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2019 年6月24日(月)

こちらは、2019 年6月24日の、西野亮廣エンタメ研究所の記事です。

おはようございます。
「下を向くのは、東京タワーの展望台の“透明の床”の上に立つ時だけ」のキングコング西野です。
さて。
小説『えんとつ町のプペル』を執筆中です。
アトリエで一人で黙々と書いて、“完成させたもの”を皆様に届けるのは、僕が作るエンタメのルールと反するので、執筆中の小説『えんとつ町のプペル』の原稿(※以前、ブログに投稿したものから、また変わっています)をサロンに投稿して、
「ここの言い回し、もっとこうした方がいいんじゃない?」
「ここ、もう少し簡潔にした方がいいかも」
「ここ、少し分かりにくかったです」
「いや、これは、このままでいいです!」
といった意見をサロンメンバーの皆様からいただきながら、サロン内で“編集”していきたいと思います。
コメント欄までご意見をお待ちしております。
まめにコメント欄を確認して、「お!なるほど!それは名案だ!」となれば、随時、書き直していきたいと思います。
2万5000人で小説の編集をするのことが可能かどうかの実験です。
御意見お待ちしております。
それでは、小説『えんとつ町のプペル』のプロローグです。
どうぞ!
=====
『プロローグ』
空がまだ黒かった頃の話だ。
ススにまみれた少年と臭くて汚いゴミ人間が、わき目も振らず駆け抜けた「あの夜」、この町は、ずっと昔に忘れてしまった『星』を思い出した。
あの夜。
すべての人が、一斉に空を見上げ、感情を解放させ、希望と不安を抱えた新時代の鐘を鳴らした。
夜の町の最後の夜。夜明けの物語。
キミにこの話をするには、まずは、「煙突だらけのこの町がどこから来たのか?」そいつを先に話した方が良さそうだね。
 
 
(※挿し絵を入れる)
       
あの夜から、さらに200年以上前の話だ。
海の向こうの、そのまた向こうに、ずいぶん荒れた町があった。
町のみんなが貧乏人で、盗みや殺しは日常茶飯事。
人々は『お金』に生活を支配され、心を支配され、ついには奪い合いを始めていた。
その流れに「待った」をかけたのが、シルビオ・レター。町の経済学者だ。
レターは、あらゆる物が時間の経過と共に腐り、その価値を下げていくにもかかわらず、『お金』だけが腐らないことを問題視した。
いつまでたっても『お金』だけが腐らないもんだから、肉よりも魚よりも『お金』を持つ者が力を持ってしまい、『お金』の奪い合いが始まると彼は言ったんだ。
そこで彼が生み出したのが、人の手に渡ってから3ヶ月で腐るように設計された通貨『L』だった。
こいつが大当たり。
『L』は3ヶ月で腐ってしまうので貯め込んでいても仕方ない。
人々は積極的に『L』を使ったんだ。
おかげで失業者が減り、犯罪者が減り、町は大いに賑わった。
それはレターによる『お金の奴隷解放宣言』だった。
ところが、その時代も長くは続かなかった。
正確には、〝続けさせてもらえなかった〟。
腐るお金が普及してしまうことで都合が悪くなるヤツらがいたんだ。
お金を貯め込むことでブクブク生きている中央銀行の連中だ。
まもなく街にやってきたのは不気味な七人の男たち。
黒い衣を身にまとい、黒い馬にまたがった、青い肌。
なんだかイヤな感じの連中だ。
男たちは、レターを取り囲み、赤紙を突き出した。
そこに書かれていたのは、『L』の即時廃止命令と、シルビオ・レターの出頭命令。
「この町はお金の奴隷から解放され、ようやく自由を手に入れました。何故、それを奪うのですか?」
「我々に意思はない。我々に答えを求めるな。これらすべては中央銀行の意思だ」
「バカげています」
「余計なことは考えるな。お前にも家族がいるだろう?」
レターには命を代えてでも守らなければならない妻と、14歳の息子がいた。
『L』は廃止となり、レターは国民を混乱させたという理由で処刑。
火あぶりにされ、煙になった。
それから三日三晩、街の空は黒い煙で覆われたらしい。
レターの呪いと言う者もいれば、レターの暗示と言う者もいた。
街の人々は涙にくれたが、どっこい、レターの魂は途絶えなかった。
黒い煙で覆われた空の下、息子のカルロス・レターを中心に、家族や仲間達が『L』の復活を誓ったんだ。
そこで彼らは『中央銀行の連中に見つからない土地』を探して、そこに町を作り、そこで復活させることにした。

未開の地を探す長い長い航海の末、彼らがようやく見つけたのが、水平線に浮かんだシルクハット型のヘンな島。
海から続いた洞窟を抜けると、島の中に広がっていたのは、高さ4000メートルの岩壁にぐるりと囲まれた大地。
そう、この場所だ。    
彼らは、自分達が乗ってきた船を焼き払い、外との交流を完全に断った。
さらに、「外の世界を知ってしまうと、いつか外に飛び出そうとする人間が現れてしまう」と考えたカルロスは、驚きの方法で『外』という概念をもみ消した。
「煙を焚け。空を煙で塞ぎ、外の世界を無くすんだ」
次々に煙突が立ち並び、そこかしこから煙が上がり、町は黒い煙で覆われた。
陽が射し込まなくなったので植物とはおサラバ。
朝が来ても太陽が昇らず、夜になっても星が輝かない。
一日中ただ黒いだけの夜の町が始まった。
あれから215年。
この町は『星』を忘れた。
この町が煙突だらけである理由を知っているのは、レターの末裔と、仕事中に地中に残った植物の根っこに出くわす俺たち炭鉱夫だけ。
民間人は誰一人として知らない。
たった一人の男を除いてね。
俺としたことが、この話を町の酒場『キャンディー』で、その男にウッカリ喋っちゃったんだ。
身体の大きな仕立て屋の男だ。
男には、金も名誉も知性も品性もなかったが、ただ一つ、勇気があった。

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