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[看護師採用サイトをつくる⑥]看護師採用ホームページでよくあるお悩みと解決策

本連載、今号が最終回となりました。今回はいろいろな病院看護部からよく聞く「採用ホームページの困りごと」を中心に、解決方法や考え方をテーマ別でお話しします。

お悩み①
ホームページを作ることが決まったが載せるものがない

謙遜なのか嘆きなのか「うちの病院は大したことないから」とよく耳にします。改めて「看護部の“売り”は? 特長は?」と聞かれてスラスラとお答えになる方はなかなかいらっしゃいません。そんなときは視点を変えましょう。発信したいことを探すのではなくて、学生や求職者が知りたいことを用意するという考え方です。

これまでの連載でもお伝えしたように、看護キャリアによって入職・転職の判断材料は違います。学生、他院からの転職者、子育て世代、専門職、キャリアアップ志向の方はそれぞれ異なる情報を求めています。たとえば、復職支援や資格取得のサポートがあるとか、シフトが柔軟に組めてプライベートの時間も大切できるとか、どんな働き方が可能な病院なのかを想像してみてください。ナンバーワンでもオンリーワンである必要はありません。求職者は「普通のこと」でも知りたいのです。

余談ですが、私が採用ホームページを考えるときは下表のような「採用ホームページにあるべきコンテンツ一覧」を用いて必要な情報を検討します。

医療機関以外の他業界含め数100のホームページを調査し、採用支援企業やコンサルタントから集めた情報をもとにつくりました。その病院に必要な情報をピックアップして構想を練っています。
ホームページやパンフレット制作経験がない病院であっても、プロのライターによるインタビューや取材を実施し、原稿を書きます。また、教育制度のページは、院内で使用しているカリキュラムの説明資料やマニュアルを提供いただき、その資料を元にこちらで原稿を作成するといったこともしています。

お悩み②
スタッフが非協力的でプロジェクトが進まない

これはホームページに限ったことではないかもしれませんが、いろいろな局面で協力が必要なのに動いてくれない、委員会が機能しない、あるいは参加を拒まれることが多いようです。私がそれを肌で感じるのは、ホームページやパンフレットに掲載するための写真撮影で病棟に入ったときです。勤務される看護スタッフの方をモデルにして業務シーンを撮るのですが、皆さん消極的で写りたがりません(特にベテラン世代になればなるほど)。どこの誰に見られるかわからないという気持ちがわからないではないですが、写真がないことには、看護部の雰囲気も伝わりにくく、ホームページが何に魅力もないものになってしまいます。撮影が進まない状況に業を煮やした看護部長や師長が号令をかけてようやく動き出すといったことは珍しくありません。

ただ、面白いことに撮影には芸能人の方と仕事をするプロのメイクさんに同行してもらっていて、看護師の方々もメイクされているうちにテンションが上がるのでしょうか、撮られることに抵抗がなくなっていくことも少なくありません。プロのカメラマンが本格的な機材と大きなカメラを構えます。普段の仕事と異なる非日常的な雰囲気をつくってしまうというのは大事な要素なんでしょうね。
後日、撮影した写真データを納品するわけですが、スタッフの方々も自分の撮影された姿をご覧になって大いに盛り上がるそうです。このデータは病院でご自由に使えるので、パンフやPowerPointの資料、採用広告などでホームページ以外でも広くご活用されています。

お悩み③
紹介会社経由の採用を減らして自院で採用したい

高額な紹介料を敬遠されるところも多く、かつそれで短期間で辞められてしまったら…というお悩み。中途採用・既卒採用向けの情報は乏しいホームページが多いので、まずは転職動機がある人が知りたい情報をホームページに載せます。あとは待つだけ……ではダメで、求人広告(転職サイト)へ募集を出すなど「病院を知ってもらうアクション」が必要です。ホームページを見たときに新卒向けの情報しかないと思われたら効果半減ですから、トップページから中途採用向けページに直行できるようにリンクも整備します。
中途採用はつまり経験者の採用。看護も看護の現場もよく知っているプロ視点です。ごまかしが効きませんから、疑われないこととリアルな情報がすごく大切です。

お悩み④
ホームページに退職者や昨年度の情報が残っている

院内で定期的に新しい情報をメンテナンスするのは大変です。いざ採用シーズンになれば、学生向けの説明会やイベント出展で忙しく、細かな変更点は後回しになりがちです。新しくホームページを作るタイミングで、変更が生じたときにどのような対応してもらえるかを制作会社に確認しておいたり、院内で更新フロー(ルール)を決めておくことも大事です。また、退職者から「いつまでも自分の写真がネットに載っている」というクレームも起きますので、あらかじめスタッフと写真利用の取り決め(肖像権)について覚書を交わしておくと安心です。

お悩み⑤
退職されると面倒なのでスタッフの写真掲載は控えたい

市販されている写真素材を利用できないかといったご相談は結構あります。ただ、そういった写真は他院や転職サイトなどでも多用されており、どこかで見たことある写真になってしまいます。プロのモデルで、という話にもなりますが、モデルさんは芸能事務所などでライセンスが厳しくかなり高額です。求職者は職場の雰囲気を一番知りたがっているので、自院のスタッフにモデルになっていただくのが理想です。

お悩み⑥
ネットの便利さをフル活用したい

いままで一番効果を実感したのは、求職者からの説明会やインターンシップの参加予約を受付するシステムの導入でした。単なるメールフォームですとやりとりが煩雑になりますし、電話をしたくない・できない求職者も一定数いますから応募率アップが期待できます。ただしこれもシステム導入だけでなく、合説参加など知名度を広げる活動も欠かせません。
最近の有望なのは動画を使ったアピールです。映像制作会社に依頼するとかなりの金額に驚かれると思います。クオリティを犠牲にすれば、スマホで撮影YouTubeアップ、ホームページに埋め込み、はそう難しいことではありません。退職リスクも考えると高額な動画制作というのも心配です。

終わりに

とある調査によると、入院患者が「良い医療が受けられたかどうか」を感じるのは看護師がどのように接してきたかという印象で決まるそうです。また、看護師は子どもたちがなりたい職業で上位にランクインする人気の仕事。50年前のアンケートでも「看護“婦”」はスチュワーデス(キャビンアテンダント)と並び憧れの対象の職業でした。ナイチンゲールが白衣の天使として人々を救うストーリーが世の中に浸透し「よい仕事」というイメージが定着しています。

では、実際の仕事はどうでしょうか。不慮の事態が多く、あるいは緊張感が高く職員同士の不和が生まれやすい、不規則なシフトで体力もメンタルも強靭さが必要で、極めてタフな職業です。それでも看護をやりたい、世の中に看護を必要としている人がいるのだからと矜持をもって仕事をする方、あるいは生活のために職を選んだ方もいらっしゃるでしょう。

ひとりでも多くの看護師がよい病院に、よい職場に巡り会えるよう、看護部ホームページがそれに一役買う存在となることを願っています。


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