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吃音とサービス業について

私には腎機能障害とは別に吃音という障害があります。
ネットが普及した現在では吃音についても吃音を持っている人たちについてもある程度知ることができますが、まだ認知が低く吃音で苦労している人たちに対する理解も世間的には十分であるとは言えません。
そのような中、吃音持ちの私が接客業していて感じた事をシェアしたいと思います。

・吃音と私
・サービス業との出会い
・職場での苦労
・職場での失敗
・自分流うまくやり抜くコツ
・まとめ

・吃音と私

私の吃音は難発といわれるもので、頭では言うべきワードがイメージできるのに発音できないというタイプのものです。その他には無意識に言葉を連発してしまったり言葉を伸ばしてしまったりする症状があります。
子供のころは「口喧嘩」や「言い合い」みたいなものが恐ろしく苦手で、あまり人といることを好みませんでした。もうだいぶおじさんになってしまった今でも人と話をするのは得意ではないし好きになれません。
ただ「どもる」というだけでずっと笑いものにされてきたし、初対面の人にも馬鹿にされることも少なくありませんでした。
大学を卒業するまではずっとこの「どもる」というコンプレックスに対して学業やスポーツで人より秀でる努力をした事で気持ちを保っていたと思います。

・サービス業との出会い

大学を卒業するにあたり、当たり前にみんなが取り組む就職活動も吃音が原因で気が引けてしまい卒業後はフリーターになりました。
半年ほどバイト先を転々とした後、ある老舗レストランに辿り着きその翌年には準社員として入社することになり、これが私のサービス業デビューとなるわけです。8年間その会社で務めた後、某ハンバーガーショップに転職してマネージャーとして現在も勤務しています。

・職場での苦労

当時の私は調理の仕事をしていたのでほとんどお客様と会話をする事はほとんど無く気持ち的には楽でしたが、私が吃音持ちのためお客様の前に出せないという判断があったようで他の人は調理も接客も両方トレーニングしてもらえるのに自分だけしてもらえず自分の仕事の幅は狭いままで、会社に対するロイヤリティや仕事に対するモチベーションは高いのに「自分はこの会社のために役に立ててないのではないか?」というストレスをずっと抱えていました。それはキャリアを積むほど大きくなっていきました。

具体的な業務内容でいうと、電話対応が苦手、というよりも恐怖です。お客様とのやり取りはもちろん、他店舗と資材のやり取りの電話をするのもうまくできないわけです。
後、従業員同士でのコミュニケーションも苦労が多いです。毎日するものや、無意識にでもできるレベルのルーティンワークは慣れれば問題はありません。でもイレギュラーな事態が起きた時にそれを上司に説明するのがうまくいかないのが自分にも相手にもストレスになり問題が悪化する事があります。
特に大きくストレスを感じたのはこの二つの事ですが、こういう吃音でストレスを受けたエピソードは山のようにありますので、また機会があれば記事にしていきたいと思います。

・職場での失敗

学生の時と同様に「努力する」事で職場での負い目を挽回しようとしました。これが大きな失敗だったのです。
ただ純粋に与えられた業務を一生懸命こなしていくだけなら良かったのかもしれませんが、元々のコンプレックスの影響からか人より秀でようとする自分を抑えきれないわけです。人より秀でる事で立場や居場所が保証されると思っていたのです。
私は自分の仕事を完璧にこなそうと懸命に働く一方で、周囲の人や環境に対しても完璧を要求するようになりました。
次第に自分の上司に対しても横柄な態度をとり、いつも周囲に不平や不満を口にするようになり誰ともコミュニケーションが上手くいかず、結果的に生産性も低くなりますます孤立していきました。ここまでくるともう吃音だけの問題ではないですよね。
次第に私の悪評はエリアマネージャーの耳にもはいり、人手の足りない店舗を転々とヘルプに回されるという事態になってしまいました。

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・自分流うまくやり抜くコツ

スタッフィングのうまくいっていない状態の店を転々とするという経験はとても苦痛でしたが、多くの人と出会うことができました。そして人との出会いの中で大きな気づきがありました。
それは「人の話を良く聴こう」という事でした。同じ仕事をしていても、同じ職場で働いていても目指しているものも働く目的もみんな違うわけです。
毎日のように「はじめまして」の人と一緒に仕事をするうえで、皆の事をきちんと知る必要があります。否が応でも皆の話を聞く必要がある状況に置かれた時に「相手の話を必死に聴こうとすると、相手も自分の話を必死に聴こうとしてくれる」という事に気付きました。もうそこには「どもり」程度のことで私の事を馬鹿にする人は誰もいませんでした。
そして、それまでの自分が「どもるから話しを聞いてもらえない」と勘違いしていて本当は「人の話を聞かずに自分の事ばかり話していたから話を聞いてもらえなかった」という事に気づいたのです。コミュニケーション能力が低かったのです。
まず相手の話を聴く。そうして、相手が自分の話を聴いてくれる態勢が整ったら自分の思いを話す。聴いてくれる環境では気持ちよく話せてどもる事も少なくなりました。
私は仕事を通して生まれ持って抱えていた吃音という課題に一つの答えを見つけました。誰にでも当てはまるものではないかもしれません。もっと症状の重い人には効果が薄いかもしれません。でも、相手の話を一生懸命に聴く事でコミュニケーションは成立するし人間関係は良好になります。
どもるから他者を遠ざけるのではなく、むしろ一歩近づくことでポジティブになれるのです。

・まとめ

吃音はコミュニケーションを阻害する、非常にネガティブな気持ちに陥る可能性のある障害です。
誰も自分の話を聴いてくれない、自分の存在を認めてくれない、と自暴自棄になってしまう人も少なくありません。
でも自分にそういう障害があるからこそ、話を聴いてもえらない苦しみを知ってるからこそ自分が人の話を積極的に聴いて相手の事を受け入れていきましょう。きっと、自分の話を聴いてくれる人に巡り合えるはずです。
そして、自分のまわりに吃音の方がいたら是非とも話をしっかり聴いてほしいです。

今、吃音で困ってる子供たちに「大人になれば平気だぞ!」という社会を私は見せてあげたいと思っています。よろしくお願いします。

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