ひっきーのにっき【偏りのある生き方】

それなりに人と上手く関わり
それなりに社会や家庭での役割を全うし
それなりの願望と目標を持ち
それなりの目的を忘れずに生きることで
それなりに充実して幸せを感じる

そんな偏りのない生き方にぼくはいつだって
憧れを抱いている

そしていつだってぼくは偏りのある生き方を
選んでしまっているんだ

幼い頃
冬の日の少し晴れた朝、
外に雪が積もっているのを確認すると
ぼくはソリを引っ張って
近所の空き地へ行った
その空き地は広場のようになっていて
原っぱの丘のようなところを登っていった先に、ブランコなどの遊具があった。
その丘の頂上にソリを置く。
雪が積もっていると、まるでスキー場のように開放感があって、ぼくはこの場所が好きだった
誰一人いない朝の雪景色。
頂上からぼくは胸のドキドキを抑えながら
滑った
ただ、白い世界を感じたくて
ただ、高い場所からのスリルを味わいたくて
無我夢中になりながら
滑っては登り、滑っては登った

その頃のことを大人になったいま思い出すと
ぼくはやっぱり大人になんか、なりたくなかった
あの頃より今の方が、もちろんだけど
ずっと成長していて
色んなことを知り、学んで
たくさんの喜びや悲しみを経験して
実りある時間を過ごしてきたこのカラダがある。

なのにぼくはその成長の中に
あのキラキラとした無限にふくらむ時間を落としてしまった
あの頃の純粋にワクワクする気持ち。
なんの戸惑いもなく、飛び込んでいく大胆さ。
他の誰かが必ず一度は咎めるであろう無鉄砲さ。
罪悪感などひとつもなく、自分が自分であろうとすることにさえもとらわれていない、
あの自由な感覚を。

同じものを取り戻すなんて出来ないに決まっている
でもぼくは もう一度また不器用に
それをつかみ取るために
失望する覚悟でさまよっている

偏りのある生き方を選んでしまっているのだ
その先に輝かしい未来が待っているからではなく
ただそこへ向かっている自分が好きだからという理由だけで。

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