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短評集 2022年1月

 2022年1月から280字の短いアルバム・レビューを1日につき1本ずつTwitterで投稿するという試みを始めた。新譜だけでなく、雑誌等であまり扱う機会のない数年前の旧譜も取り上げる予定だ。対象となるジャンルは特に決めていないが、自分の興味から必然的に即興音楽とその周辺が多くなるだろう。日々の備忘録のような試みでもある。とはいえ惰性で書くつもりは一切なく、商業誌と同じように労力を割き、同じようなクオリティで仕上げたいと思っている。

 なぜそのようなことを始めたのか。主に二つ理由がある。一つは新型コロナウイルス禍に見舞われて以降、自宅で過ごす時間が増え、録音作品に接する機会が多くなったことだ。一日中、好きな音楽を好きなだけBGM代わりに聴くことができる。これだけ聴いているのだから、どこかにアウトプットしておかないともったいないと感じた。もう一つは面識のある方々の訃報を相次いで耳にしたことだった。こちらの方が理由としては大きい。人間が死ぬことのリアリティをあらためて痛感した。それがいつ自分に訪れるとも限らない。このままでは高く評価しているアルバムについて、一言も言及しないままこの世を去ってしまうかもしれない。それはよろしくないと思った。

 もちろん、レビューを書くのであればSNSになど投稿せず、音楽メディアに持ち込んだ方が、より多くの人の目に触れる。しかし週に1本書いたとしても、1年で50枚に満たないアルバムにしか言及することができない。であれば速度と量を重視して紹介に徹した短評を気負わずに書き続けた方がより広く言及することができる。とはいえSNSに投稿することには迷いもあった。それまではSNSでアルバム・レビューを投稿したところで、瞬間的に読み流されてしまうものだし、なによりも録音作品は時間と場所を限定せず聴くことができるのだから、そこまで積極的にツイートとしてアウトプットする必要はないと考えていたからだ。しかしそうこうしているうちに時間は過ぎ去っていく。迷っている暇があれば投稿した方がいいという結論に達した。

 Twitterは1ツイートが最大140字だ。しかし140字でレビューを書くのはなかなか難しい。ありふれた宣伝文句の陳腐な組み合わせか、もしくはすでに文脈を知っている人だけが理解できる閉鎖的なテキストになりがちなのである。いずれも避けなければならない。加えて雑誌等とは違い、レビュー単体でも読むことができるものにしなければならない。とはいえ多数のツイートが続くのも煩わしいだろう。Twitterは短文に適したSNSなのだから、できるだけ簡潔にまとめたい。ということで280字に収めることにした。

 短評を書くにあたって、いくつかの制約を自分に課している。たとえばそのうちの一つは、どんなに聴き込んだアルバムであったとしても、書く前に必ずもう一度耳にすること。そして聴かなければ書けない内容を短評として記すこと。そんなことは当たり前の作業でもあるのだが、280字のレビューであれば、収録された音にほとんど言及しなくとも、周辺情報をまとめるだけで成り立ってしまうことがある。とりわけ音響結果が不確定的な実験音楽の場合は、音よりも周辺情報の方が重要であることも多い。だがたとえそうであったとしても、音だけが切り取られてアルバム化されたことを重視したい。聴かずに書いた方が手っ取り早いのかもしれないが、むしろ効率化がよしとされる時代だからこそ、しっかりとコストをかけて書きたいと思った。そもそも時間と向き合うことなくして音楽をよく語ることはできない。

 Twitterに投稿するだけでもいいのだが、なにを書いたのか自分でも忘れてしまう可能性がある。だから書いた内容をnoteにまとめておくことにした。選盤もテキストも誤記の修正を除いてTwitterに投稿したものと同一である。あくまでも備忘のためなので、まとめた内容は有料記事として公開する。ツイートを遡っていただければ同じテキストが読める。情報量としてはゼロである。とはいえ、もしもまとめて読みたいという奇特な方がいるのであれば、支援いただければ幸甚だ。手弁当でやっているので、支援いただいたお金はアルバム購入費等で活用させていただく。

 2022年1月の短評を以下にまとめた。

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