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築70年以上の古民家をリノベ!十和田市のCafe Happy TREE

DJ仲間の飯田雄治さん(と言っても、エセDJの私と違い、飯田さんは大塚広子さんらと共演歴もある、ルーツレゲエDJのベテランですが)が今年開店したカフェCafe Happy TREEに行って来ました。

今まで飯田さんとはDJイベントでガンガン鳴る音楽の中、声を張り上げての会話しかしたことがなかったので(笑)、一度ゆっくりお話したいなと思っていました。

Facebook( https://www.facebook.com/cafe.happytree )のページにアップしている写真を見ていたら薄暗い感じのお店なのかなと思っていたのですが、実際にうかがってみて、とても驚きました!

静かで明るくて、そしてとっても落ち着く、実にいい感じのお店なのでした!他のお客さんがいなくなった頃を見計らって、雄治さんに開店までのお話をお訊きしたのですが、それがむっちゃ面白かったのでちょっとご紹介します♪

雄治さん(以下U)「このお店、改装するのにむっちゃ苦労しましたよ…」
私「そうみたいですね。FBの投稿よく見てました。どれくらいかかったんっですか?」
U「4ヶ月くらいですね。でも本当に大変で、2月は寒くて時々サボっちゃいました(笑)。十和田は雪が降らないぶん寒くて、中で暖房ガンガンつけてるのに寒くて蛇口が凍ったりして。ところで、ここは築70年以上の古い民家なんですよ」
私「えっ、そんなに古いんですか? って言うか民家? 店内すごくおしゃれで、とてもそうは見えませんけど・・・」

U「ここを改装する前に、建築関係の知り合いに見積もりに来てもらったんですけど、むちゃくちゃボロボロで、『いやー、ユージさん、ここは無理っすよ』って言われたんですよ(笑)」
私「ごく単純な疑問なんですが、改装にはいくらくらいかかったんですか?」
U「うーん、いくらくらいかなあ・・・。その知り合いの言葉を聴いて、逆にできるだけ自分で、お金のかからないようにやろうと思ったんですよね。廃材を調達して作ったり・・・。トータルで30万くらいかなあ」
私「えっ、30万だけ!? それはすごい!」
U「一番お金がかかったのは、床(注:2つ上の写真を参照ください)にこの木の板を敷いたのですね。知り合いの業者さんにやってもらったのでここだけはお金かかりましたが、あとは可能な限り切り詰めました」

U「改装で最初に苦労したのは、壁ですね。壁の中には補強のための斜交いの柱が入ってるもんだと思ったら、こんなの(注:下の写真を参照ください)しかなくて。これのせいで、壁を崩しすぎると重さに耐え切れなくて建物が壊れちゃうことが判って。なので、どこまで崩したらいいのか、業者さんに見て教えてもらって」

U「あとは水周りですね。もともとはお寿司屋さんもやってたところみたいなんですけど、最初はキッチンのほうの設備は保健所に営業許可もらえる条件を満たしていなくて。シンクはスタッフが手を洗うもの、食材を洗うもの、お皿を洗うものの3つなくちゃダメなんです。でも2つしかなくて。保健所とのやりとりはいろいろ大変でした」
私「あ、3つも要るんですねー。室内の手洗いも面白いですね!」

U「これもね(笑)、保健所から指導が入るわけですよ。衛生上の問題があるから、お客さんが手を洗えるところがないとダメだと。それでペンキ塗りに使ってた缶をそのままくっつけてみました。ちゃんと排水管を後ろに通して、排水されるようにしています」
私「ペンキが垂れた跡が残っているのがかえってポップですよね!」
U「トイレもこれと同じようにしています。トイレも保健所から指導が入るんですよ。手洗い場所つけろと。でもトイレもむちゃくちゃ狭いので。最初は中に電灯もぶら下げてたんですが、頭がぶつかっちゃうくらいなので、自動でついたり消えたりするようにしたんです」

