、返せない。そういう方が、法律相談に現れた場合、私たちとしては、破産と言う手続きをとりましょう、そして破産と言う手続きを経て免責、すなわち借金をチャラにする効果を得て新たに生活をやり直しましょう、そういう助言をすることになります。
そして、この破産手続きで、裁判所が興味を持つのは、この人が借金を作った原因、今回の例で言えば課金を止められるのかそういうところになってきます。すなわち依存を止められるのか。
あ、これは完全な余談ですが、多くの方がギャンブルで作った借金はチャラにならないと、お思いなっているケースが多いです。当事者から相談を受けた支援者もそのように回答してしまうことが多いようです。私から言えるのは、決してそんなことはない。
後にも少しお話しさせていただきますが、私はいわゆる依存症に関する債務整理をかなりの数、行っていますが、免責が出なかった事は1度もありません。むしろ、裁判官が、免責にするかどうか悩むケースでは破産管財人と言う人をつけてその人が本当に依存を止められるのかをみきわめることがありますが、こういった管財手続きにならずに、つまり裁判官としては迷うことなく、免責の決断をしているケースもあります。
支援者の方が、なんとなくギャンブルが原因だったり依存が原因だと免責が得られないというふうに思い込んでいて、結果的に、当事者の方が、免責される可能性が高い借金に苦しんでいるケース、と言うのは実はかなり見かけるケースですので、本日そのことを覚えておいていただければ幸いです

話が少しそれてしまいましたが今度は強盗の件。
裁判官は罪の重さを決めるにあたって、いろんなことを考慮しますが、その人が再び同じようなことをしないかということについても関心を持っています。
そうなると、仮にネットゲームでの課金が原因で、強盗を犯したと言うことになると、今後、ネットゲームの課金を止められるのかということに裁判官は大きな関心を持つことになります。

このように、司法というのは、「依存をやめて欲しい」「依存問題を解決しなくてはならない」という立ち位置で依存との関わりがスタートします。
いわば、依存と言う問題の解決が常に目の前につきつけられやすいのが、司法の領域です。

そういう司法領域で、依存症を主な取扱分野として仕事をしてきた立場の人間として、本日、皆さんにお伝えしたい事は

(令和2年2月29日)東京社会福祉士会様(2019年度・司法福祉公開講座).003

そんな立ち位置で仕事してますので弁護士会でも、後輩によく、依頼者が依存症なんですが、どうやって止めさせたらいいでしょうか、そういう質問を聞かれます。とりあえず直接辞めさせる方法はないよ。

これが私の答えです。

順番が前後してしまいましたが私の立場で本日皆さんにお伝えしたい事は3つです。

(令和2年2月29日)東京社会福祉士会様(2019年度・司法福祉公開講座).004

1つ目は、今お話ししたように、依存症は、これを直接止めることができないという話です。支援に当たって依存症を直接止めようという形で支援目標を整理した時点で、既に、ほぼ負けは決まっている、すなわち効果が出ない、支援課題や目標を設定し直す必要がある、ケアマネジメントを見直す必要があると言うことです。

2つ目は、重複依存。クロスアディクションです。

3つ目は、居場所づくり、あるいは自己治療仮説に関するお話になります。

早速、2つ目の話に入りたいと思います。
クロスアディクションについてです。
依存症と言うと様々なものが考えられます。

(令和2年2月29日)東京社会福祉士会様(2019年度・司法福祉公開講座).005

ギャンブル
薬物やお酒お酒
人間関係
性行為
今回のようなネットゲーム、ただこのネットゲームは内容面においてギャンブルだったり、あるいはそのネットゲーム内のコミュニティーにおける人間関係への依存かもしれません
後はリストカットみたいなものも同じようなものだと思います

これらの行為ひとつひとつについて別個独立のものだと思われている方もいらっしゃるかもしれませんが、これらは実は、根っこは1つなのではないか、と考えられています。
先ほど依存行為を直接止めることができないということを申し上げました。
これは若干不正確で、ひょっとしたら特定の行為は止めることができるかもしれません。ただ根っこが一緒である以上、特定のものを止めても他の行為として出てしまうことがあります。
これが重複依存、クロスアディクションと言う現象です。

