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教養はすぐそばに【note限定記事】

読書の秋。それは積読を増やすものである。どうも星野です。11月の定期更新日は水・土。今日は連続投稿日、ひとつめのお題は「翻訳」についてです。教育の話とも関連してくるので、お楽しみに。この記事を読んで、参考になったなーとか、いいなと思って頂けたらサポートをお願いします。minneとFantiaはこちら。毎週土曜更新、全国一律送料無料、受注生産以外は即日発送可。なにとぞ。

「文学こそ最高の教養である」駒井稔他(2020、光文社)

今回の課題図書はこちら。

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まずタイトルが良いですよね。「教養」というものをどう定義するのかで議論は分かれると思いますが、「実益としての教養ではなく、人生を豊かにするもの」とされていた点も非常に興味深かったです。文学という、エンターテインメントであり学問でもある分野の最前線でご活躍されている方々のメッセージをこの目に焼き付けられたのは、本当に良い読書体験になったと感じています。学校で文学の本当の面白さを教えるのには(コマ数や教師の腕など様々な要因があるため)どうしても限界があるし、生徒によっては「文学なんて必要ない」と思っていることもありますから、そう考えると生徒の世界を広げる意味で「翻訳された文学」を教えるのも面白そうな取り組みだなと思った次第です。文学はただ高尚なお遊びでもなんでもなく、人生に寄り添ってくれる大事なメッセージを受け取るためのひとつの入り口なのだと強く感じました。

読んだらびっくり、ここが面白い

この本は翻訳者の方との対談形式で、1章が短く、気になったらこれを読んでみて! というブックリスト付きで、分厚くても読む価値は非常に大きいと思います。生徒にもお勧めしたいし、何より学校図書館に入れたい。つまみ読みでいいから開いてみて! と言いたい。私はこの章の序盤で登場する、フランス文学のところを重点的に読みましたが、翻訳に関わるあれこれ(原語のニュアンスを残したうえでどう訳していくか、日本語として不自然ではない形にするにはどうしたらよいか、あるいは訳者によるテーマの再発見等)が勉強になりました。自分の生まれた国とは違う歴史的背景・文化を持つ国の作品を、いきいきとした言葉で描き、そして自分の国の読者に届けるという翻訳者さんの仕事が、とても意味のある営為であると再確認しました。すごくテクニックも要るし、何よりその国の文学に対する知識や教養がないと、翻訳はできません。そういう意味でも、世界の古典を扱った翻訳文学は「最高の教養」なのかもしれませんね。だって、その国の持つ雰囲気を形作る「独特の言葉づかい」を極めているひとの、そのワードセンスを浴びるように読んだら、きっと他国のことに少しだけでも詳しくなれると思いませんか? それに、文学作品という心(精神)にとって必要不可欠な「ほんたうのたべもの」(宮沢賢治の著作より)を複数味わえる。一粒で二度おいしい、それが翻訳文学だと感じました。

学校教育でできること

この「翻訳文学を読むこと」はおそらく、学校教育にも応用できると思うのですよね。つまり、「翻訳」という営為を体験することによって、国語にも他の国の言語にも触れる学びが可能になるということです。
中学生ではヘッセの「少年の日の思い出」、魯迅の「故郷」などを(ほとんどすべての生徒が)読むと思うのですが、高校生になると途端に翻訳文学が教科書から消えていくという現実があります。それは決して翻訳文学に魅力がないからではなく、教科書の根っこの部分の問題でしょうが、それは措くとしても高校生にもなって海外文学を扱わないのは物足りないな(教える側も研究しないといけないな)と感じていました。だからこのような書籍を通して「翻訳文学ってこういう魅力があるんだよ」「翻訳にはこんな難しさがあるんだよ」というのを教えても良いのではないかと、私などは思うわけです。
もちろん海外の古典でも日本の古典でも、かなりきわどい表現や設定はあります。それを抜きにした作品が中学生では読まれていると思うのですが、高校生にも作品を選べば(例えばフローベールの「素朴なひと」とかはアリだと思うのです)、文字通り生徒の知っている「世界」が広がると思うのです。それを英語科や世界史などの他の教科と連携しながら読み進められれば、なおよしというか。これは私が実際に英語科と国語科で教科横断をした経験があるので、そういうことが簡単に言えるのかもしれません。けれども教材研究していけば、国語科で海外文学を読むのも変なことではないと思うのです。詩歌の授業でボードレールを扱ったら、文化史(世界史で暗記せよと言われるあれですね)がもっと身近に感じるかもしれませんし。海外文学を国語科の授業の中に取り入れることは、生徒の言語感覚を磨いたり、文化を比較して学びを広げたり、また作品そのものに深く入り込んで学んでいったりと、かなりの教育的効果を上げると考えます。授業案も可能性が無限に出てきます。翻訳文学を(内容を吟味したうえで)授業に取り入れてみたいな、と強く思うきっかけになったのは、まさにこの「文学こそ最高の教養である」という一冊だったのだと思いました。

文革が必要ないひとは、本来ならいないと思うのです。
流行りのヒットソングも、ケータイ小説も、全部文学の中に位置づけられると考えます。
だからこそ、文学という「最高の教養」を武器にした生徒にこの世の中を渡っていってほしいなと思ったのでした。
この一冊は訳者の想いに触れられるので、この本を読みながらその訳者さんが翻訳した小説を扱うのもアリなのかな、とか夢想しつつ、このお話をおしまいにしたいとおもいます。それでは、また。

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学術を中心に、考えたこと感じたことを徒然なるままに綴る中学・高校の国語科教師です。ハンドメイド作家兼物書きでもあります。愛称は桃ちゃん。よろしくどうぞ。

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