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工芸思考と自粛期間

今年、様々な変化を受容しなくてはいけなかった中で
自粛期間という特異な時間で体験したことは、多くの人にとって意義の大きなことであったと思いますが、私にとっては「工芸思考」という取り組みの転機となったことが大きな変化でした。

「工芸思考」とは、今まで工芸が継承されてくる中で、それぞれの地域、工房に、技術と共に、言葉にはなっていない思想、思考、哲学。そういったモノが受け継がれてきたのではないだろうか。それを掘り起こし、言語化できるものは言語化し、共有していくことが現代の、そしてこれからの社会にとって有意なことではないかという思いで取り組んでいるプロジェクトで、中川木工芸の中川周士さん、開化堂の八木隆裕さんが始められた活動です。

それまで、何人かの工芸の仲間で議論するなかで生まれてきた「工芸思考」という考え方をさらに深め、進めていくためには自分の知っているそれぞれの専門領域である工芸をベースに議論しているのではなく、実際にその地域、工房固有の工芸の思考、思想、哲学を知るために、他の地域の工芸の工房を訪ね、そこで話を聞き、語る場を作っていこう。ということで、実際にはコロナに関係なく、昨年から始まっていたのですが、2020年に入り、新型コロナウィルスの感染拡大によって移動が難しくなり、一方でオンラインでのコミュニケーションや議論というものが急速に普及していき、実際に工房を訪ねることが出来なくても皆でオンライン上で集い議論を深めていこうと、中川周士さんの発案で週一回のペースで数人から多い時には10人を超えるくらいの人数で、様々なテーマを設けて、語り合いました。

工芸思考自体は、まだ何かの「答え」を見出して語る段になっていないと思いますが、この自粛期間中に延べ数十時間かけて語ったことの意味は非常に大きかったかと思います。
一番の教訓は、元も子もない言い方ですが
「やはり議論しているだけでは工芸は分からない。」
ということです。
議論することは大事です。ころまで言葉になっていなかったこと
それを避けて来たことを言葉にしようと足掻くことによって見えてくるものは大きいです。
しかしながら、当たり前のこととして、それだけでは分からない。

その後、自粛期間が終わり、夏からこの第三波といわれる感染拡大の直前まで、工芸思考としては、飛騨、吉野、輪島、有田と実際の工房を訪れる機会が以前より増して加速してきたように思います(私が参加できたのは輪島だけでしたが)。

自分が実際に行って現地で感じることの多さ。
そして、工芸思考のメンバーが現地を訪れて感じたことをベースに、現地の工芸に携わる方々と、各地の工房からライブで語られる話を聞いていると、工芸にとってフィジカルに現地で得る経験の意味と大きさをあらためて感じました。

これから工芸が、社会に果たしていく可能性を考えるうえで
自粛期間に「工芸思考」で語り合ったこと。
そして、そこでの経験から、あらためて全国の工房を訪ね歩くことの価値を再認識させられ、工芸思考の活動が加速していっていることは、とても楽しみに感じます。

ぜひ工芸思考の活動をフォローください。
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