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八月の星々(140字小説コンテスト第2期)応募作 part5

part1 part2 part3 part4 part5 結果速報

月ごとに定められた文字を使った140字小説コンテスト。

八月の文字「遊」は8月31日をもって締め切りました!
(part1~のリンクも文頭・文末にありますので、作品の未掲載などがありましたらお知らせください)

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そして九月の文字「実」です!
応募方法や賞品、過去のコンテストなどは下記をご覧ください。

応募作(8月27日〜31日・投稿順)

雨森(サイトからの投稿)
ねぇ、ママ遊んで!と彼女に言われてあたしが出来ることは、本を読むことだけだった。
お母さんらしきこと全てが上手く出来ない。
彼女の友人から聞いた誇らしげな自慢話に優しく叩かれた心で考える。泣き出したいいま、どんな本が美味しいか。

「母は本棚から本が呼べるんだよ!すごいでしょ!」

雨森(サイトからの投稿)
年末年始、彼と彼女が手を繋いで歩く後ろを不思議な気持ちで眺める。彼と手を繋いだことが 私にはない。彼女を傷付けないようにと彼は私の掌だけ拒んだ。
パパがいつか遠いところから戻ってくるって信じてる彼女を大事にしたいから、と。ふたりがアヒルボートに乗って笑ってる。回遊する魚みたいだ。

吉岡幸一(サイトからの投稿)
女遊びに疲れた彼が、真実の愛に目覚めたのは彼女に出会ってからだった。
彼は一筋に彼女だけを愛したが、彼女は見向きもしなかった。
彼は全財産を差し出して求婚すると、彼女はあっさりと受取ったが、三年待ってほしいと答えた。
三年後、彼女は彼の全財産を三倍に増やしたが、他の男と結婚した。

鯉瀧堂(サイトからの投稿)
届いた文字を使い文章を作って遊ぶというゲームを注文した。届くのは漢字1文字。受取った漢字を必ず入れて作成、返送すると優劣がジャッジされる。開けたら漢字が喋り出すオプションも付けた。今回の字は「遊」。案の定「遊ぼうよ」をしつこく繰り返す。今回は意志の強弱もジャッジされるらしい。

鯉瀧堂(サイトからの投稿)
月に一度遊びに来る時は痩せて姿は見えない。それでも遊びに来るのはその日しかないからだ。次の日に向けて明け方にはもう帰途に就く。貴重な一夜のもてなしは蛍烏賊が定番だったけど最近はソーラパネルでチャージが可能になった。新月の翌日の月に名前は無いけれど休日明けの月はやる気に満ちている。

鯉瀧堂(サイトからの投稿)
ゴミ収集の清掃員に獏を雇いました。真面目な仕事ぶりはともかくゴミの量が減ったのには驚きでした。ゴミには沢山の夢が含まれていたのです。魚市場のゴミ収集日に獏は完食でした。回遊魚たちはゆっくり眠りたいという夢を持っていたのです。獏のおかげで魚たちは皿にのって回りながら爆睡しています。

鯉瀧堂(サイトからの投稿)
陽が落ちてから始まるカフェがある。薄暗い店内に用意されたメニューはミルフィーユのみ。しかもオーダーに応じて重ねてくれる。失敗を重ねて食べてしまえばもう前を向ける。剥がして食べるのはマナー違反らしい。でも失敗を1つ1つかみ砕けば脳内にも残らない。遊び心のトッピングは無料サービスだ。

ヒトシ(サイトからの投稿)
ある日、世界中の仕事がなくなった。必要なことは全てコンピュータやロボットがやるので、人間は遊んで暮らせという。いつも遊んで暮らしたいと嘆きながら働いていた人たちは、三日ほど嬉しそうに過ごしたが、月曜日になると遊び方がわからないと途方に暮れて、遊びのノウハウ本を真面目に読み出した。

ヒトシ(サイトからの投稿)
田舎の母からそうめんが届いた。お盆の御供物にと送った葡萄のお返し。一緒に入っていた短い手紙には「花火をする人がいなくなって寂しい」と一言。脳裏に浮かぶ送り火の夜。稲藁を焚いた火の周りには静かに先祖を偲ぶ故郷の親兄弟。とりどりの花火を手にはしゃぎ遊ぶ孫たちの歓声は今年も聞こえない。

朝本箍(サイトからの投稿)
夢の話だ。遊廓に、ゆうという遊女がいた。太夫には程遠いが器量良しで、彼女との遊びで身を持ち崩す者も多い。私もその一人だ。手元には遊色輝く蛋白石がひとつきり。これも明日には質草へ変わる。きっともう来れない、私の言葉にゆうの目は涙を零し、口は妖艶に吊り上がり囁く。夢は、覚めるものよ。

鯉瀧堂(サイトからの投稿)
カレンダーの曜日はどれも整然と並んでいる。でもこの生真面目さが心を病む原因にもなる。惑星の名前を使っている曜日だが選に漏れた天王星や海王星に遊びに来てもらうのはどうだろうか。気持ちを天まで上げる日、海のように心が広くなる日にできるはず。2つの星に「豪遊しませんか」と叫んでみた。

ヒトリデカノン(サイトからの投稿)
ボクの星には時間が存在しない無限部屋がある。遊びから研究まで何にでも利用できる。外から見たらもう何年も部屋にこもっている人もいる。時間を忘れて没頭している人だ。その部屋はエネルギーが充満しやすく、この星の貴重な資源となっている。没頭する人達のおかげで無限部屋に時間が存在しない。

ヒトリデカノン(サイトからの投稿)
ため息をつくと小さな機械が浮遊して付近の空気を吸い込み「逃げた幸せ」を一粒にした。「ため息をつくと幸せが逃げる」長らくこの言葉に人々は苦しめられていた。しかし時代は変わった。いや、時代が追いついたのかもしれない。一日の終わりに深いため息。幸せの含有量が高いものは高値で売れる。

ヒトリデカノン(サイトからの投稿)
要領がいいわけではない。だからこそ忙しく働かなくてすむよう工夫に余念がない。そのかいもあってか、四六時中遊んでいる人と思われるようになった。そこで考えた。残像を作ろうと。いつだって忙しく動いているように見える残像を……。そしたら遊ぶのに忙しくて働かない人と呼ばれるようになった。

月街夢子(サイトからの投稿)
「サンセットクルーズしない?」遊覧船を指差し彼女は言った。乗り込み無言で心地よい風を受けた。「福岡を離れ神戸にきてよかった。じゃなきゃ君に出会えなかった。」「私たちはどこに居たって出会えてたよ、必ず。」彼女の眩しそうに眺める瞳と瞬く睫毛が夕日に照らされていた。永遠に見ていたいな。

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