U「あとは・・・電圧の件もあって。古い家だったので、アンペアが全然なくて。知り合いに頼んで何とか10アンペアだけ上げてもらったんですけど、時々コーヒーの豆を挽くマシンの電源入れるだけでブレーカー落ちたりしますね(苦笑)。でも、そういう時も『元・古民家』だと、すいません、古いんでってことでお客さんが許してくれるのは助かってます」
私「他に、元が古民家ってことで良かったことってありますか?」
U「昔、この辺に住んでいた人が『ええ~、あの家がこんなになったのねー』って感じで結構来てくれるんですよ。それに、そういう年代の人たちってコーヒーが好きなんですよね。すごく喜んでくれるんです。この辺は例えば隣の家とかもとても面白い建物で、自分が買い取りたいくらいなんですが、古くてもいい建物が多いので、この店の取り組みを知って、いろいろやってみる人が増えればいいなとも思っています」

私「内装は、設計図とか書いたんですか?」
U「いえ、とにかくサイズを測って、切って、取り付けて・・・の繰り返しですよ。いろいろ試行錯誤があって。例えば、このカウンターとか、最初はカウンターにするつもりじゃなかったんです」
私「あ、そうなんですか!でもいい感じですよね。お店も、すごく広々してて・・・」
U「これもまさか自分でカウンター作るなんて思ってなかったですけどね(笑)。どうしてそうなったかと言うと、最初は店内にもうひとつテーブルを置こうと考えてたんですよ。でも、入り口が狭いでしょう、うちは」

私「これが、とてもいい味になってると思うんですけど・・・。それに、車の行き来が激しい通りに面している割にはすごく静かですよね」
U「でも、そのぶん店内に入るところも狭いので、テーブルが目の前にあると圧迫感があるなーとか、いろいろ検討して、テーブルもうひとつ置くのはやめたんです。じゃあ、カウンターが必要ってことになって(苦笑)」
私「逆に良かったんじゃないですか? カウンター、すごくいい感じだと思います。どうしてカウンターは嫌だったんですか?」
U「カウンターと言うより、背の高いイスが嫌だったんですよ。家族連れが来て、子どもと並んで座れるようなお店にしたかったんです。今オラシオさんが座っているテーブルも、奥のテーブルも、こういう低い木の長イスにしてますよね」
私「なるほど!」
U「あとは、乳母車押して入ってくるお子さん連れが多いので、いきなりテーブルがあったらいろいろ大変なんですよ」

私「さっき、若い女の子たちも来ていましたけど、お客さんの入りはどうですか?」
U「おかげさまで、開店してもう少しで2ヶ月くらいなんですけど、ほんと休むヒマが全くないくらい来て下さっています。実は今日も、オラシオ君が来るっていう連絡があって『でも混んでて、ろくに相手できないんじゃないか』って思ってたくらいで。こんなにのんびりした時間があるのは珍しいです(笑)」
私「今後、お店のほうでやろうとしていることはありますか?」
U「まず、2階に入れるようにして、服とか売るコーナーにしようかなと思っています」

私「おっ、昔の家の階段ですね! おお、上もいい感じですね! これは楽しみです」
U「上にも畳敷きの部屋があるんです。ただ、階段を出すとなると、隠れた人気のここ(注:下の写真を参照ください)の席がなくなっちゃうので、ちょっともったいないなーとも思ってるんですよね(苦笑)」

私「この席、いいなーと僕も思っていました」
U「いろんな年代の、いろんなお客さんが来て下さるんですが、午後のゆったりした時間に本を読みに来たりする人がお気に入りにしている席です。隠れ家っぽいですよね。こうやって机の部分を上げられるように作りました」
私「これもユージさんが自分で考えて作ったんですね。すごいなー」
U「あとは、奥のテーブルのところは時々ブースにしたりして、DJもできるようにしようと思っています」

