見出し画像

中止になったことでより伝わった、関西学院の卒業式にかける想いとスタンス。

卒業式に春のオープンキャンパス、そしてもう少ししたら入学式……。これまでリアルでやることが当たり前だった大学のイベントが、新型コロナウィルスの影響で軒並み廃止になっています。一方で、リアルでできないならウェブ上でと、各大学が趣向を凝らしたバーチャルイベントに取り組みはじめています。内容の充実ぶりに驚きつつも、これはこれですごく可能性もあるし、ウェブになったからこその発見もあります。今回はこれを色濃く感じた、関西学院大学の特設ページについて取り上げます。

この特設ページは、本当であれば関西学院の卒業式が執り行われるはずだった、2020年3月18日にオープンしました。関西学院は校友を大切にすることで前々から有名な大学で、毎年卒業式のタイミングになると交通広告や新聞広告を出稿し、それがある種の春の風物詩にもなっていました。そんな関西学院だからこそ、短期間のうちにこれだけ充実した特設ページをつくることができたのだと思います。

この特設ページを見て、まず目に留まるのがメッセージ動画の充実ぶりです。卒業式の中止を受けて、学長のメッセージ動画をウェブサイトに載せる大学は少なくありません。関西学院のページは、学長だけでなく、卒業生からのメッセージも載っています。しかも8名も、しかもプロスポーツ選手やアナウンサー、ミュージシャンなど豪華な顔ぶれです。

普段の関西学院の卒業式を知らないため、もしかしたら毎年メッセージ動画をつくって、式で流しているのかもしれません。そうでないのなら、式の中止が決まってから、これだけの動画を撮って編集したフットワークの軽さはすごいです。また、卒業式の会場にこれら著名な卒業生をすべて招くのは大変ですが、動画であればハードルは下がります。そういう意味では、これはウェブだからこそできるお祝いの仕方なのかなと感じました。

この特設ページには、もう一つ印象深い企画がありました。それは卒業生に向かって、「#関学卒業生にエールを」というハッシュタグをつけて、ツィッター、インスタグラムで、卒業式ができなかった学生たちにメッセージを募っているんですね。しかも、SNS投稿用の画像までページに載せている用意周到ぶりです。

関学卒業生にエールを

一般的に大学の卒業式というと、送りだす大学と、送られる学生たち、という視点で企画・運営されるように思います。でも関西学院の場合、送りだすのは学友を含めたオール関西学院なんですね。これが当然のことだという文化が息づいているのでしょう。だから、緊急時につくられた特設ページであっても、卒業生がSNSを通じてエールを送るという企画を思いつけるし、実装されているんだと思います。さらにいうと、ツィッターもインスタもけっこう投稿されているんですね。これって、大学だけでなく、卒業生も同じように考えている証拠なわけで、ちょっとグッときます。

特設ページには、他にも卒業式の会場に掲出予定だったポスターのギャラリーや、学部長のメッセージなども載っていました。これらコンテンツ群から受け取る情感は、巣立ちゆく卒業生へのお祝いの気持ちと、卒業式が開催されなかったことへのあたたかな思いやり、よい意味でこの二つだけでした。

損得勘定だけでいうと、卒業式は、オープンキャンパス等と比べると、そこまで力を入れる必要がないイベントなのかもしれません。しかし、自校で学び成長した学生たちの門出を祝うというのは、理由なく全力でやるべきことであり、ある種、教育機関としての矜恃なのでしょう。また、卒業式というのは、企画・運営の仕方によっては、大学と卒業生のきずなを確かめ合い強め合う、またとない機会にもなる……。この特設ページを見て、そういったことを強く感じました。

関西学院の卒業式に対する考え方や姿勢というのは、今回もこれまでもきっと変わらないのだろうと思います。でも、ウェブ化することで、そのスタンスがより鮮明になり、外部にも広く伝わったのではないでしょうか。卒業式が中止になったことは残念ですが、すべてがマイナスだったわけではない、そんな前向きな気持ちにさせてくれる取り組みでした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?