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元起業家、元ベンチャーキャピタリストが、評価なし組織で働いて感じたデメリット&メリット

こんにちは、Ubie Discoveryへ2021年4月に入社したHookです。
意図的に人事評価制度を作らないと決めた、Ubie Discovery(※)で実際に3ヶ月働いて感じた、デメリット&メリットをお伝えします。
(※ Ubieは事業フェーズによって組織を分けていて、Ubie Discoveryは0→10までを担う組織です)

評価なし組織ってどういうこと?

Ubie Discoveryには人事評価がありません。「スタートアップなのでまだ評価制度を作れていない」ということではなく、「評価はしない」と方針を決めています。評価の難しさや評価にかかる過大なコストに正面から取り組むより、「評価せずに組織拡大するにはどうしたらいいか」を考えて組織設計がされています。

弊社カルチャー開発担当のsonopyが書いた「人事評価は不毛?〜評価なしで100名の壁を超えたUbieの事例〜」がわかりやすいでので、詳細はそちらの記事をご覧いただきたいですが、概要は以下です。

概要
個人評価はしない。評価制度もない
等級や役職がない。共同代表の2名以外は全員(前職CTOも外コンパートナーもGoogle統括本部長も)役職なくフラット。「等級が上がる」といった概念もない
目標はOKRを運用。当然、OKRの結果は評価に使わない
・金銭的報酬は、全社の事業進捗と連動

起業で感じた評価制度の難しさ

これまで、人事評価をされる側・する側・作る側等、様々な立場で向き合ってきましたが、これがベストな制度だというものに出会ったことはありませんでした。

その経験の中でも、バングラデシュで起業した時が、人生で最も人事評価制度に苦しめられた時期だったと思います。それは、事業が急成長し、組織も急拡大する中で、拡張性を担保しながら人事評価制度をどう作るのかという苦しみでした。

日本円換算で累計1.2億円ほど調達し、バングラデシュ版リクルートのゼクシィモデルとリクナビモデルで、プロダクトマーケットフィットした時の経験です。

組織を急拡大させないと引き合いに対応が出来なかったため、組織を10人→30人→50人と急拡大させていきました。30人を超えたあたりで、社員から「この会社は人事評価制度はないのか」「なぜ、自分の方が成果を出しているのに、他メンバーの給与が私よりも高いのか」という疑問が噴出してきました。

離職する方もでてきたため、急遽実績に応じた人事評価制度を作りました。結論、これは大失敗でした。営業職は実績がわかりやすいのでこの制度にフィットしたのですが、バックオフィス等の数値目標が置きづらい部署には全くフィットせず、すぐに作り直すことになりました。

次に、各部署ごとにコンピテンシー(ハイパフォーマーに共通して見られる行動特性)を定めて、それに基づく人事評価制度で運用をしはじめました。これは、一定期間上手くいき、社員からの不平不満もおさまったかのように見えました。ただ、これもベストな制度ではありませんでした。事業の急成長に伴い、組織変更が不可避になったのですが、定めていたコンピテンシーが実情に合わなくなり、作成が追いつかず形骸化が起きてしまったためです。

事業が急成長し、組織も急拡大していく中で、その変化も折り込みながら人事評価制度をどう作るのかということは、私にとっては難易度が高く、コストがかかりすぎるものでした。

ベンチャーキャピタルで感じた評価制度の難しさ

バングラデシュの治安の状況が悪化し、日本帰国後に独立系のベンチャーキャピタルで投資担当をすることになったのですが、そこで自分と同じような課題にぶち当たるスタートアップを数多く見てきました。

まず、多くの場合は採用で苦戦します。人事評価制度を0から作った経験がある方の絶対数が少なく、見つけたとしても、自社に合うような形で再現性をもちながら制度を作れるのかとなると、絶望的な確率です。

また、外注するという選択肢もありますが、これもスタートアップの実情とあまり合っていませんでした。トップティアの人事コンサルは費用が高くスタートアップのコスト感とは合っておらず、費用が安い会社の場合は汎用的な型を使い回していてカルチャーと合わないケースが多い印象でした。

