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怒りのレプタイルズ

久しぶりに、胃の芯にズシンと来るというか、奥歯がかちかちと音を立てて震えるような怒りを体験した。

ある学生が神妙な顔つきで相談にやって来たのが事の発端である。

(といっても怒りは学生にではなく情報の発信者に対してなので、勘違いしてやらないでください)

その学生の相談はこうだった。
「爬虫類を買うのに良い店悪い店の見分け方はありますか? なんかネットで、イベントに出ている店は爬虫類を虐待しているって聞いたんですけど…」
と。

もちろん間違いである。かなり腹立たしいことであるが、ここで先に最近の20代前後のネット事情について説明せねばなるまい。ネットで情報集めと聞くと眉をひそめる人も多いだろう。しかし現実はそういう時代である。何も知らなければ本を読まずにネットを開く。

なので、そこから正しい情報の引き方を教えるのが年上の役割と言える。逆にあまりにも年が離れていると、年下の方がうまくネットを使えたりする。これは余談。

ましてやこの学生の場合は入学するまで爬虫類の「は」の字も知らなかったのだから、ネットの情報をたっぷり浴びていても仕方がない。

(ということで繰り返しになりますが学生を責めるためにこれを書いているのではありません)

さて、問題はここから5段落戻って(↑)学生の見聞きした内容である。

これを聞いた時点で「はあ!?」と言いかけた。多少顔には出ていたかも知れない。心の中には文章の初めに書いた怒りが渦巻いた。まあ学生に怒りをぶつけても意味がないので、詳しく話を聞いてみる。

聞き出した話をまとめると、今現在こういう情報が目立っているようである。
・爬虫類の展示即売会が批判されている
・爬虫類の移動手段・販売手段が虐待だと言われている
・生き物に値段をつけて売ることが悪だという風潮になっている
以上、これが学生の頭の中にあった情報である。

「ブリーダーやショップで爬虫類を買っちゃいけないとも書いてました。じゃあどこで買ったらいいんですか?」と学生は困り顔だ。

ああ、影響はここまで来たか。こうなった原因は私も知っている。最近「とある無知な権力者」がSNSに投稿した記事がきっかけだ。それが誰かはここでは書かないが、その投稿が一般の人の間に上のような誤解を蔓延させる原因になっていると私は考えている。

(無知なふりをした権力者かも知れないが、こちらに与えた影響に変わりはない)

まずは正気に戻らねば。手始めに学生には、上記の三点の情報は全て間違った認識から生まれていることを、理由も含めて話して聞かせた。理由は長くなるので割愛する。

もちろん私も、同業者の中にはイベント否定派もいることは承知している。しかしそういった中の人が唱える異論と、今回の無知な決めつけとは全く別のものだと思う。だから多様性うんぬんではなく「間違っている」と言った。

そして次に学生には、その情報をすべて逆にたどり、その途中で上がってきた人たちが発している情報は一切信じるな(と言いたいところだが、立場上それは難しいので)…ではなく、発している情報を信じていいかどうか必ず私に確認しろ、と指示した。まあ、結果は同じことだが(笑)。

事実でないことで批判されるのは大変腹立たしいことだ。一般の人から見たら私たちは特異なことをやっているから、いったん矢面に立つとその風当たりはなおさら強くなる。とはいえ、それはある意味仕方のないことだとこちらも割り切っているから、その程度で騒動が深層まで及ぶことはあまりない。

しかし、権力を持つ人物が相手になってしまった場合は話が別である。どれだけ無知であろうが主観的であろうが、国政を動かせる力のある人物がひとたび動こうものなら、ルールはいくらでも変えられてしまう。

正義は正しさではない。権力のある側が振りかざしたものが正義になるだけである。今、私たちは振りかざされる側になろうとしている。

それにどう対応していくか。戦うか、ではないと思う。対応していくか、だ。それぞれに考えがあると思う。対応の仕方こそ多様性である。皆それぞれのやり方で自らの立場、肩書き、足場を固めて、自分たちの業界を維持していけるように尽力している。学生にとっては少し先のことになるかもしれないが、いずれその立場になったら今日の話を思い出してほしい。

もっと単純な話でいうと、先人たちは「犬猫と爬虫類は別である」という事実を必死に守り伝えようとしてきた。生き物として違うのだから、最適な扱い方が違うのは当たり前の話である。悲しいかな、今回の件でその努力は台無しにされかけたと言っていい。無関係な人間の主観によって。

そういった事情も相まって、目の前に間違った情報をつかまされた学生が出てきたものだから、お前のせいでこの学生が、というと言葉が悪いので先に撤回しておくが、むちゃくちゃ腹が立ったのだ。

これに対し義憤に駆られて凸する必要まではないと思うが、皆さんはどう感じただろうか。

(5/27タイトルとサムネを変更)


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運営はオフィスティーズガーデンの川中です。毎日一回くらいは生き物の話題が出る世の中になればいいなと思っています。YouTubeチャンネルはこちら https://www.youtube.com/user/TakeshiKawanaka
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