見出し画像

六月の星々(140字小説コンテスト)応募作 part5

part1 part2 part3 part4 part5 結果速報

月替わりのテーマで開催する140字小説コンテスト。
6月の文字「雨」は6月30日をもって締め切りました!
(part1~のリンクも文頭にありますので、作品の未掲載などがもしありましたらご連絡ください)

【月々の星々賞】
一席、二席、三席の3賞+佳作7編(計10編)
一席、二席、三席の方にまんまる○さんによる活版印刷の特製賞状(手書きのお名前入り)を、一席の方にほしおさんの活版カード5枚セットを贈呈

受賞作の速報はnoteやTwitterでお伝えするほか(7月24日夜を予定)、星々マガジンをフォローいただくとhoshiboshiメンバーの記事とあわせて更新のお知らせが通知されます。

そして7月の文字は「時」です!
応募方法や賞品、各月の受賞作などは下記をご覧ください。

応募作(6月27日〜30日・投稿順)

白虹羅船(サイトからの投稿)
しとしとシトリ。ぽつぽつポツリ。ぴちゃぽちゃポチャリ。ぴっちゃんチャポンと、幾重もの輪が広がる水溜まり。「うちの“坊や”は雨乞いの方が得意だからね。特別仕様のビニル製なのさ。」一文字の物干し竿で頭巾を被った照る照る坊主が揺れる。「あーした天気になぁーれ!」天の邪鬼の僕のおまじない。
(サイトからの投稿)
「大丈夫?傘貸したげよか?」知らないおばさんの大声がした。ずぶ濡れで家路につく中学生を心配したらしい。「大丈夫です!」私は大粒の雨を飲み込みながら笑って見せた。傘なら持っている。もしかしたら壊れているのかもしれない。助けを乞う身体に、私は傘を差し出せない。濁流が水路を溢れ出した。
一葉(サイトからの投稿)
私の小さなお庭にも、雨がしとしと降ってきて、
かわいい小川が出来ました。やっぱり魚はいないけど、
熟した小さな梅の実ひとつ。産毛にふんわり空気をまとい、
きらきら光って流れてきたの。そうっとすくってみたそれは、
6月だけのいい香り。葉っぱかぶって見においで。
あめふりくまのこ会いたいよ。
青木ポンチ(サイトからの投稿)
天井に雨漏りのシミが現れた。建物の構造上、階上の部屋に漏れの原因があるらしい。上の階の住人を訪ねると、ベランダに大量の観葉植物。雨どいに詰まった葉や土が漏れの原因なのは明らかだったが、住人の女性は「いや、うちじゃないし」と取り合わない。その女性は今、僕の妻となり同じ部屋に住んでいる。
青木ポンチ(サイトからの投稿)
そこそこの雨なのに、傘をささない女性がいた。「何で傘をささないの?」と聞いたら、「傘、嫌いだから」と返ってきた。男前だなあ、と思った。というのが心惹かれた理由の一つだったよ、と妻に言ったら、「そんなこと、覚えてない」との返事。今でも、たまにびしょびしょになっていて、驚かされる。
みやふきん(サイトからの投稿)
アパートの駐車場は大雨だとすぐ池になる。するとどこからともなく現れる。人を好きになるコイとか雨から守ってくれるけど人の体に覆いかぶさるカッパとか。だから家にこもる。目を合わせないように、カーテンの隙間から外の様子を伺う。水が引くといつのまにかいなくなっているけど、今日は少し長居。
keidokaii(サイトからの投稿)
学校近くの植込から、姫女苑の淡紫の花弁が微かに覗いていた。梅雨晴れの空には鈍色の雲が重く流れ、もう山の方角を塗り潰している。私は帰りを急がねばならなかったが、途上にて、目についたその小花の色彩に足を停めた。まだ蟬の鳴かない街の夕暮は静閑としている。私はそうして、遠い雨音を聴いた。
keidokaii(サイトからの投稿)
急に雨音が止んだ。隣人のしたしたという足音が妙に大きく聞こえる。私は少し散歩をしても良い気分になったから、薄い上衣を羽織っただけで、部屋着のまま外へ出た。そこへ隣人が扉から顔を覗かせた。私を見付けると呆然とした顔で「雨は何処行ったんですか」と言った。雫が一つ、廊下の手摺に滴った。
keidokaii(サイトからの投稿)
今晩は書物を眺めてみても何か哀しい心持がするものだった。それはつい半時ほど前に吞んだウイスキーがそうさせるのかもしれないし、或いは開け放した窓から這入り込む冷気のせいかもしれない。秋雨の湿気を吸い込んだこの頃の空気は、また少し人の情緒を物憂くする鉄の匂いをはらんでいるものだから。
keidokaii(サイトからの投稿)
一昨日から続く雨が、街中をしっとりと包み込んでいた。まだ人気のない校舎の中、遠く響いてくる金管楽器のロングトーンを聞きながら階段を上り、私はいつもよりずっと早く教室へ着いた。窓を開けると雨の香りがふわりと漂った。私は彼の席にこっそり座る。湿気た机の表面を、静かに、指で撫ぜてみる。
keidokaii(サイトからの投稿)
この雨がいつから降り出したのか定かではないが、少なくとも、澄んだ空は遠い記憶に残るのみだった。往来では、外套の襟を立てて忙しなく歩く姿が朧に滲み出しては灰色に溶けて消える。胡乱げな視線を座り込む私に向けて通り過ぎていく。街に煙る霧のような細雨の下、私はただどこにも行けなくていい。
keidokaii(サイトからの投稿)
救急車に乗ってどこか遠くへ行きたい。暗く静かに雨降る路の、オレンジ色の街灯が、傍に坐る隊員の顔をちらちら照らすその回数を数えるうちついた病院は、酸素濃度がコンマ一パーセントだけ薄れたような息苦しさで、私は大きく、肺に沁みる冷たい消毒液味の深呼吸をする。
みやふきん(サイトからの投稿)
終末の夜。雨があたりを暗くしていた。ノックする音がしてドアを開けると、赤い傘をさした君がいた。久しぶり。迎えに来たよ。灯りのない街を並んで歩き、丘へ向かう。丘の上からは何も見えない。雨でなかったら満天の星空なのに。目を閉じてと君が言う。次の瞬間、唇にぬくもり。今、終わるならいい。
part1 part2 part3 part4 part5 結果速報


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?