【2022年11月版】MaaS最新動向について、JR・トヨタ・小田急の事例から向き合ってみた
先日ヴァル研究所が定期的に実施している「モビリティピッチ」と題したMaaS最新動向のウェビナーに参加し、インプットした内容をここでアウトプットすることとした。
ご登壇されていた企業の面々は以下。
JR東日本(東日本旅客鉄道)
トヨタファイナンシャルサービス
小田急電鉄
JR東日本らから学ぶMaaSの最新動向レポート
まず取り上げたいのが、JR東日本の2018年に発表された中期経営計画の「変革2027」に沿った取り組みである。
↓ JR東日本の中期経営計画
https://www.jreast.co.jp/press/2018/20180702.pdf
MaaSを支えるモビリティ・リンゲージ・プラットフォーム
JR東日本のMaaSを支えるのが、このモビリティ・リンゲージ・プラットフォーム。移動のための情報・購入・決済を利用者にオールインワンで提供するための基幹を構築し、現時点で720万ダウンロードを誇るJR東日本アプリの根幹を成している。
小田急電鉄が整備したMaaS API「MaaS Japan」
小田急電鉄は他の交通事業者より早くからMaaSに取り組んでいる、国内でもパイオニア的存在だが、彼らのMaaSアプリ「EMot」の基盤となっているのがこのMaaS Japanである。
継続的に設備投資を行ってきたことで、複雑な条件下におけるサービス提供ができるようになったと登壇者は語る。
特急ロマンスカーのサブスクは複雑なサービス条件をクリアにした
新宿~小田原間、または新宿~片瀬江ノ島間を走るロマンスカーの特急パスポートを下記の概要で提供している。
平日オフピーク時間帯(9:00~17:59)のみ、1日2回乗車できる30日間有効なサブスクチケット
4種類の区間別料金ラインナップ
発着駅や区間(上り・下り)の制約がなく、通勤や観光での利用用途OK
このサービスを実施するうえで、MaaS Japanの機能はかかせない。なぜならば、ID管理、決済、電子チケット発行、特急管理システムとの接続が必要不可欠で、さらには利用時間帯制限の機能を1000万円かけて設備投資し実現したからだ。
やりたいがやれない、コスト部分で悩む同業者に朗報
積極的に取り組む小田急電鉄では、社内の理解もかなり深まっていると考えられるが、地方の交通事業者ではそうはいかないだろう。
後ほど話に挙がるが、MaaSのような中長期で改革する事業はなかなか社内理解が難しく、特に費用対効果のところでつまずいてしまうからだ。
そんな中、先んじて開発した小田急電鉄のMaaS JapanはAPI連携ができ、そんな困っている事業者も利活用できるわけだ。
新たに開発するより、ある物を使うことで実現スピードとコストを抑えることができ、テスト運用も可能となってくるため、コロナ禍で加速するMaaSへ参戦する良い機会かもしれない。
Withコロナによって強いられた変化する社会的環境の適用へのヒントとは?
コロナウイルス蔓延でほとんどの方が息詰まった外出自粛。モビリティをサービスの軸に据える事業者は大打撃をうけ、前述のJR東日本のDX推進もこの出来事が大きく作用したという。今や世の中は、サービス領域の垣根をこえた新規事業ラッシュになっているのも頷ける。
もちろんトヨタファイナンシャルもその例外ではなく、自動車販売を生業としていた彼らは、外出自粛や近年の脱炭素による若者の運転離れによる売り上げ低下からの脱却を見据えるため、新領域へのサービスへ手を伸ばしている。
日々のお出掛けを楽しくさせてくれるアプリ「myroute」を提供
車をサブスクで提供するKINTOは、車保有の新たな価値観を我々に提供してくれたが、トヨタファイナンシャルサービスは、さらに車に乗るためのきっかけづくりとお出掛け先でよい体験を利用者に提供するために開発されたmyrouteというアプリを運用している。
一見普通に見えるかもしれないが、自動車販売を生業とし、交通事業や観光事業をもっていないトヨタグループにとっては挑戦的であると登壇者は語る。
myrouteの取り組みとそのKPI
事業インフラが構築されていないため、パートナーシップを結びながら徐々に拡大している中で、現時点のKPIはアクティブユーザー増であるという。
そのためには、お出掛け先となる地域ならではの情報発信が必要不可欠であり、利用者もそこに興味関心をもち利用の起点になる、アプリ登録時のハードルがぐっと下がると考えている。
まだまだ手探りの状況が続いているようだが、これまでは車の販売・メンテナンスでの顧客接点しかしらなかったトヨタグループにとって、新たな顧客接点を持つことで大きな価値を得ているのが、現時点での最大のメリットなのかもしれない。
交通事業者が短期的な実証実験を繰り返すその理由とは?
MaaSを行う上で短期的な実証実験を繰り返す交通事業者が多いが、世の中的に揶揄されることが多いと語るのは小田急電鉄の登壇者。
なぜならば、ミニマムで検証してもいずれGAFAのどこかがやるだろうし、交通ICカードがこれだけ普及するなかで、あえてアニメーションチケットでやる必要性を問われたりと、とにかく意味がないと言われることが多く、社内外での理解がなかなか得られにくいのが現状でもあるからだ。
加えてすぐに費用対効果が見込める事業ではなく、またDX化に伴う様々な設備投資、インフラ構築、リソースの確保が強いられ、莫大な資金と工数を費やすことになるからだ。
短期的なKGIやKFSではない、中長期視点でトライできる環境が必要になる中で、資金を垂れ流すわけにもいかず、短期的な実証実験を繰り返しながらアジャイルで進めていくのが基本スタイルなのだろう。
観光MaaS以外はどのように捉えるべきなのか?
観光ではないMaaSはどのように捉え展開すべきと考えているのか?という問いに語るJR東日本の登壇者。
東北で実証実験を行ってきた中で肌で感じたのが、観光として地方財政の活性化を主眼に実施した施策が、結果地域住民の方々も利用することで、地方の交通インフラに役立っているケースがあるという。
ただし高齢化が進んだ地域では、電子化での対応はまだまだ苦労するのだそう。また地方は自家用車での移動が必須で高齢者ドライバーも多い。
しかし、土日祝より平日で困っている高齢者を多数見かけるという。なぜなら休日はご子息が家にいて運転してくれるが、平日は仕事に出ていて免許返納していると、病院や買い物に出かけるのは至難の業なんだとか。
そういった社会インフラ部分も兼ねながら、自治体と一緒に手を取り合っているのが現状だ。
群馬で実証実験を行った「MaeMaaS」も、JR東日本のプラットフォームを活用して自治体で運営するオンデマンドバスを活用した建付けである。
自家車両保有率が国内一である群馬では、マイナンバーカードの一部データを紐づけたキャンペーンを取り組んでおり、2022年現在もアップデート中と持続可能な交通環境の提供を掲げて実施している。
当ウェビナーを受けて、外部で寄り添えることとは何か
JR東日本や小田急電鉄の精力的な活動の中で、短期的な構想と中長期的構想を両輪で回しているように受け取れた。
その根幹を成すのはデータであり、統合し新たな付加価値で情報発信できるプラットフォームを構築する必要があるわけだ。
私は彼らを支える外部の身となるが、データ基盤を構成できるベンダーではない。オンラインで完結する購買までのプロセスはシステム部分が大きく占めるが、その先にあるオフラインの体験を満足させるためのオンラインとオフラインの懸け橋となる価値提供部分で寄り添っていく必要はありそうだ。
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