2021年10月18日(月)の日記(大事にするということ)
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2021年10月18日(月)の日記(大事にするということ)

クライアントさんとのセッションが終わった時、手もとでメモを取っていたA4の紙が「自分が大事にしているものを大事にしてほしい」とか「相手が大事にしたいもの大事にしたい」とか、「大事にする」という言葉で溢れていた。

その紙を見ながら私は「大事にするって、いったい何だ?」と、「大事にする」がゲシュタルト崩壊。

セッションの中で、クライアントさんに「そもそも大事にするって、いったいどういうことなんでしょうね?」と問えばよかったのかもしれないけれど、その時はそんな流れが起きなかったのだから、この問いかけはまたの機会に取っておいて、とりあえず自分の頭で考えてみる。

丁寧に扱うとか、尊重するとか、傷つけないようにするとか、損なわないようにするとか、そういうところだろうか。
地面に置かないとか、踏みつけないとか。
別に崇め奉らなくても、大事にはできる気がするけれど。

ヒントを求めて辞書を引く。

だいじ[大事]
【一】(名)①たいへんなこと。「国家のー・ーを引き起こす」②大きな事業。「ーをなしとげる」(⇔小事)
【二】(形動ダ)①失ったり、そこなったりしないように、気をつける(ことが必要な)ようす。「ーな皿・私のーな人・家庭をーにする」②それが<ない/できない>と、たいへん困るようす。重要。「ーな役割・話し合うことがーだ」③健康に気をつけるようす。「(おからだを)おーに。」

なるほど。私が求めている「大事にする」は【二】の方のようだ。

読んでいる本の一節を思い出す。

 哲学対話は、ケアである。セラピーといういう意味ではない。気を払うという意味でのケアである。哲学は知をケアする。真理をケアする。そして、他者の考えを聞くわたし自身をケアする。立場を変えることをおそれる、そのわたしをケアする。あなたの考えをケアする。その意味で、哲学対話は闘技場ではありえない。
 だからといって、哲学対話は共感の共同体でもない。「dialogue 対話」という言葉は、2人が対面で向かいあい、気持ちを分かち合う営みに思われがちだ。だが、dialogueという言葉は古代ギリシャ語の「dialogos ディアロゴス」からきており、「logos 言葉」を「dia 通じて」ひととひとが交わりあうことを意味するとされている。そして、その派生語には「dialektike ディアレクティケー」がある。
 ディアレクティケー。つまり「弁証法」。わたしはこの言葉を哲学史の教科書で知っていた。もちろんさまざまな哲学者が、さまざまな仕方でこの言葉を用いている。だが、ある種の弁証法を「実感」したのは、間違いなく哲学対話においてだった。
 ひとが集まって話すとなると、共感しあって終わるか、もしくは闘争するか、そのどちらかと思われがちだ。だが、弁証法はそれらとは全く異なる。弁証法は、異なる意見を前にして、自暴自棄に自身の意見を捨て去ることではない。ただ単に違いを確かめて、自分の輪郭を浮かび上がらせるのでもない。異なる意見を引き受けて、さらに考えを刷新することだ。
 中間をとるのでもない。妥協でもない。対立を、高次に向けて引き上げていくことだ。だがそれは対話において「変容する」ことへの容認がなければならない。昔見かけた目つきの悪い彼も、身軽に自身の考えを刷新していくサルトルも、ただ謙虚であるとか、自分の意見にこだわりがないとかではなく、自分の立場よりも真理をケアし、異なる考えを引き受けて、考えを発展していたのである。だからこそ、弁証法の場では、わたしは取るに足らないちっぽけな存在ではなく、真理に貢献するひととして扱われる。真理に近づくため、必要な存在となる。
(永井玲衣『水中の哲学者たち』p97~98)

何かを大事にするということは、「気を払うという意味でのケア」をするということかもしれない。そして、自分の立場よりもその何かをケアし、異なる考えを引き受けて、さらに考えを刷新していくことかもしれない。

つまり、何かをケアすることによって変容することを受け入れること。
自ら変わる覚悟を持って、何かをケアすること。
それが大事にするということかもしれない。

「尊重する」という時に、なんとなく感じていた冷たさに気付く。
「私はあなたを尊重します。だからあなたも私を尊重してください。」という時に、あなたの私の間にある断絶。
決して交わりません。だから影響も受けません。あなたと私は、それぞれ変わらないまま、並行して存在していきましょう。

影響を受けて変容していくことは、影響を与えることよりもずっと勇気と覚悟が必要で、可能性に満ちたことであるような気がする。
少なくとも、そうすることでしか、大事にしたい何かには近づくことはできないのかもしれない。


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みみをすますラボ 代表 (一財)生涯開発財団認定マスターコーチ 琵琶湖のほとりで、夫と二人の息子と暮らしながら、コーチとして活動してます。 noteは公開雑記帳。日記など、自分のために書き散らしてます。 HP(ブログ有)https://mimiwosumasu-lab.com/