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もう楽しくなくなった。

ある国立大学医学部の医学生。A子さん。
医学部の馬術部で馬術の向上に励んでいらっしゃいます。

「馬がわからなくなっちゃって。」、開口一番おっしゃいました。
馬術がもう「楽しくない」のだそうです。

きっと、楽しくなくなったのは、馬術だけではないでしょう。

毎日、馬が身近にいるのに、その馬に向き合えず、わざわざ地方から、葉山にいらっしゃるのですから。もう何もかも楽しくないのかもしれません。

お話しをうかがって、思い当たるふしもありましたが、医学生を相手に、体のことを言っても、それは「釈迦に説法」なので控えました。

心と身体が離れるということはいつでも、誰にでも普通に起こることです。
心と体が離れたとき、再び調和を取り戻すために、難しい理論も道具もいりません。

思考が静かになる呼吸。
目と顔の表情が穏やかになる呼吸。
身体が温かくなる呼吸。

「呼吸」だけでおそらく、身も心も50%は落ち着きます。
人の身体はすごいんです。

残りの半分は?

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タロウさんとルーカスが手伝ってくれます。

タロウさんとルーカスと一緒に二日を過ごしたA子さん。
どのような気づきがあったのでしょうか。

静かにお話ししてくださいました。

それは、自分の完璧主義のバランスでした。
いつも真剣・全力で、勉強にも馬術にも向き合ってきた。
全力を「出そうとしない姿勢」はあり得ない。

でも、それはバランスがとれていて、オンとオフがあった。だから馬術にも勉強にも全力出せたし、充実もしていた。

ところが、いつの頃からか、心も身体もオフにならなくなってしまった。
スイッチオフにすることが恐くてたまらない。
そして無意識に、馬も含めて他者に対しても「完璧」を求めるようになり、それが叶わぬ時、「いらだち」や「焦り」ばかり感じるようになっていた。

原因は、
尊敬し、信頼していた先輩が臨床研修の期間中に、自ら命を断ったこと。
いつも目標にしていた先輩が、突然、消えてしまった。

その悲しみや落胆、喪失感を吹き消すために、休むことなく「全力」を出し続けて、疲れ果てていることに気づかなくなっていた。

たぶん、先輩も研修中に「全力」を出し続け、こんな感じで疲れ果てて、生きる力がなくなったところに魔が差したのかな。

「悲しみや苦しみは、忘れようとしたり、乗り越えようとするのではなく、静かに見つめることが大切な気がしました。そしてこれからは、『疲れたから休養する』のではなく、『疲れる前に休養する』ことにしました。」

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タロウさん:「息を吸って吐いて、オン・オフだよ。疲れたら、何か食べるんだよ~。」

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