061_『ある男』 / 平野啓一郎
ここまで夢中になってしまった小説は久しぶり。圧倒的なまでに支配されてしまった...
ある男の戸籍を巡る物語。
その答えを探す道中において、「戸籍とは」から始まり、人生とは結局一体どういうものなのか、自分を形成するものは一体どういうものなのか、という疑問が幾層にも重なりながら読者に問いかけてくる。
主人公の弁護士の視点は冷静であり客観的でありつつも、自分自身の人生、という点においては、必ずしもそうあることができるわけでもなく。
登場人物の、各々の人生にそれぞれの深みがあり、これを丁寧に丹念に描きつつ、最後まで一瞬たりとも飽きさせない文章は、作家の凄みとしか言いようがない。
この時代に生まれるべくして生まれた作品。
カバー彫刻が、アントニー・ゴームリーというのも最高のセンス。
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