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きみはべんとうぬくめを知っているか

私が小学生のころはまだ給食ではなくてお昼は弁当だった。アルマイト製の弁当箱に詰められたおかずとごはんを校内放送で流れるムーミンパパの歌なんかを聞きながら班ごとに机をよせて食べていた。で、冬になるととても寒い。弁当も冷たい。そこで11月か12月くらいになるとべんとうぬくめが始まる。

朝一番に係が二人で火の熾った炭を用務員室に取りに行く。一斗缶を下から三分の一くらいに切ったような金属の容器で灰と炭が入っている。それを左右の取っ手をそれぞれが持って教室の入口まで運ぶ。小学生がひとりで持つにはすこし重たいのだ。教室の入口には木製のキャビネットが置いてあり、観音開きの戸を開けると内側はトタン貼りで金網の棚が四段くらい。そこの一番下に先程の炭を置く。金網の棚には生徒が持ってきた弁当を班ごとに並べるのだ。置く棚は毎日だったか毎週だったか忘れたけどローテーションするので不公平はない。そして午前中の授業がある間はキャビネット内でゆっくりと弁当が温められる。これで昼食の時間にはみんな温かい弁当が食べられるというわけだ。

棚の段によっては弁当のぬくもり方に差があり、一番上の段だとなんとなくぬるいこともあった。ある日誰かが最下段の一番熱くなるタイミングでカレーライスを持ってきた。熱いカレーライスはおいしそうでそれから最下段になるとカレーライスにする子が増えた。ただし火加減によっては最下段の弁当は焦げたりカレーが吹きこぼれたりしたものだ。

低学年のクラスには高学年の子が炭を持って行ってたんじゃないかな。このべんとうぬくめは私が小学生のときまでで、中学校に進学すると小中学校の給食が始まったのでべんとうぬくめは廃止された。だいたい1980年までの話。

ネットで検索しても弁当温めの話は見つからなかったので書いたんですが、改めて調べたら 東洋英和女学院 中学部・高等部 ではお弁当温め機でやっているようですね。ただしモダンな感じです。

https://www.toyoeiwa.ac.jp/chu-ko/life/news/news_life_140214_1021.html

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