【その言葉は暴力です】(離婚のツボとコツ)

*この記事は、『離婚のツボとコツがゼッタイにわかる本』(秀和システム、2016)の絶版に伴い、著者が「第1章4節:妻失格!親失格!と言われたのですが・・・」に一部加筆して掲載しているものです。


 配偶者間暴力(ドメスティックバイオレンス、DV)という言葉をご存知でししょうか。一方配偶者から他方配偶者に対する暴力のことです。配偶者間の暴力(以下、「DV」とします)は、法律上、「配偶者からの身体に対する暴力(身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすものをいう。以下同じ。)又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」と定義されており、この「心身に有害な影響を及ぼす言動」には、人格を否定するような暴言も含まれます(他にも、机を叩くような相手の体には直接攻撃を加えないものの、相手に恐怖を与えるような行為も含みます)。
 このDVは、他人を傷つけるという点で、大きな問題です。加えて、DVが、相手を支配・コントロールしようという意図のもと行われるという点に、より根深い問題があります。

 例えば、「配偶者や親として最低限度のこともできていない」という暴言が、相手の人格を否定するとまで言えるかどうかは、それまでの経緯やその時の言い方にもよると思いますが、相手の人格を攻撃する暴言であることは間違いないでしょう(他にも、「こんなこともわからないのか」というのも、相談の際によく聞く典型的な暴言です)。
 男性から女性に対する暴言ばかりではありません。仕事ができない、稼ぎが低い、夜の性生活がだめである、といった暴言により、男性が攻撃されている夫婦もあります。暴言は、男女いずれもが被害者になり得る問題なのです。
また、厳密には人格に対する攻撃とは言えないかもしれませんが、相手をコントロールしたいという観点からは、「聞いてくれないと死ぬ」とか、「話していると体調が悪くなる」という発言も、同類のものと言えます。
 
人格を攻撃するような暴言を繰り返し受け続けると、人は自尊心が傷つき、自己評価・自己肯定感が低下します。そうすると、相手に対して、申し訳ない、悪いことをしている、言うことを聞かなくてはいけないのではないだろうか、といった気持ちになっていきます。
 相手の自己評価・肯定感の低さにつけ込んで、相手に対して優位に立ちたい、自分の願望を押し通したい、という気持ち(無意識も含む)で行われるのが、「最低限度のこともできていない」といった言葉の暴力です(このような暴言を吐くのは、プライドが極めて高い人がほとんどです)

 自己評価・肯定感が低下している方は、悪いのは自分だとおもいつつ、それでも今の辛い気持ちに耐えかねて、悪いのは私の方なのですが離婚できますか、と相談にいらっしゃったり、あるいは、暴言の果てに相手から離婚を切り出されて相談にいらっしゃいます(相手からの離婚の要求は、大抵コントロールのための脅しです。相手は今の支配関係を心地よい環境だと思っていますから、離婚に応じる素振りを見せたり、こちらから離婚の話を切り出すと、態度を急変させ、場合によってはあなたが有責配偶者だ、などと言ってきたりします)。
 みなさん一様に、私は家事ができてなくて、あるいは、仕事ができなくて、とおっしゃるのですが、様々な家庭のお話をうかがう身としては、どなたも立派に家事や仕事をこなされていることがほとんどです。そもそも、夫婦間で、「するのが当然のこと」なんてないですよね。
 他の家庭の実情を知る機会がなかなかない中で、理想の家庭像みたいなものへの責任感と、低められた自己評価・自己肯定感にがんじがらめになってしまいるケースは少なくありません。

 支配・コントロールしたいという相手は、プライドが高い人がほとんどですので、目を背けていることに直面させられたり、優位性を奪われるのを嫌がります。そのため、仮に、夫婦生活上で落ち度が、相手方が9悪く、あなたが1悪い場合でも、夫婦の問題に関する話し合いの場では、「私も悪いかもしれない、けれどね・・・」と言って、1のことに話を集中させて話をすり変えてきます。こちらも、責任感が強く、自己評価・自己肯定感が低下しているため、1の落ち度を10にも感じてしまい、相手の話に取り合ってしまうため、いつの間にかこちらが悪かった、という形で話し合いが終わってしまうことがほとんどなのではないでしょうか。
 もし、話し合いをするのであれば、「私は、あなたの言葉がつらい」という形で、焦点を絞って自分自身の率直の気持ちを伝えるように努めてみることが大切です。また、話をすり変えられないように(いつの間にか自分の落ち度の話にならないように)、そして、客観的な話し合いができるように(1の落ち度が10の落ち度にならないように)第三者を交えて話し合うのも良いかもしれません。

 もし、このような相手と今後、健全な形で夫婦関係を続けていきたいのであれば、相手にも変わってもらう必要があるとおもいます。2人で一緒に関係を作り直していくためのカウンセリングなどもあります。ただ、そういった試みは、今まで目を背けてきたことを直視することを伴うため、ほとんどの場合、相手は拒否的です。
 あなただけが無理をすることによって続く関係なら、やはり関係そのものを考え直した方が良いのかもしれません。

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弁護士・精神保健福祉士・AFP/元スクールソーシャルワーカー/離婚をはじめとした家族問題に関するお仕事と,支援者の一員としてケース支援に加わるお仕事が多いです。