特に、事業変化が激しい0→10フェーズの場合、上手くいっているスタートアップほど3ヶ月後に事業や組織が同じ形をしているケースが少なく、作り込んでも人事評価制度が数ヶ月後には使えなくなり、かけたコストに対してリターンが見合わないケースが散見されました。

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評価なし組織のメリット

評価制度を意図的に作らず、別の仕組みで運用している組織はないかと考えていたところ出会ったのが、Ubie Discoveryです。個人的には意図的に評価制度を作らないことは画期的だと感じています。

私が入社して3ヶ月経ち、感じた具体的なメリットは以下です。

・全社最適で動きやすい
私の入社直後の役割は、toB事業である病院向けカスタマーサクセスの型化でしたが、全社最適を考えてtoC事業のマーケティングのてこ入れに、3ヶ月で大きく舵をきりました。

これは、評価を気にする必要がないからこそ出来た動きです。役割で評価が決まっている場合は、toBのカスタマーサクセスの真逆の役割である、toCのマーケティングに関与するという、個別役割を一旦棚上げして全社最適で考える、この動き方はしづらかったと思います。

・コトに集中できる
3ヶ月間働いてみて、ヒト(評価すること/されること)に使う時間はほぼゼロで、その時間のほとんどを、コト(事業成長)に使うことができました。

これまで所属してきた組織ですと、四半期に1回評価がある場合が多く、大体数日から1週間は評価記入とその後の1on1に時間を割かれていたと思います。それが丸々なくなることで、ストレスがかなり軽減され、元々やりたかったコトに向き合うことができていると感じています。

・Willで仕事ができる
評価がある組織ですと、自分のWillよりも評価されることを優先して行ってしまうことも多いかと思います。これは自分の弱さでもあるのですが、評価されること自体は嬉しいので、過去にWillはないけれど評価されるので引き受けてしまい、その仕事から抜け出せなくなるという負のループが回り始めたことがありました。

Ubie Discoveryの場合はそういったことがないので、自分のWillがかなり言いやすくなりました。具体で言うと、事業のマーケティングのテコ入れには興味があったので実施することにしたのですが、採用マーケティングには興味がなかったので、代表からの依頼でも実施しない意思決定が出来ました。

評価なし組織のデメリット

ただし、評価なし組織がパラダイスかといえばそうではありません。良い部分もあれば、悪い部分ももちろんあります。個人的には、デメリットよりもメリットの方が圧倒的に大きいと感じておりますが、デメリットとしては以下です。

・採用ハードルが相当高い
評価なし組織は、全員が当たり前に成果を出していることを前提にしています。つまり、評価制度がないとサボるような方が入社してしまうと崩壊してしまいます。これを維持し続けるためには、厳密に採用基準を守ることが必須です。スキル的に完璧なので、評価基準を一部甘くつけるということは絶対にNGです。

入社後に採用面談を数多く行ってきましたが、スキル的には完璧で、その方が入社することで短期的にはグロースすることがわかっていながら、泣く泣くお見送りせざるをえないということに、何度も直面しています。

・相互フィードバックを機能させるのが難しい
評価制度がないということは、フィードバックを受ける機会も意図的に作らないとありません。

客観的に自分がパフォーマンスを発揮出来ているのか知りたいけれど、コト(事業)に向かいたいのでフィードバックにそんなに時間を割きたくない、という問題が発生します。

現状、Ubie Discoveryでは、入社後のスムーズなオンボーディングのためにも、業務メンターとカルチャーメンターがつきます。その方々からフィードバックを受けることが出来るので、一定期間はそれによって担保される形ですが、それ以降に課題感は残っている形です。

まとめ

・起業&VCで、スタートアップの人事評価制度に苦しんできた
・評価なし組織のメリットは、全社最適で動きやすく、コトに集中ができ、Willで仕事ができること
・逆にデメリットは、採用ハードルの高さと、フィードバックを機能させることの難しさ

個人的に、評価なし組織は画期的で素晴らしいものです。
同時に、全ての人に素晴らしい制度ではないとも感じます。
どういった方に合うかというと、ヒト(評価・出世)よりも、コト(事業成長)に向き合うことに重きを置きたい方にはマッチ度合いが高いのではないかと思います。

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Ubieの組織運営について興味をもたれた方は、こちらのサイトを是非ご覧ください。カジュアル面談や説明会も実施しています。

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