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枯れ沢が復活しているか定点観測するために写真を撮る<その2>2022年12月21日

今回は2回目の定点観測。2022年12月の乾季の調査です。前回の調査は、同年6月の雨季に行いました。実際の沢の状態を写真で記録に残します。同時に沢を観察した考察も書いておきます。

結論から言うと、ほとんど沢の水は枯れていました。

水があったポイント

水があったところは、上記図の濃い青の部分です。薄い水色は沢筋です。観察をすると谷部の地形的に水が集まりやすい所と、以前から水が湧き出ていたところに水が少しだけありました。

乾季がはじまったばかりですので、1月2月と季節が進むと完全に枯れる可能性が高いです。もし枯れていないところがあれば、そこに可能性を感じますね。

2022年6月の調査で沢の水が豊富に流れていた時のレポートはこちらです。

このレポートを書いているのは、枯れ沢復活&ホタルを飛ばす会応援団のまぁちゃんです。高尾山域でハイキングをしたりハンモックを張ったり沢歩きをしたりして遊んでいます。詳細は、twitterinstagramblogを。

撮影ポイント地図

撮影ポイント

撮影情報

日時:12月21日(水)9時〜10時
機材:GoProHero7 動画モードで撮影、それを静止画に。

本沢入口

本沢入口撮影ポイント
本沢入り口の上流方向
本沢入口下流方向

沢の入り口は、予想通りに水が流れていませんでした。ここは、雨がかなり降った時にだけ水が流れるからです。雨が少ない冬季は枯れていることがほとんどです。

草が枯れているので、コンクリートで三面護岸がされていることがよくわかります。この場所は、東京都の土砂災害警戒区域等マップを見ると、土砂災害特別警戒区域に指定されています。

零ノ沢

零ノ沢撮影ポイント
零ノ沢本流上流方向
零ノ沢本流下流方向
零ノ沢上流方向

ここに池を作るために穴を掘っていましたが、跡形もなく埋まっていました。7月の時点では水が溜まっていたので、台風シーズンに埋まってしまったようです。今年の東京は台風の被害はでていませんでしたが、枯沢に溜まっている土砂を流すには十分の水が流れていたと予測されます。

零の沢も手入れをしましたが大きな変化は感じられません。大雨が降った時には水が流れたのではないかと推測される形跡はありました。

本沢分岐点

本沢分岐点撮影ポイント
分岐ポイントを上流方向
分岐ポイントから下流方向
右沢上流方向
左沢上流方向

この辺りは右沢から沢の水がなんとか流れている状態でした。よく見ないとわからないくらいの少ない水量です。ほとんどの場所が数メートル程度の流れがあるだけでした。水が枯れている荒れた沢と言わざるをえないでしょう。

一ノ沢

一ノ沢撮影ポイント
一ノ沢上流方向
一ノ沢分岐からニノ沢・三ノ沢上流方向
一ノ沢下流方向

一ノ沢も分岐部分に少量の水が流れているくらい。枯れ沢に近いものがあります。今年は沢筋をずべて調査しましたがこの様子だと一ノ沢上流部の水も枯れているでしょう。

ニノ沢・三ノ沢分岐点

ニノ沢・三ノ沢分岐点撮影ポイント

ニノ沢

ニノ沢上流方向

三ノ沢

三ノ沢上流方向
ニノ沢・三ノ沢分岐から下流方向

ニノ沢上流部には、大きな水たまりがありました。これは前回もあったものです。以前梅雨時期に調査した時にはヤゴがいたので、通年水が溜まっているのではないかと思われます。

三ノ沢も所々に水が少ないながらも流れていました。そんなところにはコケが生えているのでわかりやすいです。水が滲み出るポイントが2つほどありました。それは急斜面で水が滴り落ちているような状態でした。

四ノ沢・五ノ沢分岐点

四ノ沢・五ノ沢分岐点撮影ポイント

四ノ沢

四ノ沢

五ノ沢

五ノ沢
四ノ沢・五ノ沢分岐から下流方向
四ノ沢上流にある枯滝

四ノ沢と五ノ沢の合流点より下に若干の水が流れがありました。ここも少量の水しが流れていました。

湧水ポイント

右沢にある湧水ポイント

湧水ポイントも大荒れでした。土砂や枝が多く堆積していました。水がポタポタと落ちるくらいの水量です。ほとんどありませんが、このようなコケが生えているところは、水が染み出している場所です。