実際に、私が関わったケースですが、
とても裕福な方で、デリヘルを呼び出して性行為にふけっていた方がいらっしゃいました。この形は、事情によって忙しくなって、そういったデリヘルを呼び出すような時間が取れなくなった結果、依存の対象物が薬物にシフトして逮捕されました。

またこれも私が関わった別のケースですが、この方はもともと薬物をやっていました。逮捕後、家族の厳しい監視により薬物が止まったのですが、今度は、フィリピンパブにしょっちゅう出入りするようになりました。そこで女性に声をかけて連れ出すようなこともしていたそうです。さすがに怒った家族がフィリピンパブの出入りも禁じたところ、今度はバーに入り浸ってお酒を大量に飲むようになりました。

これまた別のケースですが、もともとギャンブル依存症と言われていた方です。
ギャンブルはやめたものの今度は相席屋に出入りしたり、エナジードリンクを大量に飲むようになりました。

このように根っこを解決しない限り、特定の依存行為をやめさせることができたとしても、その本人に適した別の形で出る、例えば、アルコールが苦手な方はアルコールには出てきません。私、以前、久里浜の心理士の先生のネットゲーム依存の講義をスクールソーシャルワーカーとして聞いたことがあるのですが、最近のネットゲームは、ADHDなどの発達障害の子にうまく刺さるように作ってあるそうです、そんな形でその人の特性や環境にマッチするような形で別の依存行為が出ることになります。

本日はネット依存と言うことでお話しさせていただいておりますし、先程のAD HDの子に刺さるようになっているなどのネット依存特有の問題もありますが、依存症問題は1つの根っこでつながっているということが、依存症の問題を考えていく前提として必要なことだと考えております。

じゃぁ、この根っこと言うのは何なのか。

これが、本日私がはなさせていただきたい3つ目の話になります。

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人がなぜ依存するのかについてはいろいろな考え方がありますが、現在私の理解では、自己治療仮説と言う考え方が有力であると理解しています。

この自己治療仮説と言う考え方は、本人が、今とても辛い環境、それこそ死にたくなるくらい辛い環境にいる中で、それを死なないために、死にたくなるような気持ちを紛らわせるために、依存行為をおこなって気分を変えているという考え方です。

すなわち、この死にたくなるような気持ちにさせる環境こそが依存症の根っこ、いろんな考え方がありますのでそれが全てだと言うつもりはないですが、有力なねっこの1つと言うことになります。

例えば、依存症の方に、発達障害の方は少なくないと言われています。
もちろん発達障害の、こだわりの強さや衝動性が、依存行為に対するブースターとして作動してしまっている可能性はあると思いますが、ここ大事な話ですが、私が、今ここで問題にしたいのは発達障害の方の、社会における生きづらさの話です。

先ほど、ギャンブル依存から、相席屋やエナジードリンクに派生していったケースの話をさせていただきました。
この方は、発達障害をお持ちだったのですが、職場で理解を得られず、最初のうちはうまくいくのだけれどもその後がうまくいかなくて職を転々とするということを繰り返していた方でした。なれてきたな、この仕事面白いな、仕事も任されてきてやりがいを感じてきた、上のほうの上司からはもう少し頑張ったら管理職を任せたいと思っているそう言われているものの、なんとなくうまくチームワークが構築できなかったり、あるいはチームワークを構築するために頑張りすぎてしまって疲弊してうつ病になってしまう、そんなことを繰り返して、自身の居場所を何度も失ってきた方でした。

この方は、債務整理で関わった方ですが、私の方でおそらく発達があるんじゃないかと思って知り合いの医師につなぎ、そこでのデイケアの経験を経てなんとなくストレスや人間関係とのうまい付き合い方を学んで、今は頑張っております。
とりあえず、最近は、ギャンブルをしたとか、女性関係で危ない目にあったとかそういう話は聞いていません。

同じような理由で、いわゆるLG BTの方にも、社会における居心地の悪さから、例えば薬物に手を出してしまう方がいらっしゃると聞いています。


こういった、居場所を確保する、居場所こそが、この依存症問題の根っこだと思っておりますし、居場所が見つかれば自然と依存行為はおさまっていく、少なくともソーシャルワーカーの立場、福祉の立場としてはそのように思っております。

