林檎の虫喰い穴-1

第一章 虫穴の行く世界

一ノ1

「ここは?」
 …...意識が朦朧と戻ってきた。ぼんやりした視覚が広げて目前は暗いままだった。無味、無声、けど、虚無でもなかった。彼女は微かに周囲の抵抗を感じとれてたが、何も掴めることはできなかった。彼女の体はこの混沌と闇の宇宙に漂っていた。
 その時、彼女はようやく気づいた。首当たりに何かの力があって、彼女を一つの方向に引っ張っていた。きつく縛られもがく彼女、体は動けなかった。まるで頭だけが引っ張られて、首の下が空っぽ、手足の感覚もなかった。彼女は自分の体の方向に目線を送った。かわいそうに、身体と象徴するものはすでに不完全だった。彼女はただ自分の身体が周囲に腐食されていくのを見て、止めることはできなかった。幸いにも、彼女は欠けた皮膚や肉そして内臓に、痛みを感じていなかった。それに、闇に飲み込まれいく恐怖すら彼女は感じていなかった。
 突如、前方に光が現れ、光は視野の上へ移り、彼女は目線を上げ光の中を見た。
 「この光は闇を終わらせてくれる」っと彼女は心底からそう望んでいた。
 けれど、これはどんな始まりなのかもわからず、彼女はこの光の中に引きずり込まれていた……

〈続く...…〉

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