U「開店日については、ちょっと面白い話があって。ここの改装中に、古民家をリノヴェーションしているらしいってことでHot Pepperの人が取材に来てくれたんですよ。その後もやりとりしてたんですけど『いつ開店するんですか?』って訊かれて。開店日とか特に決まってなくて、のんびり改装して行くつもりだったんですけど、急遽Hot Pepperの発行日に合わせて開店することにしたんです。実はその段階では保健所からまだ営業許可をもらってなくて、ほんとに開店できるか怪しかったんですけどね(笑)。この写真も、カウンターの中はまだ何もないんですよ」
私「すごいですねー。僕らのライター仕事の締め切りみたいなもんですね」

ユージさんのお話、いろいろ面白いのですが、何が面白いかって、いったんは専門家の人に匙を投げられたボロボロの古民家っていうマイナスの条件を活かして、逆に魅力あるお店にしていることですね。上で書いた以外にもいろんな工夫がしてあって「古民家だった面影が残っているところ」と「古民家だったのにグッド・アイディアでこんなに変わった!」というところの両方とも見ていて面白いんですよ。冗談抜きで、このお店は「古いもの」をポップに引き継いで行くということの格好の例になっていると思います。新聞とか取材すればいいんじゃないかなー。

あと、このお店の良いところは、メニューが美味しいってことですね。飲食店の原点ですよね。そこが良くなければ、魅力的なカフェにはならないわけで。中でも、他のところではなかなか飲めないキューバスタイルのコーヒーは苦味→甘味への味のグラデーションが楽しめる、素晴らしい逸品です。ヴォリュームたっぷりのベーグルサンド(注:表紙の写真を参照ください)や、ペーパードリップとそうじゃないやり方のどちらかを選ばせてくれるコーヒーなどなど、どれもとてもこだわりがあるものばかり。コーヒーカップもオシャレです。また、メニューを見せてくれる時のユージさんの丁寧な説明がまた、素晴らしいです。

お店を出る時、出口までユージさんが送ってくださったんですが、すぐ隣のお店について紹介してくれたり、通りの向かい側の新しくできたお守り屋について説明してくれたり。十和田も青い森鉄道の三沢駅からの鉄道路線がなくなって久しく、衰退を懸念されていますが、ユージさんの口ぶりには「まだまだ面白い人やお店が、十和田にはあります」というエネルギーがあふれていました。

ユージさんが「古民家を改修しようと頑張ってるってことで、商店街の周りの人たちがかなり協力してくれたんです」と言ってました。何がきっかけになるのかはわかりませんが、地方都市の場合、協力し合える何かがあるとグッと強い連帯感でつながったりすることもあるんだろうな、とその話を聴いて強く感じました。ユージさんの人柄もあるんでしょうが、地方で何か新しくやっていく時のヒントのようなものがあるのではないかと思います。

↑作業するユージさん

十和田市に行ったら、ぜひCafe Happy TREEに行ってみましょう!美味しいコーヒーとベーグルサンド、ちょっとした隠れ家に来たような落ち着いた時間をお楽しみください。

〒034-0011 青森県十和田市稲生町14-44
Cafe HappyTREE


車以外で十和田に行かれる場合は、青い森鉄道の青森、野辺地、三沢、八戸の各駅から十和田市行きのバスが出ています。最寄のバス停は「官庁街通り」ですが、十和田中央で降りてすぐの市民交流プラザ「トワーレ」をのぞいてから行くのも良いかと。

十和田観光電鉄バスの時刻表ページ

P.S.
最後に。ユージさんのお話によると、映画監督のデイヴィッド・リンチがコーヒー豆のブランドを始めたみたいです(笑)。で、直輸入だとさすがに高い、と。日本で輸入しているお店があれば、そこから買ってコーヒー出せたらなあと仰ってるのですが、もし取り扱いしている日本のショップをご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひご連絡ください!

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