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一月の星々(140字小説コンテスト第3期)結果発表

part1 part2 part3 part4 part5 結果発表

月ごとに定められた文字を使った140字小説コンテスト。

一月の文字は「定」。

「月々の星々賞」として一席、二席、三席の3賞+佳作7編(計10編)を選出しました(応募総数555編)。ご応募いただきありがとうございました。

選評(評・ほしおさなえ)とあわせて受賞作は後日にhoshiboshiサイトへも掲載します。
また、優秀作(入選〜予選通過の全作品)は雑誌「星々」(年2回発行)に掲載されます。

一席、二席、三席の方には特製の賞状(ほしおさなえさんによる手書きのお名前入り)を、さらに一席の方には図書カード(1000円分)を贈呈いたします。

二月の星々(今月の文字「分」)も2月28日まで募集中ですので、引き続きのご応募をお待ちしています!
(投稿方法は以下のリンクをご覧ください)

受賞作

入選

酒部朔 @saku_sakabe
獣のうたを作ろう。泥で固まった毛皮の、内側はふわふわの白毛の。遠吠えをして、連鎖した時の震えるほどの嬉しさ。定めなどないスピードで走ろう。雪に足跡をつけよう、途方もない量の足跡を。長い一本の線を刻みつけよう。肉を噛みしめて血を舐めとって、そうやって生きてきたんだ。そういううたを。

富士川三希 @f9bV01jKvyQTpOG
毎週土曜の朝十時、決まって彼は父親と現れる。八番テーブルは定位置。いつものハンバーグ一八〇グラムではなく二四〇グラムを注文した日、バイト仲間と「食べ切れるのか!?」とバックルームで盛り上がったものだ。赤の他人の常連さん。君の成長を楽しみにしているのは、何も家族だけではないんだよ。

リリィ @lily_aoi
それは定期的にやってくる。「もしも」のかたまり、「いいな」のかたまり、漠然とした不安。それらがないまぜになったものだ。今回、私はお風呂の栓を抜き、流れていくお湯にそれを紛れ込ませた。お隣さんは芝生に水をやりながらそれを消している。私は見なかったふりをして、翌日、花の調子を尋ねる。

佳作(7編)

葉山みとと @mitotomapo
直線には果てがないらしい。それなら始まりの点Pになって、定規で照準を合わせれば、教室の壁を貫いて国境もオゾン層も超えちゃって、その先までもどこまでも、跳んで飛んで行けるだろうか。遠く宇宙を思いスラっと線を引く時、私は少しだけ自由になる。

のび。 @meganesense1
無職のお化けに会ったことがある。駅前の蕎麦屋でだ。「周りが定職につけと五月蝿いのです」とお化けが言うので自分も無職だから気持ちが分かると言うとお化けは酒を奢ってくれた。それから何度かその店へ行ったが、再びお化けに会うことはなかった。仕事に就いたのかもしれない。未だ私は無職である。

アスパラ山脈 @yamaasupara
「定って漢字ソンブレロかぶって走っている人に見えない?」
親友のロドリゲスが急に突拍子もないことを言う。大事な時だというのに何を言っているのか?でも言われてみるとだんだんとそう見えてくるから不思議だ。次第にこれがベストに見えてくる
僕らのメキシコ料理屋の名前が「定」に決まった。

ぽそ(サイトからの投稿)
わたしのみぎにはおとうさん。ひだりがわにはおかあさん。ふたりのまんなか、ここがわたしのおきまりのばしょ。あれから二十年。八月の夕方、お墓からの帰り道。東の方から涼しい風、西の空には夕焼け。今日の父は風となり、今日の母は夕焼けとなり…。右に父、左に母。ここがずっと、私の定位置。​​

せらひかり @hswelt
定命の者として、竜を弔う。竜は不死のように長く生き、我々の祖父母、曽祖父母、さらに昔の時代から我々の友だった。首を垂れて土に伏せ、眠ったままもう起きない。様々な過去の記憶情報はこうして消え、百年もすれば伝説となり埋もれる。竜さえ居なければ。この星を侵略した我々の過去は闇に消える。

滴一滴 @teki1teki
祖父が死に、家を解体していると、小さな定礎箱から、ミイラのような手が出てくる。父がそれに向けて何かを呟くと、翌日、食卓に、私を産んだ直後に死んだはずの母が座っている。ついでに両親の愛も復活し、私は無視され始める。だから今、私は父の書斎で小汚い腕を握りしめ、父の愛を返して、と願う。

ikue.m @ikue_mini
明日で世界が終わるらしい。私の座右は「明日世界が終わるとしても、私は今日りんごの木を植える」というルターの言葉だ。定められた運命は変えられない。しかし明日本当に世界が終わるかどうかは、明日にならなければわからない。私はりんごの代わりにぬか床にきゅうりを漬けた。明日の朝食のために。

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