この部分が写真的にアップの絵なのですが、他の場所も水があるといってもこのくらいの量です。

考察

沢は、現在も水がほぼ流れていない枯沢でした。

これは受け入れなければならない事実です。現状を受け入れることができれば、新しい選択をすることができます。

ここで大切なのは、科学的な視点で物事をみること。意識的にも無意識的にも「よく見せなければならない」という想いから嘘をつくことは避けるべきです。ただ今の状態をあるがままに見ることが大切です。現状をよく見て、頭で考えて、やってみる。やってみれば現状が変わるので、またそれを見て考えて動くの繰り返しです。つまり観察・仮説・実験・考察を積み重ねていくことです。

様々な人たち、先生と呼ばれる人たちを含めて、色々なことを言います。これらはすべて仮説にしか過ぎません。実際にやってみて結果がでなければ、その仮説は、この現場では合わないということです。他の所ではうまくいくこともあるでしょう。自然相手のことは、原因は一つではなく複数あり、それが複雑にからみあっています。

ひとつひとつ検証していきたいですね。

枯れ沢復活&ホタルを飛ばす会の活動が始まって3年(2020年1月スタート)、この森に手が入り始めて8年(2015年?)。長く森を見てきた人たちは何が変わって、何が変わっていないのか観察して気づいていることを知りたいです。

今回の考察は、一年半ほど観察した僕の目で見たこと、体で感じたことを書きたいと思います。

荒れている沢(五ノ沢上流部)

沢床について

沢床を観察すると、梅雨よりも台風の時期のほうが、沢が荒れるようです。台風で大量の雨が降って、一気に沢に水が流れ込んで水量が増え、木、石や土砂を流しているからと考えられます。山の斜面も雨で崩れているでしょう。このことから、山の保水力は弱く、山に水が染み込んでいないということです。

このことは、沢を歩く時に足裏で感じることもできます。石がゴロゴロしていたり、枝が邪魔をしたり、土砂でフカフカしていて、歩きずらいのです。

「しがらみ」「段切り」「点穴」などの造作をしてきました。今回の結果を見ていると効果があるのかわからなくなりました。手付かずのところが多いからか、すぐに結果がでないのか、造作にそのものに問題があるのか、よくわかりません。落ち枝を整理すると森の見た目が美しくなり、気持ちよく感じるようになるのは間違いないのですが、機能面として効果がよくわからないのです。

令和元年東日本台風で崩壊したであろう箇所(三ノ沢上流部)

沢の上流部分では、枝と共に土砂と埋まってしまっている部分も多いです。谷が急峻なので、しがらみを作りづらい地形になっています。この沢床の部分は、枝と土砂がからみあうような状態になっています。この枝を取り除き、水と土砂が自然と流れやすくする必要があると考えています。そうしないと大雨の時に決壊して一度に大量の土砂が流れることになります。これは早急に実施する必要があると考えています。具体的には、落ちた枯れ枝と倒木の処理が重要です。

沢の本流部分では、雨が降ることで一気に沢に水が流れることで、石、土、枝が沢に流れ込んで、沢筋は大荒れです。とても歩きにくく、気持ちよくない場所になっていました。沢筋はこまめにメンテナンスをすることが大切だということがわかります。特に台風後には必ず観察して手を入れることが重要かと思われます。できれば毎回、沢や山を歩いて観察して、すぐに対処する必要があるでしょう。

沢の水溜まりをビオトープをイメージして整備(ニノ沢合流部)

水について

ホタルを呼ぶという視点で見ると、生物多様性の視点が重要になります。水辺の生き物が増えなければホタルもやってきません。ホタルだけを増やそうと思えばホタルを放流すればいいのでしょうが、きっとそれは一時的なことで命のバトンは受け継がれてかないでしょう。

この森を「美しい」「気がよい」「よく整備されている」話をよく耳にします。しかし、事実をみるとそんなことはないことがわかります。表面的には美しくなっていきてるかもしれません。植物も昆虫も動物も、高尾山域の山々と比べても、とても少ないのではないかと感じます。沢から山をみていると雑草すら生えていません。地力が弱いのかもしれません。土が黒くても肥沃な土ではなく、ボラ土と呼ばれる栄養が少ない土らしいです。

まだ沢に水がある時期に、穴を掘って湿地帯を作りたいところです。なるべく水がある状態にしておきたいのです。休耕田の自然保護の活動をしている人たちは11月頃に湿地帯を作る作業をするそうです。この作業をする理由は、生物多様性の鍵を握るのは水だからです。そして、水がある時に穴を掘るのは簡単、水があると石や砂がゆるみやすく掘りやすいのです。それと水が湧き出る場所もわかりますから。

