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七月の星々(140字小説コンテスト)応募作 part4

part1 part2 part3 part4 part5 結果速報
【お知らせ】
hoshiboshiでは昨年7月よりオンラインワークショップと140字小説コンテストを毎月継続して行ってきました。
1年間を終え、こちらの受賞作をまとめた冊子を作ります!
詳細はまた改めてお知らせしていきますので、どうぞよろしくお願いします!

月替わりのテーマで開催する140字小説コンテスト。

【7月のテーマ】
作中に必ず『』という文字を入れる。

7月31日までご応募受付中です!
(応募方法や賞品、各月の受賞作などは下記をご覧ください)

受賞作の速報はnoteやTwitterでお伝えするほか、星々マガジンをフォローいただくとhoshiboshiメンバーの記事とあわせて更新のお知らせが通知されます。

応募作(7月20日〜26日・投稿順)

uriko(サイトからの投稿)
バイト先のマルチ商法の社屋には休憩室があった。電話番なので12時に一斉に昼休みというわけにはいかず面子はいつもばらばら。泣きながら休憩室にかけこむ後輩。若い会員が無理な借金するのを引きとめたと話す先輩。無人コンビニは誰かに万引きされていた。大きな窓があり、晴れた日は富士山が見えた。
鳥谷(サイトからの投稿)
昔の話。天は光っていて、一面に平たく空を覆っていた。
しかし、居るだけで熱かったり眩しかったりして邪魔だったので、皆でよってたかってぼこぼこにして65537角形に畳み、止まることが無いよう年がら年中追いかけまわすことにした。
こうして、太陽と星が動き出し、時が生まれた。
白石慎(サイトからの投稿)
いらっしゃいませ。当店は時の流れる音を集めたオルゴール店でございます。例えばこちらの「猫が日だまりで和んでいる時」は、たいへん心が安らぐとご好評をいただいております。お探しの時が見当たらないようでしたら、オーダーメイドでお作りすることもできますのでお気軽にお申し付けください。
ちる(サイトからの投稿)
鳩時計の鳩に連れられて、時計の中の世界に行ったことがある。血走った目をしたたくさんの鳩が、糸車に向かって仕事をしていた。時間を紡いでいるんだそうだ。休みはないらしい。鳩たちが働くのをやめたら世界中の時間が止まってしまうから。帰ってきた今でもふと、鳩たちに申し訳なくなることがある。
ちる(サイトからの投稿)
さっきから宿題をしているけれど、全然進まない。五時を告げた鳩時計の鳩が、にやりとしてこっちを見ていた。あいつが時間を引き延ばしているのだ。ぼくがイタズラでださいシールを時計に貼ったから、仕返しをしているらしい。鳩時計の鳩の機嫌をそこねてはいけない。あんなことするんじゃなかったな。
ちる(サイトからの投稿)
現実の世界のぼくの目覚まし時計と、夢の世界のぼくの目覚まし時計は、仲が悪い。どちらがぼくを早く起こすかを競っていて、夢の中でも現実でもほとんど同時にアラームが鳴り響く。ぼくが起きると、ねえ、どっちが早かったの、と現実の目覚まし時計がたずねてくる。そんなの分かるわけないじゃないか。
ちる(サイトからの投稿)
「百四十字仮面、参上! 怪人め、そこまでだ!」百四十字で悪を討つ、その名は百四十字仮面。彼の変身に制限時間はないが、制限字数がある。今日も路地裏に怪人を手際よく追いつめた。しかし彼は、いつも止めを刺すことができない。「行くぞ! 必殺スーパーウルトラミラクルジャスティスバーストキッ
キジトラ(サイトからの投稿)
白い壁にもたれて微睡んでいた。まぶたに揺れる木漏れ日の暖かさと、風の囁き。壁は白く、どこまでも高くそびえ立つ。時はとうに流れを止めた。夢だと知りながら見る夢の、ひやり、とした感触。ーーお前が誰なのか、私は知らない。ここに居たいのならそうすればよい。ーーそんな声が聞こえた気がした。
K(サイトからの投稿)
死を迎えた時、赤衣の童子が現れて焦った。白象に聞かせたいから幸福なお話を探してと頼まれて、安請け合いしたまますっかり忘れていたのだ。忙しかったの。自分のことは二の次で生きるのに精一杯。子どもの成長を見届けられていい人生だったけどね。えっ、そんなちっぽけな私のお話がいいの。嬉しい。
白石慎(サイトからの投稿)
時缶機って知ってる?パッと見は他の自販機と一緒。ただ商品見本があるとこには「時缶販売機」とだけ書いてある。出てくる缶の種類はバラバラ。肝腎の中身はというと、少しでも時を連想させるものならなんでもアリらしい。思い出のドロップが出てきた奴もいれば、砂時計の砂が当たったのもいるそうだ。
白石慎(サイトからの投稿)
昔女子高生は古いケータイを持ち歩いていた。友達との写真やメールという思い出の時がつまっていたからだ。今はなんでもクラウド化され、データ移行も簡単にできる。あの頃の思い出たちも今ごろは雲になって、気ままに流れて旅でもしているかもしれない。もしもし、そちらはお元気ですか。
uriko(サイトからの投稿)
時は飛ぶものだというので、頼み込んで背に乗せてもらった。夏の夜空を時と一緒に光りながら飛んでいく。冬のベルサイユ、春のムーア。カスピ海で水を汲み、灼熱のアフリカに雨を降らした。乾期のバンコクで時から降りた。チャオプラヤー川の流れに足を浸して、去っていく時に手を振った。時が瞬いた。
uriko(サイトからの投稿)
午後3時の夢。夢の中のパンケーキ。パンケーキのシロップ。シロップを煮る妹。妹のターバンの赤。赤い花を摘む姉。姉の机の書きかけの小説。小説のしまわれた机に座る姉。姉の摘んだ赤い花。赤いターバンの妹。妹の煮るシロップ。シロップたっぷりのパンケーキ。パンケーキの夢。夢を見るよな午後3時。
羽角 あを(サイトからの投稿)
じっとりとしめった空気が充満する部屋の中、容器に熱湯を注ぎ込む。むわりとまっしろな湯気が顔にあたり、汗が一筋頬を伝った。「やせ我慢かよ」なんて言われても譲れない、俺の至福の時間。早いような、遅いような180秒を、額を拭って待つ。待ちかねた電子音が鳴って、空きっ腹がくぅ、と鳴った。
羽角 あを(サイトからの投稿)
女と男の友情なんてありえないと思っていた。なのに、絶対に合わないと思っていたタイプの人間と、しかも男と、友達になった。彼は四六時中人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべいて、それが癇に障る。でも、夜の時雨の中で同じ銘柄の煙草を吸った日から私達の関係は変わった。そう彼は、私の「悪友」。
ヒトシ(サイトからの投稿)
お社の大樹が参道に濃い影を作る。短い命を燃やす蝉時雨が容赦なく鼓膜をつんざく。からん、からんと鳴る錆びた鐘の音。ぱん、ぱんと響く乾いた柏手。まるで映画のように蝉の声が一瞬鎮まり、深い海の底のような蒼い静寂が支配する。深く一礼をして祈りを解いたその人はひとつ深呼吸をして歩き出した。
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