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フリーアプリを入れたスマホを尻ポケットに入れながら。

警察の拳銃は5発装填と言われるが、私のiPhoneも連写は5発までだ。
いつもシャッター音を消すアプリで写真を撮っているが、有料グレードアップをしていないから、5回に1回広告が表示される。それは左上の小さな×マークをタップしないと消えないため、必ず撮影が中断してしまうのだ。
今確認したところ、アプリで7314枚撮影していた。つまり通算1462回、見たくもない広告を見せられて、ともすれば大事なシャッターチャンスを逃してきたのである。誰に聞いても、アップグレードを本気で勧められるだろう。


殺し屋にサイレンサーが必要なように、静かな店内で公式SNS用の写真を撮る私には、その消音機能が切実に必要だった。だから、もしフリー版のアプリがなければ、240円くらいすんなりと支払ったはずだ。さっきコンビニでヒョイっと買ったハーゲンダッツより安い。
それでも未だに課金していないのは、無料で使えているものに途中からお金を払わせるということが、とても難しいことだからだ。


今さりげなく一般論に持っていったのは、私だけが特段ケチだと思われることを心配したからである。そんなことはない。このアプリは利用者が多く、5回撮影するごとにまごまごしている人を、私は何度も目撃したことがある。
おそるべしフリーの壁。あと何回、興味のない広告を見たら、我々はその壁を超える勇気が出るのか。


スマホのアプリ同様、フリーで読めるウェブ連載と、それを書籍化した有料の本があった場合、フリーに留まる読者は圧倒的に多い。そこに書き下ろしが加わっても、本という形になってたいそう読みやすくなっても、100万いいねイコール100万部突破とはいかず、ここにも分厚いフリーの壁がたちはだかっている。
書店員である私は、この壁を必死に攀じ登って、本を売っていかなければならない。

フリーアプリを入れたスマホを尻ポケットに入れながら。

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