【読書日記】『かぎろいの島』
6/20第三回最恐小説大賞の受賞作、緒音百(おおともも)さんの『かぎろいの島』が発売されました。
先日の読書日記、海藤文字さんの『悪い月が昇る』の時も書きましたが、最恐小説大賞は投稿小説サイトエブリスタと竹書房さんのコンテストです。
今年はエイベックスピクチャーズさんも加わったコラボコンテストとして開催されている。とお話をしたと思うのですが、なんと! 私、まさかの二度目の受賞をしました。エイベックスピクチャーズ賞と竹書房特別審査員賞です。自分でも二回竹書房さんから賞がいただけるとは思っていなかったので嬉しい驚きでした。
エブリスタ小説大賞2024にも竹書房さんのお名前はありますので、おそらく今回も何かコンテストがあるはずです。ホラー小説のコンテストや公募はミステリーなどに比べますと、意外と少ないと思いますので気になる方はエブリスタのお知らせをチェックしていただけたらなあと思います。
そして、過去のイベントページには竹書房さんの総評が掲載されているのですが、これからホラー作品を書こうと思われる方にはとても参考になる総評ですのでおすすめです。過去分もすべて無料で読めるので探してみてはいかがでしょうか。
そんな第三回最恐小説大賞受賞作『かぎろいの島』を読了したので、さっそくその感想を。
主人公の津雲佳人は『ファミリーフォトグラフィ』という作品でデビューした小説家です。
佳人は父子家庭で育ち、その父も自死しており家庭に温かな思い出のない中空想で作り上げた家族の物語を描いた作品だったのですが、ベストセラーになってある異変が訪れます。
出版社の元に彼の伯母だという人間から手紙がきたのです。実に怪しいですよね。けれども佳人本人でないと知らない情報があり、伯母だと信じざるを得ません。
有名になってから、身内だという人間がでてくるのはそれが本当であっても何かトラブルを招きかねないものと警戒すると思うのですが、佳人は父親から、自分の母親に関する話もまったく聞かされていなかったこともあって、好奇心の方が勝ってしまうのです。
そして、自分の生まれ故郷だと言われた九州南西部の孤島陽炎島に行くことになります。
もしも「ホラー映画で殺されない方法」インジャパンを私が書くとしたなら、私は真っ先に「島ダメ絶対!」と書くのですが、佳人の生い立ちと、どこか自暴自棄といいますか自分の命や身体を軽んじているようなところのある性格と彼の作家としての好奇心に読み手のこちらは行くことに納得してしまうんですよね。
そして、陽炎島には異人殺しの伝説があり、その異人の魂を弔う儀式を佳人の一族がとりおこなっているようなのですが……。
徐々に異様で異質なことが分かっていき、繋がりそうでなかなか繋がらない感覚がもどかしくてどんどん読み進めていきました。
そして、夢にでてきそうなほど恐ろしい描写は圧巻でした。
おすすめです。
なお、緒音さんは実話怪談の新星でもありまして、今まで竹書房怪談文庫のアンソロジーに何度も作品が掲載されています。
実話怪談の大変興味深いなあと思う点は、実話なのでおそらくはいわゆる聞き書きの形式を取られていると思うのですが、集まってくる怪談に不思議と著者の方の個性というものがあることです。
緒音さんの実話怪談はなにか不可思議でべたっと気持ち悪い(もちろんいい意味です)もやもやと残り、とても身近なかんじもする怪談が多くとても面白いのでおすすめです。
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