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学長は大学公式YouTuber!?東京藝大YouTubeチャンネルに見る、大学✖YouTubeの新たな可能性。

少し前にInstagramを使った入試広報の取り組みを紹介しましたが、今回、取り上げるものもそれに負けないぐらい意欲的な取り組みです。使われているSNSは、YouTube。今やテレビよりも親しまれている動画メディアですが、大学による活用方法という意味では、多くの大学が似たりよったりという感じもします。しかし、今年4月にはじまった東京藝術大学の公式YouTubeチャンネルは、ひと味違いそうです。思い切ってはいますが、もしかしたらこの使い方が一つの正解なのかも、という気もしないでもありません。

東京藝術大学の公式YouTubeチャンネルが、どのようなものかというと、新学長となった日比谷克彦先生が毎週アートや社会など何がしかのテーマについて語るというもの。これは大学等組織ではなく、YouTuberが使うときのYouTubeチャンネルの使い方です。

いくつか上がっている動画を見てみたのですが、どれも興味深いものでした。まず感じたのが、学長が大学の代表者としてではなく、日比谷克彦として話しているんですね。学長の言葉が学内メディアで取り上げられるときは、式辞であったり、何かしらの記念日のメッセージだったりと、学長個人ではなく大学の代表者として、というのが多いです。しかし、東京藝大のYouTubeは毎週更新をめざしていることもあり、動画の雰囲気も、テーマ設定にも余裕がある。非常にのびのびと学長が、学長の視点、学長の言葉で、その時々に伝えたいことを話しているように感じました。

もう一つ感じたのは、自分の言葉で自由に語るというスタイルの魅力です。動画は、途中に学長の語り以外の要素が入ったりもしますが、短いもので8分程度、長いものだと20分ちかくあります。取り上げられているテーマは、何がしかのかたちで東京藝大に関わるトピックです。

動画を見ていると、学長の話す内容とともに、取り上げられたテーマがどれくらい語れるものなのか(深さ・規模)、どれくらい語りたいと思えるものなのか(魅力)、ということも伝わってきます。学長という“識者“が語り手となり、なおかつ自発的に話しているからこそ感じられるのだと思います。こういう言語化できない“価値の裏付け”みたいなものが、自然と表現できているのは面白いなと思いました。

個人としての視点や振る舞い、動画の雰囲気を通じて、何かを伝えたり、視聴者を楽しませたりするのは、まさしくYouTuberです。大学でこれをやる場合、おそらく適任なのは学長しかいないでしょう。東京藝大の取り組みを見て、あらためて思いました。

というのも、YouTuberをするなら個性を発揮してなんぼです。でも、公式チャンネルで個性を発揮するというのは、少し大袈裟かもしれませんが、その大学の人格みたいな役割を担ってしまうことになります。そうなると、Mr.ないしMs.大学という立場にある、学長がやるのが自然です。また、学長ほどの立場じゃないと、いろいろと気になって自由に振る舞えず、YouTuberではなくナビゲーターになってしまうんじゃないかと思うんですね。言うまでもないことですが、ナビゲーターとYouTuberはぜんぜん違います。ナビゲーターでいいなら、動画にナレーションを入れたら済む話です。

とはいえ、各大学の学長がYouTuber適性の有無で選ばれるわけではないので、東京藝大の日比谷学長のような人物は稀でしょう。こういった人物が学長になったことも大きいですが、YouTubeに学長を起用しようと思いついた広報のセンスもナイスです。まだはじまってすぐの取り組みなのでどうなるかはわかりませんが、今後の展開を注視していきたいと思います。

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