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【科学•宇宙】ブラックホールとスパゲティ

こんにちはマスター、蓬莱です。

先日の記事「ウサギとカメと相対性理論」にて、光速度不変の法則から時間と空間は相対的に歪む事を扱い、スカイツリーと地上とで重力が起こす高低差による「時空の歪み」が観測され、アインシュタインの一般製相対性理論で指摘された、重力によって時空が歪められる事実が確かめられた話をしました。

ニュートンがケプラーの法則に運動方程式を適用することで万有引力の法則が成立することを発見したのは1665年、今から350年以上昔になりますが、そこから今に至っても「重力というものが本当は何なのか?」は解明されていないのです。

ただ、人類によって積み重ねられた天体観測及び物理現象、そして、それぞれの現象を解く方程式などを使って、アインシュタインの一般相対性理論を元に「どうも重力とは時間と空間の歪みらしい」ということが分かって来ました。

それは、よく張ったトランポリンのシートの上にボウリングの球を置いて沈み込むような感じで表現でき、その沈み込みが重力による時空の歪みに例えられて表現されます。

そして、そこに置いたボウリングの球どうしが引き寄せられられるのも、その沈み込みによるものであると。

ボウリングの球よりも大きな風船を置いても引き寄せる力は弱過ぎて近寄りませんよね。つまり、時空の歪みは大きさも重さも関係しているという説明がそこでなされます。

天体に引き寄せられる力、つまり、万有引力が作用する時空中の領域を「重力場」といいます。その重力場と万有引力の関係をアインシュタインは方程式化する事に成功し、それは「アインシュタイン方程式」と呼ばれています。

1916年にアインシュタインが提唱した一般相対性理論の基本方程式「アインシュタイン方程式」

このアインシュタイン方程式は万有引力の法則を強い重力場に対しても適用できるようにしたもので、中性子星やブラックホールなどの高密度及び大質量天体や、宇宙全体の幾何学なども扱えるようにした凄い方程式なんです。

この方程式、星のような巨大な物質やエネルギーを代入すれば、その物質の周囲の時空がどういう風に曲がっているのかを読み取ることができるという代物で、天体の観測や、そこに宇宙船を飛ばしたらどのような影響力があるのかまで推測できるスグレモノです。

そのアインシュタイン方程式の一部を厳密解として解き明かして、球状の天体の質量分布と重力場との関係に特化させたのが「シュワルツシルト解」といいます。

アインシュタイン方程式の一部を球状の天体の質量分布と重力場との関係に特化させて解いたシュワルツシルト解

その「シュワルツシルト解」を突き詰めると、惑星の質量とその中心から受ける重力場の関係の中で、光すら脱出できないほどの時空の歪みが計算上現れることがわかりました。

計算上、光も脱出できないほどの時空の曲率、つまり歪みをもつ特殊な天体、これは「ブラックホール」と名付けられました。

今回は、この、アインシュタイン方程式とシュワルツシルト解の計算上に現れた、でも、その時代の物理学者はアインシュタインも含め、沢山の人がそれは計算上の存在であり実在するわけが無いと思っていた「ブラックホール」のお話です。

太陽のような光り輝く恒星は内部で核融合反応を起こして熱や光を放出しているのですが、やがて、核融合の燃料が少なくなっていくと少しずつ冷えていき、ついには燃料が尽きて核融合が終わってしまいます。

そうすると、核反応によって外に広がるエネルギーと恒星自身の巨大な質量から来る重力とのバランスが崩れ、巨大な重力で星は中心に集まっていき、重力崩壊を起こします。

その際に激しいガンマ線が原子核に作用して、原子核と電子を基軸にした通常の物質はその状況を維持できなくなり、その星は収縮、地球上では観測できないほどの高密度に物質がなっていく「フェルミ縮退」が起こり、高密度で重たい星、白色矮星になります。

