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教壇に立ち続ける 63 入試問題で学びを深める【note限定記事】

連続投稿しながら古典のテストを作っています。問題はできたので、あとは解答用紙をちょちょいっとやれば完成です。リテイクがなければいいのですが……。どうも星野です。今回は火曜日に書こうと思っていた授業実践についての記事です。教材は長田弘の「失われた時代」、京都大学の入試問題を定時制高校で読み解く授業です。はてさてどうなることやら。すでに1回目の授業をやっているので、それについても詳しく書いていきます。定期更新日は火・金・土。いいなと思って頂けたらサポートをお願いします。minneとFantiaはこちら。新作を鋭意製作中ですので、プレゼント等にどうぞ。もちろんご自分用でも大丈夫です! お花の作品、リボンちゃんなどなどゆるふわ、甘いおとめちっくな世界観で運営しております。私はお花が舞っている先生らしいのでこれくらいがちょうどいいのです。

まず生徒の概要からご説明します。
現在高校3年生、昨年度も担当していた学級です。選択授業のなかのひとつ、という位置づけなので、学年には現代文を履修していない生徒もいます。学力はそこまで言うほど低くはないものの、学習習慣がなかったり、生活リズムが乱れがちだったり、授業以前の問題でつまずいている生徒もいます。そして書字に困難を抱えた生徒もいます。おおむね意欲的で、学習活動に抵抗を示さない生徒が大半ですが、学年でも目立つ問題児たちが集まっているので、授業は大騒ぎになるのが普段の様子です。物静かに勉強している生徒もいますが、うるさいことの方が多いという感じ。

そんな生徒たちは昨年「こころ」を読み、文学批評の入り口に立ちました。そして今学期は「山月記」を中心に扱い、間テクスト理論や話型論など文学批評の方法を学びました(定着したかどうかは今後の課題でわかり次第お伝えします)。そして3コマ余った時間と、漢字を出さない分のテスト問題をどうするか悩んだ結果、実力問題としてこの長田弘の「失われた時代」を扱うことを決めました。
教材選定の理由はみっつ。①生徒に「内省」を促しながら、旧帝大レベルの問題でも君たちは解けるのだと自信を持ってもらうこと、②表論文の基本的な読み方を教えながら、私自身がこの教材を使ってどこまで授業を面白くできるか実験してみること、③もともとこの教材で授業計画を練っていたこと、が挙げられます。「京都大学の入試問題レベルの教材でどう面白い読解活動に結びつけられるか」が私のテーマ、「生きることについて哲学的思索にふけってもらう」が生徒へのテーマです。3コマに凝縮したので、追いかけきれていない部分もありますが、それでも今日やった感触と共にお伝えしていこうと思います。

ここからは授業の内容についてです。実際の実践についても書いてあります。3時間構成、今日やったのは前半部分の読解でした。この随筆というか表論文というか、よくわからない文章は、「生きなければならないように生きる」こと、そして〈生きるという手仕事〉について筆者の見解を述べたものです。一所懸命に生きるとはどういうことか、なぜそれがいま必要なのか……そういうことを考えさせるためにはうってつけの教材です。
内容としては1時間で半分ずつ読み、最後の1時間で通して全体の構造を把握する、というものです。毎週リフレクションを課しているのですが、今回はコメントを閲覧できるのが私と本人のみの設定にしたうえで、生徒の人生観を見つめなおす手助けをする授業として位置付けています。
今回前半部分を読み、語句の意味を確認した後、「手仕事」についてや帽子屋のセリフを単語に注目して細分化しながら、筆者の個人言語をさらにおのおのが再構成するという授業をやりました。生徒は最初「なにこれ」という感じでしたが、次第に引き込まれていったようで、真剣に取り組んでくれました。私は机間指導をしながら生徒のつぶやきを拾って全体に還元し、それぞれが言語で再構成するのを手伝うファシリテーターとして授業をしていました。まずキーワードを探す活動をしたのですが、てんでばらばらなところに線を引いていた生徒も、ほかの生徒と私のやり取りを聴きながら軌道修正していき、最終的に「カッコ書きや頻出のワードに注目する」ことを学びました。そして帽子屋のセリフを細分化する活動に移り、「~なければならない」ってどういうときに使う? どういう意味か二字熟語で言える? と問いかけながら本文の内容をざっくりと把握しました。授業後生徒からも「表論文が苦手なので読み解き方を知れてよかった」だとか「面白い話だった」とかの意見が出て、結構好評でした。授業後にこの解答で合っているのか聞きに来た生徒もいました。私の作成するテストは初めて受ける生徒たちなので、いまの授業スタイルである「ひたすら書く」をどこまでテストで発揮できるかも問題なのですが、まずは自分がこの教材を読んで感じたことを率直に言葉にしてほしいと思っています。来週2コマ実施してこの授業は終わるのですが、時間があるならもっと深められる教材なだけに、少しもったいない気もしています。
生徒にはこれをきっかけに「生き方」を見つめなおしてもらいたいなと思いながら、軌道修正しています。
板書計画はこちら。

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読解のテクニックも伝えているので、予備校っぽさはありますが、この授業のキモは「リフレクション」なので、「この作品を読んで『自分の生き方』について何か意見が変わったか? 新しい発見はあったか? これを読んだうえでどう生きていきたいか?」というようなことを聞いてみようと思っています。変容したものを私が受け止め、認め、そして勇気づけてあげることが大事なのかなと。

まだこの実践は終わっていないので、終わり次第また報告しますね。それでは、また。

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