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無頼魔拳伝

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記事一覧

~四の段 三人、獅子奮迅の事~(上?)

 ジ・ジージルールは見ていた。観ていた。視ていた。己が求める少女を。

 足りない、足りない、まだ足りない。果実が熟すにはまだ時間がかかる。

 なれば、待とう。まだ待とう。収穫のその時を。

 ……いや、ただ待つのではいけない。

 上手く、旨く、育てるのだ。最高の味とするために……

 三人の旅は続く。

 目指すは次なる街、ナハンナ。ネゴスとは異なり、領主はいない。

 だが管理する者がいな

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無頼魔拳伝 第三章

~三の段 三人、面倒事に関わるの事~

 ネゴスは小さな村である。人口で言えば二百前後。にもかかわらず独立した領地であり、であるからには領主がいる。動乱前は他の領地の一部であり、代官が治めているありふれた村であった。

 それが動乱で功を立てた代官に褒美として割譲されたのだ。代官は領主となり、ネゴス卿となったのである。

「こんにちは」

「ほう。こんにちは。お前さん方、見ない顔だねえ、どちら

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無頼魔拳伝 第二章

~二の段 三人、連れ立つの事~

「しかし、なぜ枷を外さないのだ? 正直、見ていて痛々しいぞ」
「あー、やっぱり気になる? でも、外せないのよね、これ。鍵が無いし」
 聞けば、枷を外す事など想定されておらず、鍵は処分されてしまったという。ならば、クロウエが斬れば良いではないか、そう言うアスィーラに苦りきった顔でクロウエが答える。
 「技術的に言やぁ、斬れなかねえよ。だが、俺にゃ出来ねえんだ」
 竜

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無頼魔拳伝 第一章

~一の段 三人、出会うの事~

「ちんたら歩いてんじゃねェ。日が暮れっちまうぞ」
 野太い声の後に高い声が言い返しているようだ。女性だろうか、内容までは聞こえない。別段、興味があった訳ではないが行く当てもない。なんとなく声の方へと足が向いた。
「オラ、莫迦言ってねぇで歩けや」
 いらだった様子の男が女性──いや、少女か──に軽く蹴りをくれる。
 見れば少女の手には木枠の手枷、足には鉄球の付いた足枷

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無頼魔拳伝

「破門じゃ」
「は?」
 その一言が終わりであり、始まりであった。

            ~序の段一~ 

 ふっ、しっ。 深山に鋭い呼気が響く。
 どれほどの時間そうしているだろうか、額には玉の汗が浮かび、身を動かすたびに飛沫となって散ってゆく。
 突き、蹴り、捌き、連綿と続く動きはまるで舞のごとく。一つ一つの動作を骨身に刻み込むように繰り返し繰り返し、繰り返す。
 いつしか時を忘れ疲れを

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