アフリカのスーパーボウフラと人間カップラーメン

 むしマガ読者はすでにご存知のように、この世にはクマムシをはじめ、カラカラに乾燥しても死ぬことなく生存できる生物がいる。

 単細胞生物の細菌では乾燥耐性をもつものが多いが、クマムシのように神経系や消化器系などの高度に発達した生命システムをもつ多細胞の動物でも高い乾燥耐性があるという事実は、驚きである。

 乾燥したクマムシの体では当然ながら神経も筋肉も乾燥しているのだ。水が与えられるとクマムシは再び動き出す。つまり、これらの組織や器官も機能を保ったままカラカラになれるということだ。

 クマムシなどが用いているシステムを導入することで、同じ動物である家畜やヒトも生きたままカラカラに乾かすことができるかもしれない。日清食品創業者の安藤百福は「人類は麺類」と言ったが、人間カップラーメンだってつくれるかもしれないのだ。人類に不可能はない。

 僕も含め、この研究分野に関わる研究者らは乾燥耐性の謎を追っている。今回は、僕が大学院生時代に一年半在籍していた農業生物資源研究所のネムリユスリカ研究室の研究成果を紹介したい。

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