水が流れているうちに、水が流れたり溜まったりするような造作をして、爬虫類や両生類が住める環境を作れば良いのではないかと思っています。生き物が集まることで、人も集まってくるのではないかと思っています。

隣の谷の土木工事

山について

山は常に崩れています。土が乾いて風化され崩れることもあれば、雨によって崩れることもあります。また、1センチメートルの土ができるのに、植物や微生物の働きにより100年から1000年の時間がかかると言われています。

この辺りのことは、書籍「大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち」が参考になります。科学的な視点から誰でもわかるように書かれているのでとても読みやすいです。この分野は、文学的な視点の本が多い中、科学的な視点の本はとても貴重です。

隣の谷を見ると、令和元年東日本台風で生まれた崩落現場があります。U字型に見事に崩れて、その後に砂防ダムや法面工事がされています。崩れた原因が何かはわかりませんが、地球に重力がある以上、山は崩れるものだと考えています。

大きな台風で山が大きく崩れたり、少しずつ自然と崩れて土砂で沢は埋まっていきます。山の状態がよくわかるのが沢の状態なのではないかと考えています。そして、人の手が入っている山なのか沢を見ればわかります。

様々な土木工事

今も昔も山が崩れれば、人間の都合で手を入れます。砂防堤防について調べると僕らが造作をする「しがらみ」に似ているところがあります。ただ、土中環境などの本を読むと現代土木に対して否定的な考え方もあります。それぞれのメリット・デメリットを補い合い、専門家たちが科学的に政治的に協力し合い、よりよい方法を見つけてもらいです。また、自分自身の頭でも考え続けたいテーマでもあります。

崩れた谷の反対側を見ると、全伐された山があります。尾根沿いにある大きく育った広葉樹などの倒木も多く、山が乾いて荒れている様子がわかります。また、その隣をみると採石場があります。山に対して、どのような影響があるのでしょうか。この場所は多様な人の手が入っているので、比較対象として観察できればわかることも多いかと思います。

僕たちが手入れをしている沢の流域の部分は、広葉樹帯は倒木や落ち枝の整理をして山が美しい状態にする。針葉樹帯は、間伐をしてしがらみなどの造作をしていくことが重要だと考えています。間伐で林床に光を入れて植物の多様性を作ることが必要でしょう。また崩れやすいところも、しがらみなどの造作をして土が流れていかないようにしていくことも大切です。人間が美しいと感じることが重要だと思っています。「君たちはどう生きるか?」の問いにまでいきつくテーマですね。

湧水ポイントに手を入れて最初の一滴を

プロではないこと

先日、SDGsを学ぶゲームをする機会がありました。持続可能な開発目標を達成するために、大企業、ベンチャー企業、大学・研究機関、慈善団体という4つの役割がありました。それぞれが強みと弱みを持っており、それぞれの弱みを助け合い、それぞれの強みを生かして協力していくことを学びました。

この分類では、ホタルの会の活動は慈善団体になります。僕たちはプロフェッショナルではなく、アマチュアです。アマチュアの語源を調べるとラテン語のamator、つまり「好き」にたどり着きます。

プロフェッショナルの目線ではなく、アマチュアだからこそできることがあると僕は思っています。「好きこそ物の上手なれ」がアマチュアの強みです。専門家であることは「木を見て森を見ず」になってしまうこともあるのです。

日々の暮らしから自然を見ていく。「好き」は言い換えれば「興味」や「好奇心」です。興味を持ったから参加してみる。好奇心から参加してみる。そんな動機が大事なのではないかと思っています。素人の僕たちだからこそ、できることがあるはずなのです。

お願い

この結果を受けとめて、いったい何をすればいいのか途方に暮れています。

みなさん、助けて下さい。

できましたら、どのようにすれば良いのか知恵を貸して下さい。実際に会に参加して沢をよりよくする手助けをして下さい。できれば継続的に参加して現場を観察し変化をフィードバックして下さい。枯れ沢復活&ホタルの会の活動を見守って下さい。

僕たち人間にできることは自然にとっては小さなことかもしれません。時間もかかるかもしれません。それでも諦めず、ハチドリの雫のように、毎日のように鍬を持ち山に入り森を整えていた杜人のように、一歩一歩やっていきたいと思っています。

気の良い仲間たちと一緒に活動をしていきましょう!
あなたが参加してくれるだけで有難いのです。

ひとまず、ここで僕の役割を終えた感じがしています。最後までお読みいただきありがとうございました。

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