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アフターコロナで、大学案内の誌面が変わる!? これからの受験生と向き合う「誠実な大学案内」について考える。

アフターコロナという言葉が、いろいろなメディアで飛び交っていますが、実生活のコロナはまだまだナウなわけで、アフターを実感する機会はそう多くはありません。でも、これから先の情報発信について本腰を入れて考えていくと、やはりアフターコロナは避けることができないものだと感じます。私の場合、つい最近、大学案内の企画を考えながら、これをしみじみと思いました。

大学案内は、発行する大学の魅力を総花的に伝える大学の総合カタログです。多くの場合、巻頭部分に、受験生たちの興味を惹くために特集ページを設けます。特集では、特徴的な教育プログラムであったり、大学のイメージビジュアルであったり、在学生の声であったり、その大学の魅力を効果的に伝えられる企画を掲載します。この特集の企画でよくあるものの一つに、卒業生インタビューというものがあります。

卒業生は、その大学の教育成果を証明する生きた証であるとともに、いきいきと働く姿は受験生にとって、わかりやすい目標にもなります。そういう意味で、とてもオーソドックスだけど、効果的な特集の切り口でした。でも、今回のコロナによって、卒業生による特集記事というのは、とても出しにくくなったように思うのです。

特集で取り上げられる卒業生は、有名企業で働いていたり、人気職種に就いていたり、受験生が憧れる生き方をしている人物になります。それは別の見方をすると、大学が、これは素晴らしいとお墨付きを与えた生き方ともいえます。しかしコロナパンデミック以降、これが正しい生き方と強く打ち出せるものは、誰も持ち得なくなってしまったように思うのです。

これまで優良といわれていたグローバル企業は、グローバルであることによって、大きなダメージを受けてしまいました。女性にとってキャビンアテンダントは人気職種でしたが、今や世界各国の航空会社が存続できないかもしれないという状況に陥っています。もちろん、すべてが大きく変化するわけではないでしょう。でも、想像のつかないような変化が多かれ少なかれ起こり、それがもうはじまりつつあると肌感覚で理解してしまうと、誌面を企画する側としては、この生き方が正しいという卒業生像を大々的に出すことはできません。受験生にとって、その情報が依然キャッチーであったとしても、情報発信のアプローチとして誠実でないと、少なくとも私は感じてしまうのです。

一方で、今こそ学問をすることの価値を伝えるべきだし、その価値が響く世の中になってきているのではないかと感じています。学問に向き合うことで得られる、論理的な思考力、洞察力、学び続けようとする意志などは、時代が変わろうが、社会が変わろうが普遍的に必要とされます。そして、これら力は、予測のつきにくいアフターコロナの世の中を生きていくうえで、さらに大事になっていきます。

とはいえ、学問から得られる力が大事、というだけでは、当然すぎて受験生の心に響きそうにありません。大学として、これからの社会がどうなると考え、その社会で生きていくために必要などんな学びを提供できるのかを、学内または情報発信を支援する業者(私もその一人です)も交えて議論し、その大学ならではの具体的なアンサーに煮詰めてから発信する必要があります。ここまでやると大学案内の特集企画という枠を、だいぶ越えてきちゃいますね……。でも、アフターコロナの情報発信を行ううえで、この作業は必須だし、おそらく定期的に議論し、アップデートする必要もありそうです。

大学案内は、大学が受験生とコミュニケーションをとるためのキーツールであり、巻頭特集はこのツールで最もメッセージ性の強いページです。コロナパンデミック以降、ここに何をどう載せるかで、大学が受験生にどれくらい真剣に向き合っているかが、これまで以上にわかってしまう。制作サイドとしては怖いことでもありますが、その分、やりがいもあります。誠実な大学案内が増えると、受験生もより中身で判断するようになるでしょうし、それは受験生本人にとっても、大学にとっても喜ばしいことです。よい流れがつくれるように、いち業者として、ここは頑張っておきたいですね。

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