500字小説 第18話

翌日はバイトの日だった。
恭介は兄の家と大学の間の駅のレンタルショップでバイトをしている。もう1年生の秋からバイトを始めて、5月で半年になる。
『今日一緒の人は…うわ、四方さんかよ』
レンタルショップでも特に友人と呼べる友人はいなかったのだが、バイト仲間の中でも1番苦手だったのが四方という男だった。
年齢は恭介よりも上のようで、社員さん曰く『作家をやっている』とのこと。基本的に無口で目つきが悪く、そのせいなのかよく客ともめていたりする。が、だいたい客が論破されて去っていく。恭介は一目置いてはいたが、とにかく怖くて恭介よりもオーラが暗いので、必要最低限の会話しかしたことがなかった。
ただ客に喧嘩を吹っ掛けられる以外は、仕事ができる、バイトの先輩だったので、『とりあえず、四方さんにまかせておけば大丈夫だろうな』と思ってはいる。

バイト先につくと、四方はまだのようだった。『いつもギリギリにしかこないから、いないとは思ったけど、控室で鉢合わせなくて良かったー』と安堵した。しゃべらない者同士で過ごす控室は地獄である。
恭介はそのまま、先に売り場にでた。今日はレジかららしい。人とかかわるから極力やりたくはない。