私が直接関わったケースでは無く、人伝に聞いた話なのですが、この居場所こそが依存症対策ということについて、ほんとに具体的なイメージを持ってもらいやすい例があります。

とある子供食堂さんの向かいに、薬中の、もとヤクザさんが住んでいたそうです。
で、この子ども食堂を仕切っている方が、挨拶にいかれたらしいんですね。で、この元ヤクザさん、えらい達筆だったので、なんとこの子ども食堂の方が、この元ヤクザの方に子どもの表彰状の名前を書くことをボランティアでお願いしたそうです。

その後、いろいろあったそうなのですが、最終的にこの元ヤクザさんの方、薬物が止まったそうです。
このエピソードは、先もお話した通り、又聞きなのですが、この依存症と自己治療仮説、そして居場所の説明をするにあたって1番イメージを持ってもらいやすい例かなと思っております。

さてさて、このように、

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と言うお話をさせていただきました。

そして、 今回のパネリストのご依頼文章の最後に、こういった問題について今までの弁護活動に基づき、我々が、市民が、何ができるのかお話しいただきたいと言う話がありましたので、今までのお話を前提に、この点についてお伝えさせていただきたいと思います。

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まさに我々市民ができるのは、多様性を尊重すること、居場所を作ること、より良い隣人になることかなと思います。
対人援助職には、自己覚知と言うものが要求されると言われています。自分の価値観で他人を見ないと言うものです。より良い隣人とはまさにこの自己覚知を持って他人と関わる人だと思います

(令和2年2月29日)東京社会福祉士会様(2019年度・司法福祉公開講座).009

不登校の子がいたら、なんで学校に行かないのと言うふうに聞く人は、前提として学校は行くべきだと言う自分の価値観を持って人と話してしまっていると言うことになります。
私以前、ゲーム依存で不登校の子の家庭訪問を長期間やったことがあります。
その間、隣に座ってゲームの画面を見ながら、一緒に時間を共有して、むしろそのゲームはどんなゲームでどんなところが面白くてどんなことにはまっているのかそういうことをずっと聞き続けました。学校に行け、ゲームやめなさい、これは1度たりとも言いませんでした。最終的に、彼は私が来た時はゲームをやめてお茶まで出してくれるようになりました。そのうちゲーム以外のこともやり始めて最終的にはきちんと進学しました。

依存症の人は依存したいと言う気持ちを外に出してこそ、ストレスケアができるのに、周りが依存なんてとんでもないと言う目で見てしまえば、結局、中にため込んで再発のリスクも高まります。
ディスコミュニケーションが生じたとき、それは本来、双方の問題のはずなのに、なぜか、発達障害というだけで、発達障害の側の問題とされてしまう、そんなことがないように。

依存症の支援にあたっては親に抱え込ませないことが大事だと言われているのに社会の目線や価値観が親に重荷を背負うわせようとする。そんなことがないように。

こういった、良き隣人に溢れる社会にしていくことが、大事なことなのだと思っております。


司法は本人の問題を根本的には解決できないわけで、だからこそ、薬物犯罪などは再犯率が高いと言われており、ここをなんとかできるのは、居場所がある社会以外ないとおもっております。

そういう司法だけでは、この問題の本質は解決しない、ということについて、昨今、司法の側からも、刑事司法や、債務整理の観点から、情報発信があります。
私も著者の一人なので宣伝になってしまい大変恐縮ですが(笑)

(令和2年2月29日)東京社会福祉士会様(2019年度・司法福祉公開講座).010


最後に、本日は、保護司の方もいらっしゃってると言う事ですので、私が刑事弁護の研修でいつもお示しするスライドを出したいと思います

(令和2年2月29日)東京社会福祉士会様(2019年度・司法福祉公開講座).011

私からは以上です、ありがとうございました。

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弁護士・精神保健福祉士・AFP/元スクールソーシャルワーカー/離婚をはじめとした家族問題に関するお仕事と,支援者の一員としてケース支援に加わるお仕事が多いです。