でも、もっと質量が巨大でもっと縮退が進むと更に物質が高密度になり、ブラックホールになると言われています。

ところで、先程紹介した「シュワルツシルト解」ですが、この方程式において重力が強すぎて光の速度ですら脱出できない星の半径が導き出せますが、それが、ブラックホールの半径になります。この、調べたい星の質量を入れるとブラックホールになった場合、半径いくらになるかを表した方程式が「シュワルツシルト半径」です。

シュワルツシルト解によって導き出されるブラックホールの事実上の大きさともいえる指標「シュワルツシルト半径」

私達の太陽も地球も質量が足りない為にブラックホールにはなりませんが、この方程式に、はめ込むと地球の質量でブラックホールを作った場合は半径が9ミリメートルになるそうですよ。

また、このブラックホール、アインシュタインの時代では存在しないであろうと言われていましたが、天体観測のお陰で、沢山実在していることが確認されています。今では銀河系の内部だけで1千万ものブラックホールがあるだろうと言われています。

また、2019年の4月10日に「イベント・ホライズン・テレスコープ」によって世界中の電波望遠鏡をつなぎ合わせてブラックホールの撮影に成功しました。

このブラックホールは銀河M87の中心にあり、地球から5500万光年の距離で、その質量は太陽の65億倍に及ぶそうです。

ブラックホールは光ですら飲み込むので、真っ黒で、姿が見えない筈なんですが、撮影されたブラックホールはオレンジの光を外側にまとった真っ黒な球として写っています。

世界で初めて撮影に成功したブラックホールの姿

このオレンジの外周の光は降着円盤といい、ブラックホールに星が吸い込まれていく過程で、その物凄い重力によって生まれる潮汐力によって星が引き裂かれ、その崩壊の際の乱流によって物質が擦れたり跳ね返る事で、摩擦加熱が起こり、そこで放出されたエネルギーが光と熱を伴ってブラックホールの周囲を周り、それがブラックホールの重力によって歪められた形で光っているのです。その温度は数百万度にも達することがあるそうですよ。

ちなみに、太陽の表面は6000℃なので、降着円盤よりもずっと温度が低いのです。

このブラックホールと降着円盤はNASAでもシミュレートの動画が作られており、2019年に撮影された本物のブラックホールと、ほぼ同じ特徴でした。

NASAがブラックホールの見え方をシミュレートしていたもの

また、ブラックホールではあまりに重力の変化が極端なために、足先からブラックホールの中心に向かって落ちていけば、足先と頭のてっぺんの重力差も物凄く大きくなっていきます。

その差は何十倍から何百倍、更にもっと開いていき、その潮汐力によって素粒子レベルまで縦長に引き伸ばされて、まるで一本のスパゲティみたいになってしまうというシミュレート結果もあるそうです。この現象を「スパゲティ化現象」、または「ヌードル効果」と呼ぶそうです。

では、ブラックホールの中に落ち切ってしまうとどうなるのか?

実は光も飲み込んでしまうという事は、時間の指標となる、そのものが飲み込まれてしまうわけで、限りなく時間がゼロに近づいていき、やがては止まってしまうと言われています。

そうなると観測も不可能であり時間経過も無くなってしまうので、現在の物理学では計算は不可能であり、今の宇宙で通じている原因と結果の法則、因果律も通じない、全くわからないという点がそこにあると言われています。

これを特異点というそうですが、その特異点では計り知れない潮汐力がランダムに働いており、とても人間は生きていけない世界だろうと言われています。

まあ、その前にスパゲッティみたいになってしまえば到底生きていけないでしょうね。

ブラックホールの世界は計算できる範囲でも私達の常識が覆るような事が沢山あって、まだまだ謎に満ちていますが、これから少しずつ明らかになっていくようですね。

いろいろしゅごいしこわい

今回はウィキペディアの「ブラックホール」「降着円盤」「シュワルツシルト解」「スパゲティ化現象」「アインシュタイン方程式」「重力崩壊」「フェルミ縮退」「白色矮星」などの項目からお話しました。

蓬莱軒では、知的好奇心を刺激する話題を毎週動画でお届けしていますので、YouTubeチャンネルにもよかったら遊びに来てくださいねマスター。

それではまた、らいら〜い🖐

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