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オペレーターやコンサルの養分にならないためにMC交渉の前に知っておくべき話

割引あり

①②みたいな感じで別なnoteとして書こうと思ってたけど、とりあえず1万字分溜まったので、毎週土曜日の夜に2,000~3,000字ずつ追記していく方式に変えました。なお、実験的に1週目は安くて、追記とともに徐々に値上げして、4週目以降は高止まりする価格設定にしてみる予定。

0.長い前置き

withコロナの今、ホテルオペレーターはオーナー/デベに対して「強い」賃料は提示しない。強いどころか、弱い賃料すら提示しないケースも多い。その代わりに彼らが提示するようになったのは運営委託の提案だ。これはこれで「新しい生活の様式」だ。

日本におけるホテルの新規出店において、これまでは圧倒的に賃貸借契約が主流だった。理由はいくつかあるが、主なオーナー側の事情として、収益の変動を嫌がる、事業リスクをなるべく排除したい、従業員を雇用したくない、面倒なオペレーションのモニタリングを避けたい、といったものがあり、主なオペレーター側の事情としては、オーナーに運営に干渉されたくない、賃借権に基づき長期安定的な運営ができる、賃貸借でもオンバラされなかった、といったものが挙げられる。

ところが、今回のコロナで、改めてオペレーター側は賃貸借(特に固定賃)での出店が持つリスクの大きさを再認識した。ホテルオペレーターにとっての2大固定費は人件費と賃料だが、人件費はまだ雇用調整補助金で救われる部分がある一方、賃料猶予ならともかく、賃料減額あるいは免除をオーナーが受け入れたという事例はあまり聞かない。また、制度としての家賃補助もあるが、持続化給付金も含めて、明らかに個人経営の飲食店レベルを念頭に置いたであろう支援額となっており、ホテル一棟を支えられる支援制度にはなっていない。

この結果、日系オペレーター各社は運営委託を提案するようになった(外資系オペレーターにとっては「新しい生活様式」ではない)。これまでは運営委託より賃貸借を選好するオーナーが多かったから、運営委託を提案しても、そもそものところで賃貸借を提案するオペレーターに勝てなかった。ところが、賃貸借を提案するオペレーターが激減したため、運営委託の提案同士での勝負になるケースも増えている。オペレーターにとっては一般的にノーリスクと言われてフィーだけちゅーちゅーもらい続けることができる運営委託での新規出店を増やす千載一遇のチャンスが到来している。

一方、これまで賃貸借提案の中で、基本的には賃料の多寡という非常に分かり易い、説明し易い基準でオペレーター(テナント)選定をおこなってきたオーナーは運営委託提案の中から良し悪しを見抜かなければいけなくなった。運営委託の提案には収支予測もセットで付いてくるが、その収支予測はオペレーターがコミットするものでも何でもない。そして、その収支にコミットできるなら、そのGOPを前提に固定賃提案せいや、と言いたくなるバラ色の収支予測は多い。

ここでオーナーとしては運営委託契約(Management Contract=MC)を熟知する(笑)コンサルにアドバイスを求めるという手がある。しかし、最近引退した「歩く外資系MC大辞典」のような某有名コンサル氏レベルで熟知した人は極めて稀だし、仮にMCの条文については熟知しているコンサルに運よく当たったとしても、喜ぶのはまだ早い。その担当コンサルがAMとして実際に運営委託契約に基づくオーナー側の権利行使やホテル運営のモニタリングをした実務経験があるかというと、一般論としてはその可能性は低い(だって、コンサルだから)。そのため、結果として、マニアックな知識のひけらかしに近い「アドバイス」も混じってくる。

つまり、オペレーターからの運営委託提案を前にしたオーナーは、短期的にはコンサルの養分になる可能性もあり、その後は長きに渡ってオペレーターの養分になる可能性がある。

というわけで、新しい時代、新しい朝の到来だ。

おは養分(これが言いたいだけ)。

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サポート→ホテルで使う→note→サポートというサイクルが回ると素敵ですね。